たこさんのブログ -3ページ目

たこさんのブログ

ブログの説明を入力します。

 じゃがいもを主題にした文芸アンソロジー!
 そんなアンソロあるわけない! ……と、思っていた時代が私にもありました。
 しかし2022年、美食家にしてジャガイモおよび林檎マスターの名をほしいままにし、かつ、おばけキャッチ界の東方の麒麟とあだ名されている(かもしれない)雲形ひじき氏の声かけのもとに集った十二名の勇者(ものずき)たちによって、そのアンソロ……

『煮ても 揚げても ふかしても じゃがいも文芸アンソロジー』

 は生み出されたのです。
 思えば私も相当な不見識だったともうせましょう。
 食べ物は古来より文芸の主題のひとつでした。
 狂言の『附子』(砂糖)、志賀直哉の『小僧の神様』(鮨)、芥川龍之介『蜜柑』……
 食をテーマにした文芸作品は枚挙に暇がありません。
 食べ物は、文芸と相性が良い。っていうか、相性が良すぎて目に留まらない。

 そして第一集の刊行からはや二年……
 さらに人数を増やして集った十五人の小説書きと一人のイラスト描き……
 さあ、みなさま、冷蔵庫に推し芋の準備はOKでしょうか?
 この作品集を読めばきっと、ジャガイモ料理を食べたくなること間違いなし!
 

 

『シンシア』雲形ひじき
 オープニングはしっとりとした本作。じゃがいもと育てる人の、言葉こそ通じないけれども確かに繋がる気持ちを感じさせる作品。

『庭先に王国』草群鶏
 うららかな春、おばあさんの家を受け継いだ院生、藍沢華衣はごはんの具材にしようとしたじゃがいもに足が生えていた……(芽じゃなくてね!)
 いまひとつ馴染まない十二歳の甥とともに足の生えたじゃがいもに導かれ、迷い込んだ秘密の庭で起きた出来事とは?

『ベートーヴェン未発表書簡および家政婦のひとりごと』海崎たま
 耳の病気に苦しむ男、使用人を人間扱いしない高慢ちき、そしてウィーンの都から、切なく故郷、ドイツのじゃがいもの味を懐かしむ甘ったれ……
 書簡から垣間見える、音楽に向き合うひとりの男の孤独と、じゃがいもと、芸術の女神をめぐる物語。


『ノエルペリグー』雲形ひじき
 人類は一歩一歩、その味覚を磨き、前人未踏の世界への扉を開く。食材たちの準備はいつだって万全だ。彼らはこの世界にある、その姿こそが「まったき」姿なのだから。
 追いつくべきは人間の覚悟と創意……
 新宿歌舞伎町の夜パフェ屋のパフェに寄せた魅惑の食材たちの秘密の会話。

『馬鈴薯の歌に啄木が秘めた想い』竹下大学
 文芸に登場する食べ物。じゃがいもだってとっくの昔に登場しています。
 短歌……岩手の詩人、石川啄木の作に「馬鈴薯」と歌われたそれの品種の謎を解明する本作。石川啄木の歌に宿る、彼と縁のあった女性の面影。そして「明治じゃがいも開国期/男爵芋以前」の日本のじゃがいもの世界を垣間見ることのできる作品。

『わたらせ』泡野瑤子
 明治、日本。……一年でも、ひと月でも早く西欧に追いつこうと、日本が大車輪で近代化に邁進した時代……その成功には、光があれば闇がある。日本の近代化という「成功」。その日の当たる大地の下……足利鉱毒……公害と移民。
 国策に翻弄されつつ、生き抜く人々の口にするのはじゃがいも……
『ローカルポテトサミット』雲形ひじき
 日本にじゃがいもが伝来したのは、おおきく二期に分かれる……というのは、ご存じだろうか? 
 明治以前と、明治以後。
 明治以前に宣教師たちの手によって伝来したじゃがいもは、江戸期、米や昆布のような「経済作物」にはならなかったけれど、冷害などに苦しむ農民の生命線として細々と作付けされてきた。
 明治以後にやってきたじゃがいもと比べると、いわゆる「経済効率性」の観点で勝てず、いまでは作付けも減っている。そんな日本在住四百年になろうかという古参じゃがいもたちのサミットの模様。

『まあるい名を得て』やまおり亭
 じゃがいもを家庭菜園で育てたことのある方なら身に覚えがあるだろう。芋は、地面の下で均一にはおおきくならない。収穫すれば、充分育ったおおきい芋のほか、直径五㎝にも満たないような小芋もころころ地面の下から出てくる。そういった芋だって、食べようによってはおいしい!
 じゃがいも産地あるある地場の味についての物語。

『imogine! 帝国戦隊インカレンジャー』
          文野華影・雲形ひじき
 冒頭からアレだ。第四十二話ってなんやねん。
 まあ、そこは気にしてはいけない。第四十一話までの物語は、あなたの胸の内にあるのだ。今作では、シリーズ終盤イチ盛り上がる第四十二話から四十五話までを一挙公開!
 悪のドクター、ジョハンセンの繰り出す数々の敵と戦ってきたインカレンジャーたちの悲劇の秘密の一端がいま、ドクタージョハンセンによって明かされる!
 ……どうする? インカレンジャー!

