ウンスは店に足を踏み入れると同時に立ち止まった。

 

 

 

 

「マンボ姐さん、ここって・・」

「ああ・・だから来るんじゃないって言ったんだ。」

宿屋でないことは明らかだった。

 

これ見よがしの派手な装飾。

酒と白粉の臭い。

明け透けな扉。

「どの宿も断られてね、店に運ぶことも出来たんだが、あいつに見つかりでもしたら面倒だろう?」

「ええ・・」

だからって妓楼?

確かに現代のラ〇ホ的な感覚で考えたら納得は出来る。

「ら〇ほ?」

「こっちの話だから気にしないで。」

「ふうん・・あ、そうだ、気になっていたことがあるんだが。」

「なあに?」

マンボ姐さんは急な階段の途中で立ち止まった。

「天界にも、その・・なんだ、妓楼はあるのかい?」

「えっ?」

「ほら、あいつがいると聞けないだろう?」

そう言いながら、マンボ姐さんは辺りを見渡しニヤニヤ笑っている。

「ないわよ、ここまであからさまなものは、法律で禁止されてるし、ただ似たようなものはあるわ、でも男女がその・・ラ〇ホも‥ダメ、もう無理無理!」

顔を真っ赤にして話すウンスの様子を見て、マンボ姐さんは納得したようだった。

「天界では妓楼のことをラ〇ホって言うのかい?」

「ち、違うわ。」

ウンスは慌てて否定した。

「ほう・・ラ〇ホね‥ふんふん、なかなか面白い呼び名だね。」

「だから違うってば!」

 

階段の途中で揉めている二人の元へ、一人の女が近付いて来る。

 

「姐さん。」

 

「おや、ハリム。邪魔してるよ。」

「お待ちしておりました。」

長いチマの裾をたくし上げながら優雅に上って来る女性は、ウンスの傍まで来ると軽く首を垂れた。

「医仙様ですね?」

「はい、えっと・・私をご存知ですか?」

ウンスは満面の笑みで話す女性の姿をまじまじと見つめ、心の中で感心していた

明るい日中でも妓生の姿に手抜きは見られない。

きっちり髪を結いあげ、完璧な化粧を施し、自分の美しさを常に誇示している。

ほとんど化粧をしないウンスとは対照的だった。

「まあ、この開京で医仙様を知らぬ者がおりましょうか。」

「へ?」

 

「ハリム、この子には自覚がないから言っても無駄、ところで男の様子は?」

マンボ姐さんは階上の奥に目を凝らす。

「大分回復して、身体を起こせるようになりました。」

「そうかい、肋骨が折れていたからね、まあ動けるなら大丈夫だろう。」

「肋骨が折れてたの?」

「ああ、見事に二本。」

笑いながら胸の辺りを叩くマンボ姐さん。

ウンスは軽く目眩に襲われた。

「あとは打撲と擦り傷だけだ、二三日もすれば歩けるさ。」

そしてさっさと都から出て行けと、マンボ姐さんは心の中で呟いた。

 

「で、患者さんはどこに?」

ウンスは溜息を付きながら店の奥に視線を向けた。

 

 

 

 

 

あの方が行きそうなな場所は限られている。

無断で王宮を抜け出すことは、今までも何度もあった。

それだけなら心配はしない、早々に連れ戻して俺の部屋に閉じ込めておくだけだ。

だが今回は妙な胸騒ぎがする。

 

「で、医仙は?」

 

苛立ちを抑え、シウルの胸倉を掴む。

「へへへ、姐さんと一緒に出掛けた。買い出しじゃないか?」

ヨンは舌打ちすると、へらへらと笑う男をトクマンに向かって突き放した。

「隊長に向かって、その態度は何だ!」

「悪いか!」

「このやろうぅぅぅ!!」

いつもの喧嘩を始める二人を無視し、ヨンはテマンに視線で指示を送る。

一瞬で理解した若者は、風の様に店から姿を消した。

「そう言えば・」

槍を抱えたジホが、何かを思い出したように天井を仰ぐ。

「なんだ?」

 

「いや、姐さんは薬を持って出かけたよな?」

ジホはトクマンに羽交い絞めにされているシウルに同意を求めた。

「あ、ああ、確か妓楼がどうのと。」

「妓楼?」

ヨンの顔が険しくなる。

「どこの店だ?」

「そこまでは・・」

ジホとシウルが互いに頷いている。

 

病人か?

いや、余程のことがない限り、あの方を呼び出しはしない。

あの方の医術が必要なら、まず俺に知らせが来るはずだ。

何か引っかかる・・

「トクマン。」

「はい。」

 

「迂達赤総動員で妓楼を片っ端から探せ、必ず医仙を見つけろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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