ニッカウヰスキー、セミナー感想 | ~MALT HOUSE ISLAY Archives~ モルトハウス アイラ アーカイブズ

~MALT HOUSE ISLAY Archives~ モルトハウス アイラ アーカイブズ

練馬にあるシングルモルトウイスキー専門店MALT HOUSE ISLAYの備忘録。

最新情報はFBページをご覧ください

このテイスティング日記も少し前に書いたものですが、ブログにアップします!


2015年7月28日 ニッカウヰスキーセミナー感想


 少し前になりますがニッカウヰスキーから重大な発表がありました。それは、今まで定番商品であったニッカウヰスキーのシングルモルト『余市』『宮城峡』の各エイジング商品の発売終了。それにともない、中味・ラベルをリニューアルしたノンエイジ(年数表記無し)『シングルモルト 余市』『シングルモルト 宮城峡』を9月から売り出すということです。ここ最近、ウイスキーブームによる原酒不足で品切れになる商品も多く、特に元々生産量が少なかった『余市』は長らく市場から姿を消していました。このまま商品が無くなってしまうのではないかと危惧されていた矢先に行われたこの発表。各エイジング商品が無くなってしまうのは残念ですが、その分新商品に期待が膨らみます。
 そして7月28日に参加してきたニッカウヰスキーのテイスティングセミナーはいわば新商品のお披露目会。皆さんより一足先に新ノンエイジ『シングルモルト 余市』『シングルモルト 宮城峡』をテイスティングしてきました。今回はその感想です。


 テイスティングしてきたのは全部で7種類。新しくなったノンエイジ2種類に加え、ニッカウヰスキーの持つ古い連続式蒸留機カフェスチルで生み出される、『カフェグレーン』『カフェモルト』。去年発売されたニッカウヰスキー創業80周年を記念した『ザ・ニッカ12年』。そして新ノンエイジと同時発売になる限定品の『余市 ヘビリーピーテッド』『宮城峡 シェリーカスク』と、どれも魅力的なウイスキーばかり。このセミナーの講師を務めてくださったのは、これらの商品を手掛けてきたニッカウヰスキーのチーフブレンダー”佐久間 正”氏です。


 佐久間氏の話によると、新しい『シングルモルト 余市』『シングルモルト 宮城峡』は今までの10年物をベースに若くても良い原酒をブレンドすることで、長い樽熟成の間に隠れてしまう蒸留所の個性を際立たせ、より重厚な『余市』・華やかな『宮城峡』に仕上げたそうです。もちろん原酒不足を解消するためでもあります。ラベルに年数を表記するとその年数以上熟成させた原酒しか商品に使用できませんが、年数表記をしないことで縛りが無くなり使用する原酒の選択肢が拡がります。


 早速、新商品のテイスティングをしてみたところ・・・


●新ノンエイジ『シングルモルト 余市』alc.45%
色:薄い黄金色
香り:始めはアルコールの刺激を強く感じたが、しばらく空気に触れさせるとリンゴのようなフルーツ香やバニラの香りが出てくる。ピート香も感じる
 口の中で転がしてみると、ピート香が鼻を抜けていく。力強さもありながらほんのりと甘さを感じる。ノンエイジなので仕方ないが全体的に淡い印象を受ける。しかし口に含んだ時に感じるピート香や余市蒸留所の力強い酒質はしっかりと感じられる。ただし時間を置いてしまうと、香りが抜けてしまう。


●新ノンエイジ『シングルモルト 宮城峡』alc.45%
色:薄い黄金色
香り:トップにリンゴやレモン、バナナといった爽やかなフルーツ香が出ている。花の蜜のような甘い香りも感じる。ミックスジュースを薄めたかのような甘さで、やさしくまろやかな味わい。宮城峡らしい華やかでライトなモルト。ただこちらも時間を置くと、香りにアルコールの刺激を感じる。


 というような感想になりました。新しいノンエイジの『余市』『宮城峡』は蒸留所の特徴である重厚さ、華やかさが出ているとは思いますが、発売終了となった10年、12年物といったエイジング商品と比べると熟成感に欠け物足りなさを感じます。原酒不足で供給の安定化をしていくためにも仕方のないことですがラインナップがノンエイジのみとなることが不安です。ブームによってウイスキーが広く認知されるのは嬉しい事ですが、需要が増えたからといってすぐに供給を増やせないのがウイスキー産業の難しい所です。
 新ノンエイジはあまり好みではありませんでしたが、一方で限定品の『余市 ヘビリーピーテッド』『宮城峡 シェリーカスク』の出来のよさには驚かされました。


●『余市 ヘビリーピーテッド』alc.48%
色:琥珀色
香り:はっきりと感じるピート香に磯の香りも混じっている。オレンジのようなフルーツ香や濃厚なバニラ香も感じられ、ヘビリーピーテッドながら調和のとれた香り。
口に含むとどっしりとしたピート香を感じる。アルコール度数48度と強めではあるが、それを感じさせないまろやかさ、熟成感があり味わい深い。時間を置いてもしっかりと香りがのこり、長く楽しめる。


●『宮城峡 シェリーカスク』alc.48%
色:赤みがかった、濃厚な琥珀色
香り:濃厚で上品なシェリー樽の香りでオロロソシェリーそのものを味わっているかのよう。カシスといったベリーやレーズンの香りも感じる。
 しっかりと濃厚なシェリー樽熟成の味わいであり、渋味もあまり感じず嫌らしくない濃さ。こちらもアルコール度数が48度と強いがやさしい味わいに仕上がっている。香りの持続も長い。


 どちらもしっかりとした熟成感があり、香りも長く続きます。個性を全面に出しつつもバランスの取れた味わいで、個人的にはかなりの好印象でした。価格は1万2千円と高めではありますが、最近のジャパニーズウイスキーのプレミアム価格化を考えると安いと言えるのではないでしょうか。しかし各3,000本とはいえ、数量限定なのですぐに売り切れてしまうかもしれませんが入荷が楽しみです。
 新しいノンエイジも厳しいことを書いてしまいましたが、あくまで私個人の好みなのでぜひ皆さんご自身でお確かめください。