南仏プロヴァンスとモンサンミッシェル⑤・・・エクス・アン・プロヴァンス
マルセイユでル・コルビジェのユニテ・ダビタシオンの
中にも入れてもらって、やや、興奮しながら、アルル
に向かう。途中、この日のもう一つのハイライト、
セザンヌのアトリエと晩年に何枚も描いた、サント・
ヴィクトワール山を、一冊のガイドブックを携えながら
訪れた。
宗 左近氏の「私の西洋美術ガイド」(新潮選書)だ。
実のところ、私にはかなり難解な本のひとつで、特に
セザンヌのくだりは、宗氏が絶賛する意味がよく
わからなかった・・・しかし、歳を取ったせいもある
かもしれないが、昔、チンプンカンプンだった、意味が
アトリエを訪ねたり、サント・ヴィクトワール山を見たり
他の評論を読んだり、オルセーなどでセザンヌに触れ
ることが多くなるにつれて、宗氏が言わんとしている
ことが、おぼろげながらも輪郭が見えて来た。
そして、そのガイドブックのセザンヌのくだりの最後の
部分はこんな風に、閉じている・・・
滞在中、セザンヌの絵の実物はおろか複製も
見なかった。9月になってパリに引き上げると、
すぐさま印象派美術館へいって水彩と鉛筆で描かれた
『サント・ヴィクトワール山』(1900年頃)に対面した。
またしても変な表現になるが、サント・ヴィクトワール山
の肉のついた骸骨を見る思いがした。肉をつけたのは、
ちろん画家の生まれついて以来半世紀以上も眺め
つづけてきたこの山に対する愛情、というよりも敬意に
ほかならないだろう。認識が抒情するとは、このこと
にほかなるまい。
そこで、今回写真に収めたサント・ヴィクトワール山と
彼の描いたサント・ヴィクトエワール山を紹介します。