- 情報以前の知的作法 踊らされるな、自ら踊れ/講談社
- ¥1,300
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★★★★★
今この時代にこの本に出会ったと心底言える、鬼才西きょうじが綴る渾身の一冊。
現代社会というと感覚的には2000年以降、これに関して考察された本は多くある。
しかし2010年以降に関してまとまった考察、またそこで発生している問題への対策を提言している本はほとんど見たことがない。
ツイッターなど高度な情報メディアが人々の生活に大きく介入してきたことは自明の理であり、特にこれに関わる若者世代、つまりちょうど大学生から20代の社会人には考えさせられることがここぞとばかりに記載されている。
僕自身、この本を読み進める上で幾度と無くハッとさせられ、考えさせられた。
あまりに多くのことを学ぶことができたのでここでこれ以上のことを書くと年が明けてしまいかねないので、ひとまずは騙されたと思って読んでみて下さいとだけ記しておきたい。この本は今読むべき本です。
- ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー (光文社文庫)/光文社
- ¥600
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★★★
1993年に書かれた東野圭吾のミステリー小説。
20年も前に書かれたものとは思えぬほど新鮮でスリリングな小説、そして相変わらずの読みやすさ。
機械産業メーカーに勤務する主人公、末永拓也の色恋沙汰から最終的に殺人リレーへと複雑に発展していくお話。
主人公が追い詰められていく様は読んでいてハラハラさせられる。警察との駆け引きなど随所で見られる末永の頭の回転の速さもこの小説の魅力に寄与している。
ただ、個人的にそこまで好きになれなかった。
自分の中での東野圭吾ハードルが高いということもあるが、この小説のどこが良かったかと問われた時に上記で書いたようなこと以外思いつかないのである。
それに加えてクライマックスがいまいちしっくり来なくて、実はこれを書いている今でもよく覚えていない。
- 不安の力 (集英社文庫)/集英社
- ¥500
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- ★★★★
僕が敬愛する五木寛之さんの作品。
悲しいのかありがたいのかよくわからないが、某中古本を扱うサイトで20円かそこらで売られていた。
この本を一言で説明するならば、「不安は希望の土台」という作中に登場する言葉を代用したい。
不安は誰しもが感じることで自然なことなのだ、その不安はいつか自分のプラスに変わる。むしろ不安は生きていく上で必要なことなのだ。
ざっくりですが、ズバリこれが作者の主張です。
繰り返しが多いので、少しくどいと思う部分はありましたが、やはり五木さんの現代社会に対する考察は鋭い。自殺者の数の話、不安を感じることが多くなった時代背景など的を得すぎています。
不安に感じることが多く、またそんな自分を嫌だなと思っている人にはぜひ読んでほしい一冊。
- さらば、哀しみの青春―伝えたい。闇に沈む子どもたちの哀しみを…/高文研
- ¥1,365
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- ★★★
ご存知、夜回り先生の本。
水谷先生との出会いは高校生の時に読んだ本に始まり、京都での講演会にも足を運んだ。
本の内容は全て実話であり、いわば今の若者が抱える問題の象徴的事例が記載されている。
彼の本のほとんどはそれで完結するものが多いが、本書はその問題を歴史的変遷の説明にもボリュームを割かれている。他書との違いはここにある。
そういう意味で本書は、(敢えて書くなら)知識人に向けて書かれたものであると思う。教育者はもちろん、薬物問題などに全く関係がないと思っている若者やその親が読むべきものだと感じた。
夜回り先生の本を読まれたことがない方はぜひ一度読んでみることをオススメします。
- 大人失格―子供に生まれてスミマセン (光文社文庫)/光文社
- ¥480
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- ★★★
アジカンごっちが若い頃にどっぷりハマって、今の彼の文章の書き方にも随分と影響を及ぼしているという松尾スズキのエッセイを読んでみた。
期待値が大きかったのかすごく満足とはいかないものの、話によってはかなりおもしろい。
基本的に自虐ネタを軸に記載していくあたりは、土屋賢二に通じるものがある。
- クワイエットルームにようこそ (文春文庫)/文藝春秋
- ¥470
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- ★★☆
上記で紹介した松尾スズキの小説。
エッセイ中心かと思っていたら、小説まで出していた。しかも芥川賞の候補作というから驚き。
かなり期待して読んだが、んー・・・。
雰囲気はベロニカは死ぬことにしたとほぼ近しいものがあり、舞台は精神病院である。
特に何の物語が進むわけでなく、そこでの患者同士の異常なやりとりが綴られている。
ものすごく薄い本なのですぐに読めてしまうが、読了後の重圧感がものすごい。
僕はこれを良い方向に捉えることができなかったので、イマイチな評価になっています。
- ケルトの国のごちそうめぐり (Lands & memory)/松井 ゆみ子
- ¥1,890
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- ★★★☆
そのタイトルとカバーの写真に魅了されて思わず購入。
少し雑多な感じが否めないが、その分脚注などが豊富で一切の手抜きはない。写真も美しい。
まさに努力してこの一冊を作り上げられたのだなーと感じる。
食文化にスポットを当てて丁寧に解説されているので、じっくり読みたい人向け。
またアイルランドは競馬文化が根強く残っているらしく、堂々と人々の生活のワンピースになっている。
これは競馬大好きな自分としては見逃せない。
特に一年に一度だけ大潮の日に開催される海岸沿いを走るレースの写真には感動した。
ケルトの温かさを知るには十分すぎる一冊。