カバランウイスキーセミナー感想 | ~MALT HOUSE ISLAY Archives~ モルトハウス アイラ アーカイブズ

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練馬にあるシングルモルトウイスキー専門店MALT HOUSE ISLAYの備忘録。

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以前お店のHPにも載せたものですが、こちらにも載せておきます。

ポットスチルの数について訂正があります。ドイツのホルスタイン型スチルですが、そちらは現在使っていないそうです。増設予定のポットスチルの数、年間生産量がどのくらいになるのかはまたわかりしだい書きたいと思います。

2015年4月23日(木)

 秋葉原の三陽物産東京支社で行われたカバラン・ウイスキー・セミナーでティスティングした3種類のモルト・ウイスキーの感想。
カバラン・ウイスキーはご存知の方も多いと思いますが、いま世界中で注目を浴びている台湾初のシングル・モルト・ウイスキーです。
 台湾ではそもそもウイスキー自体造られたことが無く、国産初となるウイスキーは国内からの期待も大きいのではないでしょうか。
スコットランドのキルホーマンやウェールズのペンデーリンといった新興蒸留所に力を貸している世界的に有名なアドバイザー、ジム・スワン博士の下で蒸留が始まったのが2006。
 それからまだ10年にも満たない歳月のうちに、その蒸留所で生み出されたウイスキーは世界中の様々なコンペティションでいくつもの賞を取り、さらには本場スコットランドで行われたイベント、バーンズナイト2010ではその他のウイスキーを押さえ高得点を得ました。
 最近では日本にも様々な種類のカバラン・ウイスキーが輸入され、国内のウイスキー・ファンを騒がしています。

 今回のセミナーでは、まずカバラン・ウイスキーがどのような風土の中でどのようにして生み出されているのかお話を聞きました
 台湾は沖縄県の宮古島や石垣島から西に向かった位置にあり、亜熱帯気候のため夏場は平均気温が30度近くなる月が8ヶ月と長く、冬場でも10度を下回ることはありません。
シングル・モルト・ウイスキーの本場スコットランドと比べるとかなり平均気温が高い地域にある国で、ウイスキーが造れるのか心配になってしまうほどです。
 蒸留所は北部にある首都の台北から南に下った宜蘭(ぎらん)にあります。
『カバラン』という名前はその土地の先住民族の名前を由来としているそうです。
蒸留所の写真が映し出されましたが、周りにはヤシの木が生えており、まさに南国!といった場所に建てられています。
 ウイスキー製造では、台湾の五大山脈の一つ雪山山脈から流れ出る天然水を仕込み水とし、それがまたカバラン・ウイスキーの味わいを造り出しているとのこと。
原料の麦芽は輸入麦芽だけではなく国産麦芽を用いており、こだわりが感じられます。
そして驚いたのがその蒸留器の数。
これは後で調べてわっかたことですが、スコットランド製ポットスチルが4基とドイツ製のホルスタイン型スチル(一般的にはフルーツ・ブランデーの蒸留に用いられる)がなんと8基。
さらに近々ポットスチルをもう4基導入し計16基になるという話もあり、そうなると日本の山崎や白州を抜く生産規模になります。
熟成庫も現在のものだけでは足りずもう一棟建設予定があり、いかに、今世界でカバラン・ウイスキーが人気があるかが窺えます。

テイスティングではスタンダードの『カバラン・クラシック』、アメリカン・オークの新樽とリフィル樽原酒の『カバラン・ポーディアム』、そして『カバランソリスト・シェリー・シングル・カスク・ストレングス』の三種類。

●『カバラン・クラシック』
色:黄金色、蜂蜜色
香り:バニラ、バーボン、パイナップルのような酸味の利いた爽やかな果実
トップにはしっかりとエステル香が感じられ、スコットランドのスペイサイ・ドモルトを思わせる。
アルコールの刺激が目立つが、程よい甘さがある。

●『カバラン・ポーディアム』
色:クラシックとほとんど変わらない黄金色、蜂蜜色
香り:控えめなバニラ、洋梨などの果実香、柑橘、スパイス、フローラル
クラシックほどの甘い香りは出ていないが、柑橘系の爽やかさがある。
ドライでスパイシー。

●『カバランソリスト・シェリー・シングル・カスク・ストレングス』
色:赤み掛かった琥珀色、オロロソ・シェリー
香り:スパイス、カカオ、ナッツ、ラムレーズン
カスク・ストレングスということもあり香り高いシェリー樽熟成。
最初はカカオなどナッツのような香りが感じられ、だんだんとラムレーズンのような甘い香りがしっかりと出てくる。
飲み込んだ後の口の中には、赤ワインを飲んだ後のような渋みが残る。

 熱い気候の中では熟成が早く進んでしまうためウイスキーの熟成には向かないと言われていますが、インドのアムルットしかり、亜熱帯気候の台湾でもスコッチ・ウイスキーと違わぬ香りを持つモルト・ウイスキーを造っていることに感動しました。
 しかしどれも香りは良いのですが、2~4年程しか樽で寝かせていないためか口に含んだときに感じる若さが少し残念だというのが個人的な感想です。
 しかしそれは仕方の無いことで、樽材成分の抽出速度もエンジェルズ・シェアの割合もスコットランドに比べると5倍近くも上回ってしまう台湾では長く熟成させることが難しいとのこと。
熟成が早く進むからといって短期間で造られたウイスキーと、スコットランドのように緩やかな熟成で10年、20年と歳月をかけて完成したウイスキーとでは違うものになると改めて実感したセミナーになりました。
 只、そんなハンデを背負いつつも、スコットランドのモルト・ウイスキーと肩を並べてきているカバラン蒸留所の今後には目が離せません。