先日まで放送されていた「VIVANT」の感想というか

観ていろいろと考えたことについて。

大変面白かったのですが、個人的にものすごくモヤモヤしたポイントがいくつかあるので、消化のために書いておきたいと思います。


最初はとにかく

ほんとにこれ連ドラですか?

というスケールの大きさに圧倒され

ドラムのキャラに癒やされ

謎だらけだし展開すごいし

どうなんのこれ!?と思って観てました。


最終回観てから3日くらいは

「どうしてくれるんだ。

黒須のせいで時間が溶ける」

という状態でした。

あと、全話通して一番印象が変化したのはチンギスでしたね。


リアタイはほぼできてなくて

夫と一緒に、まとめて2話くらい一気に観ることが多かったので

他の人の考察とかはあまり見る機会がなかったのですが

「あれ伏線だったのか!すごいな!」と楽しく観ました。


黒猫しっぽ黒猫からだ黒猫からだ黒猫あたま

で、私が何にモヤモヤしたかという話なんですが。

まず1つ目。

結論からいうと、私がこの物語の主題を見誤ってたんです。

それは私が勝手に勘違いしただけなので

「がっかりした」というのはお門違いなんですけど、ただ、「まじでなんであのセリフ入れたん?」と思いました。


誤送金事件が一段落するまでは、「どういう風になるのか全然わからんけど、とにかく面白い」という感じで観てたんです。

そして乃木が別班だとわかったところで

私は「この物語は一体何を描こうとしているのだろう」と思ったのです。

山本の「この国は腐りきってる」というセリフが刺さりすぎて。

「美しき我が国を汚す者は何人たりとも許さない」という乃木が

あまりに危うくて。

あの時点では、乃木の過去もFのことも謎だらけでしたし、この物語において「別班」がどういう立ち位置にあるのかが、まだわからなかったから。


その後、話が進むにつれて、どうも私が思った感じとは方向性が違うみたいだ、と気づいたのですが、まぁモヤりまして。

最終回後に公式サイトを見たら「『VIVANT』は“乃木憂助が愛を探す物語”」と語られていて

「ソウデシタカ。デスヨネ」となりました。

他にも、過去のインタビューを読んで

まじでなんで山本にあのセリフ言わせたのよ?と脱力しました。

個人的には、最終回でベキがとってつけたように「日本もだぞ」と言ったのも、「日本には考えの違う相手を尊重する美徳がある」というセリフも「寒々しいな」と感じたのですが

まぁ、ベキは40年日本を離れてたので、まぁいいよ。

でも、山本を演じた迫田さんがインタビューで「山本自身、具体的な何かがあって日本に敵意を向けるわけではないんです。」と語っていて、「そっすか···」となりました。 

確かに、そういう人いるけどな。

「日本に敵意を向けた」から、「排除」されたという点はすっきりしましたが

日々、あらゆるニュース(インボイス制度とかマイナンバーカードのあれこれとか、入管法改正とか、少子化対策や教員不足にトンチンカンなことしてくることとか、差別とか忖度とか隠蔽とかetc.)に「まじでこんな国もう嫌だ」と思ってる私にとって、この物語は救いにはならなかった、それだけの話です。


それと、「純粋なまでの愛国心の危うさ」をまざまざと感じさせた乃木が、改めて「美しき我が国」とは何なのかを問う物語、なのかとか思ったんですよ。山本を始末したあの時点では。

けど、全然そうじゃなくて。

で、乃木が自衛隊に入った理由がわかり、「愛とは何か」知ったところで

改めて「美しき我が国」とは何か。自分が守りたいものはなんなのかを考えるのかと思ったんですけど

それも違って。

「これが愛」と気づいた時点で「自分が守りたいもの」はすでに答えが出てるから、それを改めて考える必要がないといえばそうかもしれないけど。


「この国は腐りきってる」がぶっ刺さった私は

乃木に「美しき我が国」について改めて考えてほしかったんですよ。

「どうしてこの国を守るのか」「この国には、守るだけの価値があるのか」を見せてほしかったんですよ。

これもまぁ、作品の方向性を読み間違えた私の勝手な希望でしかなかったんですけど。

乃木については後でまた語ります。


おそらく、私が日本に住んでいなければ、もっと純粋に楽しめたのでしょうね。


犬しっぽ犬からだ犬からだ犬あたま

さて、モヤモヤした件2つ目。

さっきの乃木の話とちょっと重なるんですが、

深夜ドラマや映画じゃなく夜9時の連ドラで

ここまでイカれた主人公はありなんですかね。

(言い方よ)

乃木憂助はFがいることで主人公足り得るんだけど

もうちょっとまわりの人間(上原副長官みたいな「おまいう」じゃなくて、例えば櫻井司令とか野崎さん)に

「お前みたいなヤバいやつ見たことない」くらい言わせてほしかったなというか。

(そういえばノコルが「頭イカれてんのかお前は」と言ってましたね。)

