「これは夢ではないのか?」

「うん。」

 

恋しいあなたの声。

次から次へと溢れ出る涙。

頬に触れるヨンの手を濡らし、それでも止まらない涙は雫となって彼の頬に落ちた。

 

 

 

 

 

「ヨン・・会いたかった。」

「本当にあなたか?」

「ええ・・」

 

驚きで動く事さえ出来ないのだろうか、ヨンは横たわったまま愛しい人の顔を見上げている。

ウンスは彼の胸にそっと顔を埋めた。

夢にまでみた恋しい人のぬくもり。

あなたの胸に包まれたいと、何度願ったことか。

やっとこの場所に戻って来た。

ここが私の家、私の生きる場所。

 

「ヨン、私・・帰って来たわ。」

 

 

 

 

 

「ウンス、なぜ・・」

戻った?

散々苦しめた俺の元に・・なぜ・・

 

「当たり前じゃない、あなたがいないと生きていけないからよ、あなたを忘れて、ただ息をして生きていくなんて私には無理、きっと気が狂ってしまう、あなたは・・あなたは違うの?」

「俺は・・」

涙で濡れた大きな瞳。

どれほど、この瞳に焦がれたか・・

「俺は大丈夫です。」

「うそ。」

あなたは思ったことを素直に口にする。

もう一度この声を聞きたいと、どんなに願ったか・・

 

「じゃあ如何して、こんなにやつれているの?」

心配そうに俺の頬に触れるあなたの手。

このぬくもりを抱きしめたいと、幾夜苦しんだか・・

「少々役目が辛かっただけです。」

「ヨンの嘘つき。」

そう、俺は嘘が苦手だ。

他人を騙したり欺く事が出来ぬ。

”正面突破”よく言ったものだ。

小細工が出来ぬ己の言い訳にすぎない。

こうして、あなたに嘘も付けない。

それどころか、今にも自分の本心をぶちまけそうで恐ろしい。

「帰れって言われても、もう帰る場所なんてないわ、天界には戻れないのよ。」

「それは・・」

俺の傍に居てくださるということか?

 

こんな俺の・・・

 

大粒の涙を浮かべ、ウンスはヨンの顔を見つめた。

「ヨン、よく聞いて、人は誰もいつかは死ぬわ、それが明日か何年先かは分からない、でもね、それは天界でも変わらないの。みんなが寿命を全うしている訳じゃない、病気や事故、天災だってある。ここと同じなのよ。」

「ウンス・・」

 

彼女の言葉が胸に沁みた。

”死”の言葉が胸に突き刺さる。

「私はあなたの傍で生きると決めた、だから、もう二度と私の手を離さないで、そして私が死んだら・・もし、そうなったら・・私の躯を抱きしめて、私もそうするから。」

その時、ウンスは自分自身で覚悟を決めた。

生きるも死ぬも、全てはこの世界の定めに従おう。

もう二度と彼の傍を離れない為に、現代と完全に決別しようと。

 

「ウンス・・」

 

どうして、あなたはこれほど強い。

なぜ揺るがない。

 

俺など到底敵わない・・

 

「あなたは、それで良いのですか?」

俺の問いに、あなたは黙って頷く。

涙で濡れた頬が陽の光を受けてキラキラと輝いていた。

眩しい光とあなたの姿が重なる。

まるで光に溶けるように・・

 

「ウンス!!」

ヨンはとっさにウンスを抱きしめた。

「ウンス、行くな!どこにも行くな、ウンス!!」

「ヨン!ヨン!」

 

あの戦の夜。

闇の中で、これが永遠の別れと覚悟した。

 

もう俺の所には戻らぬと・・

散々苦しめた自分の元になど戻って戻るはずはないと思っていた。

それが、再び恋しい人をこの腕に抱きしめる事が出来る。

 

ヨンは悟った。

これは、すべて彼女の勇気が引き起こした奇跡。

天や天門は関係はない。

 

こうして二人が巡り会えたのは、彼女の勇気のおかげなのだと。

 

 

 

 

 

 

 

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