短い秋は西に向かう #13


廿日市市から広島市を突き抜けて呉市に。


渋滞の都市部の道から目指す深山の滝に向かう県道へ。この道、所々市街地でクネクネあり、アップダウンあり、交通量ありでかなり神経を磨り減らします。地元車に追従しながら流れに乗って走行していましたが、滝まで5km辺りから後ろの車に明らかに煽られ始めました。


自分は煽られると制限速度でゆっくり走る悪い癖があります。滝の駐車場に入るため、急に曲がるかもなので危ないとも思いましたし。


相棒のナビは目的地までをカウントダウン、見通しの悪い坂を下ると………なんと入り口付近一帯、大規模な砂防工事が行われていました。

一瞬でこれは無理と観念し、そのまま通りすぎました。(工事状況確認日:2023.11.29)


煽り車には観念すること無く、引き続き国道までゆっくり安全運転で走行し、そこでお別れしました。


呉市街地で次の目的地をインプット。

滝旅の最後となるであろう白糸の滝へ。


幹線道路から広石内の住宅地の道。

滝への入り口はここを曲がって先に進むのですが、相棒には厳しそう。

ちょうどご近所の皆さんが井戸端されていたのでお聞きすると「滝はあのトンネルの向こう側だよ~」「車はここに停めていいよ~」と。有難いお言葉に甘えさせていただきました。

トンネルの向こうって……アレ……ですか?
厳しい徒歩15分になりそうです。

黒瀬川の赤い小滝橋を渡ると、いよいよ登り坂が始まります。

滑り止めのギザギザがあるほどの坂道、振り向けば眼下に市街地。

前を向けば東広島呉自動車道の高架橋。

ビー玉を置けば、先程の赤い橋まで転がっていきそう。高架橋の下を通過する頃には写真を撮る余裕も無くなりました。

厳しい登り坂。休み休み歩みを進めるとソロの方とすれ違いました。「この先の分岐はどちらに行っても滝に行けるけど、普通は左に行きますよ」と教えていただきました。

ひたすら歩く、登る。

やがて滝行のための小屋?などあって滝に到着です。30分近くかかってしまいました。
まず滝の直ぐ左手にある不動さん?に参拝。そして………

白糸の滝
落差38m 高い滝です。下からは見えませんが上には7mの滝がもう一段あって二段の滝なのだそうです。もうこの一段で十分だと思いますけど。

独特のゴツゴツした岩肌の切り立った絶壁は右側に回り込むように。

水は途中から目視できません。周囲があまりに雄大なのでそう見えますが、そこそこの水は落ちています。

節理とは異なるモノトーンの岩壁。明るければ木々の緑が映えたことでしょう。

時々、風に煽られて雨のようにも。

滝つぼは浅く、薄暗くて透明度はわかりませんが清潔な感じでした。

右手から滝を見上げる。

浅い滝つぼ。この様な滝つぼを見ると、この石を取り除くとどうなっているのか、いつも想像してしまいます。

ゴツゴツ、ギザギザの岩壁。この岩石は「溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)」と言うそうです。

時刻は16:30頃、最後の滝なので時間いっぱい滝前にいよう。刻々と谷間の滝は薄暗くなってきました。

「あの~すいません」

全く突然に背後から女性に話しかけられました。驚く間も無く振り向くと、いつの間にか白い行衣の女性がひとり立っていました。直ぐに滝行に来られた方とわかりました。

滝を譲り帰ろうとすると「居てくださって大丈夫ですよ」と。できるだけ干渉しないように遠くで滝頭や森を眺めていると、とても凛とした、そしてどこか優しい声が滝音とともに響き渡りました。

信仰の対象にもなる崇高な白糸の滝。突然現れた巫女さんのような女性が、自分の滝旅を見事に締めくくってくれました。

もう思い残すことはありません。
帰ろう。

先ずは相棒のもとに。

下り坂を転がるビー玉のように。

あと少し。

相棒を停めさせていただいたお宅、夕げの支度で忙しそう。そのまま失礼しました。


雲母の里♨️

遠距離運転に備えてゆっくりと湯に浸かり、リフレッシュしました。

とんかつ 日刈り
今回の滝旅では初めてのとんかつでした。そして逆上するほど美味しかったです。渡し箸……お箸の作法に失礼があり申し訳ありません。

とんかつやさんの駐車場で自宅をインプットすると780km 8時間。西条I.Cから山陽自動車道に乗り、二度仮眠して翌朝の8:20に無事帰宅しました。


【まとめ】

◯2023.11.4 ひとりで。

◯天気は晴れ。

◯トンネルの向こう側まで続く坂道。

◯ゴツゴツの絶壁を一筋の滝。

◯滝行の声が響き渡る。


◯訪れた滝

○白糸の滝:広島県呉市


【滝旅の総括】

11月初め文化の日が絡む連休に山陽・山陰の滝をめぐりました。丁度、岡山県+鳥取県で2日、広島県+島根県で2日、合わせて4日の滝旅です。会えた滝は41、その全てが初めての滝でした。深山峡や奥匹見峡などには複数の滝があったので結果多めでしたが、この時期であれば5~6滝/日が理想的と考えています。


中国地方の滝はここ数年の豪雨や、特に今年8月の台風の影響を受けていました。本文ではあまり触れませんでしたが、装備を整えて自己責任で向かった滝は幾つかありました。遊歩道や林道の測量や修復工事をされている方々もお見かけしましたが、もう感謝しかありません。


滝旅を振り返ってみると、ちょっとしたタイミングや巡り合わせの"あや"で、結果が全く変わったなと思いました。例えば落合渓谷でチラッと人影を見なかったら……って、そもそもお尻のガム騒動が無かったら通行止めの入り口で引き返していたことになります。ガムに運命を感じてしまう柔らか頭の自分です。


最後に。唯一訪れていないのが山口県でした。まだ寂地峡五竜の滝と付近の数滝しか会えていないのですが、県内には魅力的な良い滝が沢山あります。いずれ山口県を中心とした滝旅ができればと思っています。


走行距離2,400km。

短い秋、西に向かった滝旅は以上です。

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