足が地に着かない感覚とは、こうなどたと初めて知った。

彼の言葉を聞いただけで、こんなに夢心地になるなんて・・

 

「はぁ、はぁ・・ウンス・・」

「ヨン?」

 

彼の苦しそうな息遣いで、ウンスはやっと夢から覚めた。

慌てて掴まれた腕を解こうとしたが、彼は手を放してくれない。

「ねえヨン、お願い、誤解なの、だから手を離して。」

「誤解?」

「え、ええ、何もないわ。」

無くもないが、あえて揉める原因を投じる気はない。

でも私は、いつからこんなに欲張りになったのだろう。

愛されてると分かっているのに、あなたの心全てを知りたくて仕方がないの。

 

「でも・・・もしそうだったら?私がウソンさんの奥さんになっていたら、どうするつもり?」

「おい、ウンス、何を言い出す?!」

思わぬことを口にした彼女。

ウソンは慌てて痛む顔を上げた。

 

 

馬鹿げた質問だと分かってる。

あなた以外の人の妻になる気などない。

天地がひっくり返ってもありえない。

でも聞きたいの、あなたの本心を・・

私を拒絶するのか、それとも・・

だが直ぐに、彼の気持ちを試すのは命がけなのだと気付いた。

 

 

 

 

 

 

鋭く光る瞳、血の気が引いた頬。

そして彼は乾いた唇を噛み締める。

 

「殺す・・」

「えっ?」

 

ドクン・・ドクン・・

 

心臓が大きく波打つ。

全神経が聴覚に集まったように耳が研ぎ澄まされる。

そして次に聞くあなたの言葉で、私の時間は止まった。

あなたの声以外何も聞こえない。

視界にはあなたの顔しか映らない。

私はいま、世界中の幸せを独占している。

そう思えるほど、私の心は幸福に満ちていた

 

「殺す・・・その男を殺して、あなたを奪い返す!」

「あ・・」

「はぁ、はぁ、どこだ!何処にいる・・・この男か、それとも違う男か、どこにいる?!」

「ヨン、違うの、ごめんなさい、そうじゃなくて・・」

 

幸せ過ぎて頭が変になりそう。

ドキドキが止まらなくて心臓が爆発しそう。

「きさまか?!」

「お、おい、違う、まて!!」

「ヨン、違うわ!」

 

私はどれほどあなたを独占したいのだろう。

どれほど愛されたいのだろう。

 

 

ヨンの怒りの矛先が再びウソンに向かう。

激しい嫉妬のせいで我を忘れ、鬼剣まで抜き放った。

「また・・わぁ!!馬鹿、よせ!」

「ヨン、駄目!待って!」

「おいチェ・ヨン、いい加減にしろ!!」

「ヨンァ!!」

「ウンス、お前のせいで・・・わぁ!」

 

「殺してやる・・」

二人が止めるのも聞かず、ウソンに向かって剣を振り上げる。

 

 

 

だが次の瞬間、彼の分身ともいうべき鬼剣がその手から滑り落ちた。

「ヨンァ?!」

落ちた鬼剣の波動が治まらないうちに、今度はその剣の主が床に崩れ落ちる。

「きゃあぁぁ!ヨン?!」

ウンスが慌てて駆け寄るが、大きな身体は床に倒れた。

「ヨン、しっかりして!」

「はぁ、はぁ、ウンス・・俺の・・」

ヨンは混濁する意識の中、譫言を繰り返す。

 

彼女が他の男のもの?

もう、あの微笑みやぬくもりが俺のものじゃない?

あなたを抱きしめることも、その柔らかな唇に触れることも出来ない?

夜毎あなたなの香りに包まれ眠る男が俺じゃない?

 

駄目だ・・

許せるものか・・

考えただけでも気が狂いそうだ。

俺以外の男があなたに触れるなど絶対に許せない!

あなたは俺のものだ。

天が裂けても大地が崩れ落ちようとも、俺は・・

 

あなたを離さない・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨン、しっかりして!」

ウンスの呼び掛けにも反応はない。

ヨンの意識は完全に深い闇に沈んでしまった。

 

「まったく・・恐ろしい男だな。」

難を逃れたと、ウソンは安堵の息を吐く。

「凄い熱・・」

額から滲み出る汗。

燃えるように熱い身体。

「こんな体で・・」

ウンスは胸が熱くなった。

嬉しさと感動で体中が震えている。

「まったく、お前達には・・ああ、俺など敵わない、よく分かったよ。」

ウソンは互いに寄り添う二人を目の前にして、完全に敗北を認めた。

「ウソンさん・・」

「何もない。」

「えっ?」

「こいつはあの紅い髪の女とは何もなかった、信じてやれ。」

「うん・・いいの、もう十分よ・・」

こんなに愛されてる。

おそらく、私が彼を想う気持ちよりはるかに深く・・

 

「ねえ、断言してもいいけど・・私いま、この世界で一番幸せな女よ。」

ウンスはかつてないほどの笑顔を見せた。

 

 

「ああ、俺も断言してもいいが、この世で一番ツイてない男だぞ、俺は・・」

 
 

 

 

 

 

 

 

 

ブログ村に参加しています。

よろしくお願いします。

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村