「大丈夫よ、これは悪阻なんだから、赤ちゃんが元気に育ってる証拠なの」

この方の言う”大丈夫”はあてにはならない。

「ねえ、そんなに見られたら食べられないわ。」

ウンスはクッパを口に運ぼうとするが、自分を見つめるヨンの威圧感に手が止まる。

「食べられそうですか?」

「うん、匂いもきつくないから、とっても美味しい。」

そう言うと、彼女はクッパを頬張った。

「そうですか。」

その様子を見て、ヨンはやっと安堵の息を吐く。

 

深夜に吐いてから、何も口にしようとしない彼女の事が心配で、夜明けと同時にテマンを街に走らせた。

「マンボ姐さんやテマン君に面倒懸けちゃったわね。」

「そのようなことは・・召し上がったら少しお休みください。」

「ぐっすり寝たから眠くないわ。」

「眠れないくても、身体を横にしてください。」

「でも・・」

寝てばかりいたら身体が痛くなりそう。

そう言いたかったが、その言葉は呑み込んだ。

彼にこれ以上心配を掛けたくはない。

「休んでください。」

「ん・・分かった。」

私の返事を聞いて、彼の緊張していた表情が緩んだ。

「食べ終わったら休むから心配しないで、お役目があるんでしょう?行って来て。」

「真ですか?」

「ええ、漢文の書物を読めば、すぐに眠くなるわ。」

「では、難しい書をお持ちしましょう。」

「やあね、冗談よ。」

 

彼が笑った

彼の笑顔を見て私も笑う。

彼の笑顔を見ると本当にホッとする。

「ホッとしたら眠くなってきたみたい、休むわね。」

「そうしてください。」

彼は私に手を引き寝台に向かう。

上掛けを捲ると、私の身体をその中に横たえた。

「信用してないでしょう?」

「はい。」

枕元に腰を下ろしたヨンは、優しく私の髪をかき上げる。

どうやら私が眠るまで傍に居るつもりらしい。

でも髪に触れる彼の手が気持ちよくて、私は瞼を閉じた。

 

心配で仕方がない。

悪阻とは、この様に彼女を苦しめるのか。

あれだけ召し上がっていた方が、何も口にしようとしないのだ。

「妊娠した女性は、程度はあるけど皆経験するのよ。」

彼女はそう言って笑っていたが、乾いた唇が痛々しかった。

静かな寝息を立て始めた彼女の唇。

そっと指で触れる。

「ん・・」

触れるだけでは飽き足らず、ヨンは己の唇を重ねた。

彼女を起こさぬよう、触れるだけの口づけを落とす。

そして腹の子に話し掛けた。

 

「母上をあまり苦しめるな。」

 

 

 

 

 

 

彼が部屋を出て行くと、ウンスは閉じていた瞼を開いた。

そして寝台の上で身体を起こし、辺りを見渡す。

「本当に、この部屋には何もないわね。」

そう呟くと眉間にしわを寄せる。

だが、すぐに笑顔になった。

 

「無ければ探せばいい、探しても無ければ代わりを見つければいいのよ。」

寝台から起き上がり、バタバタと動き出したウンス。

 

一体何を始める気だ?

部屋の様子をうかがっいたテマンは首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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