「なんと図々しい女だ。」
怖がっちゃ駄目、ウンス。

「真に、妻がこの様な不始末を起こすとは、大護軍も苦労なさいますな。」
怒っちゃ駄目、ウンス。

「夫が戦場で戦っているのに妻が不貞を・・いや、王命に逆らうなど。」
「ちょっと、不貞って!」
「ウンス!」
ウソンは、高官に食って掛かろうとするウンスの腕を掴んだ。
「離して!貴方が、こんな事をするから不貞なんて言われるのよ。」
彼女は腕を振り解こうとした。
すると、彼には珍しく、すぐに掴んでいた手を離す。
「奥方殿、如何いう事ですか?」
その声に、高官たちのざわめきが止まる。
評議の間に、王の静かな声が響いた。

王宮。
宣仁殿、王座の前にウンスは立っている。
あれから・・
「私を捕まえに来るって、如何いうこと?」
「あの男を勝手に逃がしただろう?」
「ええ、でもそれは、ちゃんと王様にお話ししようと・・」
「馬鹿か?!王の許しなく、そんな事をすれば、王命に逆らった事になるんだぞ!」
「えっ?私は、そんなつもりじゃ・・」
ウンスは戸惑った。
王命?
いつ聞いた?
”異国の男を高麗より出すな”
そんな言葉を聞いた事はない。
「それは屁理屈だ。王は開放しろとも言っておらぬだろう、違うか?」
「それは、そうだけど・・」
「四の五の言うな!早く支度をしろ。」
ウソンはウンスを、強引に屋敷から連れ出そうとする。
「ちょっと待って、ハルさん!」
彼女はハルに助けを求めた。
もう混乱して、如何していいか分からない。
「奥様、とにかくお姿を隠して下さい。」
「ハルさんまで、何を言うの?」
「旦那様がお戻りになるまでです、ご辛抱下さい。」
「ハルさん!?」
あの人が帰るまで?
そうよ、きっとヨンは、もうすぐ帰って来る。
私は笑顔で出迎えなくちゃいけない。
彼は戦で、きっと沢山の傷を負ってくる。
その心の傷が少しで癒えるよう、笑顔で抱き締めてあげたいの。
「待って!!」
ウンスは男の手を振り解いた。
「ウンス?」
そうよ逃げたりしない。
堂々とあの人を迎えるわ。
だから・・
「私、王宮に行きます。」
「ウンス、何を言っている?捕まるぞ!」
「だから・・そうなる前に、ちゃんと王様に説明するわ。」
「奥様、私も旦那様がお戻りになるまで、お待ちになった方が良いと思います。」
「ハルさん、隠れるなんて嫌よ。私は何も悪い事はしていない。私が逃げたら、ボラまで罪人になってしまうわ。」
「奥様・・」
ハルの目に、初めて涙が浮かんだ。
こんな状況でも、娘の身を案じてくれるウンスに、彼女は心の中で感謝する。
「王宮に行って、王様に会います。」
ウンスは固い決意で、二人を見つめた。

「それで、説明をしてもらえますか、奥方殿。」
「はい、王様。」
ウンス、怖がらないで。
あの人が居る。
姿はなくても、私の傍に、ヨンの心は寄り添っている。
だから恐れない。
真直ぐ前を見据えて堂々とするわ。
ヨンの為に・・

あの人を、笑顔で迎えるために・・







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