月が眠りに落ち、太陽が目覚めるころ...

 

 

 

「ん....ヨンァ、もう行くの?」

 

ウンスは重い瞼を薄く開けて、身支度を整える夫の背中をボンヤリと見つめた。

 

「まだ夜明け前です、もう少しお休みください。」

髪に触れるヨンの手のぬくもりが、ウンスの心をあたたかく包む。

「このまま眠ったら、また寝坊しそう....」

「構いませぬ、ゆっくりお休みください。」

「もう、誰のせいよ...」

ウンスの頬が赤く染まる。

「責任は感じております。」

「うそ、ニヤついちゃって...」

「本心です。」

ヨンはウンスの額に優しくキスを落とす。

そして離れがたい気持ちを封じ込め、鬼剣を握りしめた。

 

「あ、そうだ、ヨンァ、これを。」

踵を返そうとしたヨンをウンスは慌てて引き留める。

そして枕元から小さな包みを取り出した。

「これは何ですか?」

「ん...お守り?」

「お守り?」

「そう、えっと、昨日占い師の所に行った話をしたでしょう?」

「はい。」

「その時に御札を貰ったの、あなたの周りは危険がいっぱいじゃない、だから、あなたが危険な目に合わないように....えっと...昔からお守りとか魔除けとか信じてなかったのよ、でも心配で...」

「俺の為にですか?」

「うん..私の為でもあるかな、あ、ヨンァが嫌ならいいのよ。」

「まさか、あなたが俺の為を思って買ったものを嫌だなどと、肌身離さず持っております。」

「うん、絶対に身に着けていてね。」

「はい、必ず。」

そう言うと、ヨンは嬉しそうに御札を懐にしまった。

 

 

 

 

 

「隊長、それは御札ですか?」

「ああ。」

 

兵舎でも嬉しそうに御札を見つめるヨン。

彼のそんな顔が珍しいのか、チュンソクやトクマン、他の兵達が集まってくる。

 

「隊長が危険な目に合わないようにですか?医仙様は本当にお優しいな。」

「ああ、新婚早々、夫を気遣って御札を用意するとは。」

「隊長が羨ましいです。」

「本当だ、あんなに綺麗で優しい女人はいないぞ。」

「俺も医仙様のような女人に出会いたいよ。」

 

ヨンは羨望の的だった。

彼もまんざらではないらしく、今日は朝から上機嫌で兵達への当たりも緩い。

 

「おい、お前達、おしゃべりはその辺にして訓練を始めるぞ。」

「はい!」

チュンソクの言葉で、兵達はバラバラと持ち場や訓練場に散って行く。

「チュンソク、俺は王様の元に伺う。」

「はい、承知しました。」

その時、ヨンと入れ替わるように役目を終えたトルベが兵舎に戻って来た。

 

「おお、トルベ、ご苦労だったな。」

「はい、副隊長、ずいぶん兵舎が賑やかでしたが何かありましたか?」

「ああ、医仙様のことでな。」

「医仙様の?」

「医仙様は本当に隊長のことを大切にされているんだなと、皆で感心していたところだ。」

そう言うと、チュンソクはトルベに御札の話を聞かせた。

 

「ああ、その御札のことなら知っています。」

「知っているのか?」

「はい、今都の女人達の間で流行ってる札のことでしょう?」

「ほう....」

 

 

「何でも女人除けの札とか、浮気を心配する女達が夫や情人の懐にこっそり忍ばせるそうです。」

 

「...........」

 

 

さてさて、高麗一の美丈夫を夫に持ったウンスの心配は.....

 

 

 

 

 

 

 

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