『じゃがいも俳句ドリルで教室』星野真奈美
 じゃがいも文芸、もっと積極的に楽しんでみよう!
 じゃがいもを使った俳句、ゼロから作るのはハードル高いけど、例題の空欄部分に自分の好みの言葉を入れてみるなら私でもできそう……?
 作例もついてるし、お題のじゃがいもの来歴やら特徴もわかる親切設計です。
 ちなみに私は「芋レベル1」のお題は「芽を生やしがち」と入れました。……男爵の方が好きだったんです……

『名探偵とうや ~ナス科の地上絵(ピクトグラム)~』
              三宮のえる
 財閥の肝煎りで建設された「馬鈴薯品種改良史顕彰館」に怪盗クワタルパンの予告状が!
 クワタルパンは古今東西のじゃがいも品種を盗むじゃがいも専門の大泥棒だ(自分で種芋買ってきて育てた方が早いのでは……という疑問は心に秘めておく)。
 クワタルパンの予告状には、謎めいたメッセージが……少年探偵神威とうやは、クワタルパンの真の目的を暴き、彼の野望を阻止できるのか!?
 真実は(いも)ひとつ!

『散文詩 君に帽子を被せたい』
         ジャガイモ好きひらまりこ
 なかなかに明快で、けれどもどこか冥界を思わせる薄暗さにみちて、春を待つ生の輝きを秘めて、性を漂わせている。
 じゃがいもをテーマにした散文詩。

『悪(ヴィラン)の休日』文野華影
 帝国戦隊インカレンジャーの舞台裏、あるいは外伝。
 戦士にも休息は必要だ。ほら、労働基準法でもね、「使用者は、少なくとも毎週一日の休日か、四週間を通じて四日以上の休日を与えなければならない。」って書いてありますしね。やっぱゆっくり休まないとパフォーマンスに影響するわけです。正義の味方も、もちろん悪の幹部も。
 で、完璧な悪のドクターは、休日だって完璧なのである。手下(?)のポマトに充分な休息を与えるために、つねに気配りを忘れない。むろん、荒事厳禁。
 その紳士的かつ世話焼きな佇まいにインカレンジャーたちもついつい……?
 しかし結局、人間が悪いの? そうなの??

『お米がなくなったので、ジャガイモを食べることにした』湖上比恋乃
 もしかしたら農業関係者あるあるなのかもしれない。農業関係者、ご近所が農家、そういう感じの。
 食べ物は大切にしたいし、エンゲル係数を低くするためにもいい。
 じゃがいもは美味しい。間違いなく美味しい。ただ続くとちょっと飽きるけど……でも北の春の恵みで味変だってできる。
 北の大地より、美味しい生活エッセイ。

『じゃがいも王子、救出大作戦!』服部匠
 小学六年生の料理好きのメイはある事情で料理を封印している。が、ある日、おつかいでコンビニにじゃがいも買いに来て迷い込んだ世界は、じゃがいもたちの国だった。
 じゃがいもたちの作るとびきりの芋料理で歓待されるメイ。
 そんなじゃがいもたちに、あるお城に行ったきりのダン王子(得意料理いももち)の救出を依頼されたメイは、そこで呪いにかかった王子を見つける。
 メイは首尾良く王子の呪いを解き、じゃがいも世界を救えるのか!?

『よく寝たほうがいいイモの話』送水こうた
 疲れていても、いや、疲れ果てているからこそ、昔の習慣というのがついつい出てきてしまうもの。仕事に疲れ果てていた鶴巻ミノルは、なりゆきで余らせてしまったたくさんの品種のじゃがいもを、全部まとめて(鬼畜の所業! じゃがいもは煮崩れしやすいやつも、じっくり煮込むやつもいろいろあるというのに!)塩ゆでにしてしまう。
 そして……
 滲み出す幼い日の習慣、駄々漏れる思い出。
 気の置けない友人ふたりと、じゃがいものある日常。

『せいじゃの行進』オカワダアキナ
 世界を牛耳る原則は、「経済原理」だと言う。市場経済、資本主義。
 骨身を削って生産した「原料」や労働者の「労働力」は、付加価値を付けられて消費者に売却。余るほどの生産物の余剰は、ゴミになる。そう、骨身を削ったさまざまなものが、ゴミになる。
 経済性の名の下に、すべてのコストを管理されて、極限まで価格競争性を高めて市場を塗りつぶす均質なじゃがいも。
 ……人間は? 人間は消費者で、この経済原理の恩恵を受けるほうなのでは……?
 すこし未来、経済性の名の下に閉園される遊園地と、それに反対する人々の愛惜と、そして萎びたじゃがいもの物語。

『創作むかしばなし『気難しい芋と女の話』』
                宮田秩早
 レビュワーである私の作品。
 え~、嘘も堂々と吐けばなんとなく本当に聞こえてくるといいますので、まあ堂々と嘘を吐いてみた次第です。でも、本当のこともすこし。
 むかしむかしのじゃがいもは、苦かった。いまでも苦い品種もあります。
 トウモロコシよりも標高の高いところで育てられ、苦い品種は凍み豆腐みたいな製法で水気と苦みを抜かれて保存食として流通します。
 むかしむかし、あったかもしれないし、なかったかもしれない物語。
 女と気難しい芋の精霊と変なピシュタコが、出会って、芋がちょっとだけ気難しくなくなるまでの昔話。