視聴者層がどのくらいだったのかわからないんですが

小学校高学年とか中学生くらいに向けて

もうちょっとはっきりとメッセージを発しておいた方がいいのでは?と思ったりしました。


私なりに、なんで乃木は「美しき我が国とは何か」を改めて考えないのか、と考えたわけです。


乃木がやってるのは「国防」であって、対外的なものだから、内部の腐り具合がどうであろうと、あまり興味がないのかな、という答えに行き着きました。

違う可能性も大ですが。


乃木について、SNSで他の人の感想みたりして

「人間になりそこなった男」という解釈が浮かんだんですが

いや、それもなんか違うか?とさらに考えて

「限りなく武士っぽい」という答えに行き着きました。

そう考えると、なんかいろいろしっくりきました。

だから、「国のため」に疑問を抱かないし

任務で人を殺すことに躊躇いがないし

自分を正義とも悪とも思ってないし 

愛を知ったからといって揺るがないのか。

だから薫先生に対して、「こんな自分では」とは一切悩まず、「寂しい想いをさせる」なのか。

「別班」という組織そのものが、国に忠義を尽くす「武士」っぽいのですが

黒須には感じなくて乃木には感じる、この違和感はなんなんだろう?と突き詰めると

多分、愛を知った憂助が変化していないように見えるからなんですよね。

そしてそれは、良くも悪くもFに甘やかされてるということなんですよね。

(「愛とは何か」と言っていた登場人物が愛を知った後って、たいてい、強くなるか弱くなるかどっちかじゃないですか。話のスピード感からして、そこまで描く隙間なかったといえばそうなんだけど。)

Fは「考える前に動け」と言うけど、むしろもうちょっと「考えろ」と言ってほしいですね。


Fについては、「なによりも憂助が大事」なところが、なんというか、健全な感じがしてとても好きです。

薫先生がジャミーンについて「命に替えても守りたいものってあるでしょう」と言っていたけど

Fにとって憂助は比喩でもなんでもなく「命そのもの」なんですよね。一心同体どころか、2人で一人だから。ある意味それってすごいエモいなと思うんですけど、そういうの抜きにしても

「死なねぇよ。俺がお前を死なせねぇ。」は最高の愛の言葉だと思いました。

まぁ、それが甘やかしてるってことでもあるんですけど。

そういう意味でいうと

9話ラストで、憂助がFの「言うな!言ったら殺されるぞ!」という忠告を振り切って本当のことを話した事が

ものすごく大事なことなんですよね。

憂助とFの「2人で一人」のバランスってものすごいギリギリ絶妙ですね。


猫しっぽ猫からだ猫からだ猫あたま

実はラストについても、モヤっとしたセリフがあります。

警察に引き渡しておしまい。とはならずに最後に個人的な復讐をブチ込んでくる展開は「そうくるか!」と思いましたし

保身のために自分たちを見捨てた上司に復讐しようとするベキに

あくまでも別班として銃を向ける乃木

という構図も、個人的には好きでした。

ただ、あの乃木の「日本の重責を担う方を殺させはしない」というセリフは、他にもうちょっとなんか無かったのかな。

「お母さんの願いなんだ」に対して「息子として、これ以上あなたに罪を重ねてほしくない」くらい言えば良いのに、と思いました。

せめて「別班は、人命優先ですから」とかの方が良かったのでは。これもイマイチかもだけど。


別班である息子の憂助に殺されたかった。

というベキの心理と、その構図に関しては

(さっき「個人的には好きでした」と書きましたが)

私の中で賛否両論あったりします。

上司が「保身のために見捨たこと」が許せないベキが

憂助に「家族」という個人的なものより

「任務」という、仕事や立場を優先してほしかった

という心理は、まぁ、わかるんですよ。

で、ドラマとしてその構図自体は悪くないんですよ。

むしろ、使い古された様式美の一つですよね。 

でも、私は、それこそが日本をダメにした原因なのではないかと思います。

「会社のため」「仕事のため」と個人の大切なものを蔑ろにしてきたことが

今の、個人を大切にしない、隠蔽や忖度だらけの社会を作った要因の一つではないでしょうか。


牛しっぽ牛からだ牛からだ牛あたま

最後にベキ達を撃ったことに関して

撃ったのは憂助か、それともFか、

本当に殺したか、それとも急所を外しておいて死んだように見せかけたかで

乃木憂助という男の解釈が180度変わるんですよね。

ただ、撃った後のあの感じからするに十中八九、Fなんですよね。

父を殺したくない憂助のために

Fが急所を外して撃ったとすると

表向きには死んでるから、「息子に止められるなら妻も許してくれるだろう」「息子に命を奪われるなら本望」というベキの願いもある意味叶うわけで

大団円なんですよね。


で、おそらく、制作側の意図はそれなんですけど。

いろいろ考えてて

まてよ、これはもしかして

「【息子に殺されるなら本望】とか、そんな願い叶えてたまるかよ。家族より仕事をとる息子を誇りに思うとか、そういうのもう古いから」という、私の希望も叶うのでは!?と思い至りました。

すごいね!(笑)

そう考えるとめちゃくちゃ新しいし、アリなんですよ。

ほんと、Fが甘やかしてんな~って感じだけど。

制作側の意図とはおそらく違うだろうけど、そういう解釈もありかな、ということで。


ビーグル犬しっぽビーグル犬からだビーグル犬からだビーグル犬あたま

最後にもう一つ。

はじめに観た時は特になにも思わなかったのですが

(私もまだまだ感覚が鈍いな)

SNSで「太田さんが性加害の被害者だと知りながら、黒須と2人きりにしたのは配慮が足りない。新庄一人にインターホン鳴らさせた公安も同じく」という意見をみて

あー確かに!と思いました。

話の展開上、黒須にしたのはわかるけど、せめて「名乗りもしない見ず知らずの男と2人きりにしてごめん」と乃木に謝らせてほしかったです。

そのへんのアップデートはほんと頼むよ。


宇宙人しっぽ宇宙人からだ宇宙人からだ宇宙人あたま

いろいろ書きましたが

それはそれとして

バルカに残された黒須のその後が観たい私がいます。

やいやい言いながらノコルのお世話しててほしいですね。

あ、あと、薫先生は「おかえりなさい」の前に3発くらい殴ったら良かったのにと思います。