秋の四国の滝めぐり 2018 ⑧
前夜、最終日を前に迷っていました。
最低限の目標、常識的な行程でも良いのだけれど、非常識な行程で確実に丁寧に訪れたい。
そこで………
高知市から海沿いの国道55号線を東に約120kmひたすら進み、室戸岬を回り込んで徳島県の道の駅 宍喰温泉まで。そこで車中泊。
夜明け前のまだ暗いうちに準備して、近くのセブンで朝食。初日に走った国道193号線に南から入ります。
勿論、目指すのは轟九十九滝。
真っ暗な深山の道。国道から王余魚谷川(かれいたにがわ)に沿った県道148号線に。

駐車場で明るくなるのを待って、早速、滝に。

全ての滝を見ることは難しそうです。
滝見橋から最奥の鍋割滝まで約1,500m、滞在時間は3時間を見込んでいます。

本滝神社。鳥居があると不埒(ふらち)な自分は通っていいのか、一瞬、躊躇してしまいます。

轟神社荒魂鎮座。荒ぶる魂を鎮めた神聖な場所。
轟の滝 (本滝)

轟神社のご神体です。気絶するほど昔、突然、ズレた断層の弱点を突いて、少しずつ、少しずつ削って目の前の姿になったのでしょう。

落ち口から朝の光が射し込んで落差58mの幻想を。

あれは岩の一部なのか、それともチョックストーンなのか?

岩の左右から水が落ちるので、その分だけ水線が複雑になります。

その水は閉じた空間になっている神秘の滝つぼに。
良く見ると水が削って後退したと言うより、左右にグイっと引き裂かれた………そんな印象を持ちました。

この日は水が少なかったので、奥まで目視することができました。普段は水飛沫が乱舞しているのでしょう。
秋祭りで御神輿を担いだ方は間近に見ることができますね。

朝、日光が届く前の青き滝つぼ。
ある日の姿を想像する………
岩間は濃密な水飛沫の白で埋まり、真ん中よりやや下に太く鮮明な虹が架かる。滝つぼの明るい青は、きらきらと妖しく揺らめく。
滝の変化を感じること。
例えそれができなくとも変化を想像すること、それだけでも楽しいです。

轟の滝の下流側にも滝が落ちています。九十九滝もあるのだから恐らく名前はあるのではないかと。

流石の姿に見とれるの図。
少し前から人の気配を感じていました。鳥居の先で一眼で熱心に撮影されていた男性。自分と入れ替わり滝前に………僕に気を遣ってくれていたようです。
直ぐに挨拶とお礼を。愛媛の "Mさん" は、九州と四国の滝を中心に巡られている撮り滝さん。四国初心者の自分に、ワクワクするようなお話をしてくれました。
直ぐに滝前を譲って僕は一足先に上流へ。滝見橋まで戻り、滝めぐりの遊歩道に。
見上げるような急な階段ですが二重滝からはなだらかになると………。

階段や斜面を登りきると山道に。

すぐに二重滝への踏みあと。

川に出ると………おお、あの先は!

轟の滝の落ち口。

下から見えたあの岩が、今、自分の隣にあります。水はぱっくり割れた岩の空間に吸い込まれ、眼下にはチラッとMさんが。
二重滝から轟の滝の落ち口まで素晴らしい景観を楽しむことができます。
二重滝

視野に沢山の滝があり絶景です。

滝の落ちかた、水の流れ、岩と巨石が絶妙のバランス。とにかく"絶" をたくさん付けたくなる滝でした。

こういう滝は立ち位置で滝の印象が変わります。
確かに二重滝を過ぎると道が平坦になってきました。

渓谷に張り出した綺麗な葉。この太い枝の根本にはものすごい力がかかっているハズ。
川沿いの遊歩道を歩いていくと………
横見滝

この滝はナメとは違う一つの岩盤を落ちる滝。特筆すべきは滝つぼがそのまま渕になって続いていること。

こんな感じです。

峡谷で良く見かける倒木。猿🐒や猫🐈はいとも簡単に渡るのですが自分はどうだろうか?……と自問自答。

横見滝を横から見ながらさらに進むと………
船滝 (舟形滝)

狭まった岩間を勢い良く水が流れます。

この滝も滝つぼはそのまま渕になっていて、動と静の両方を感じることができます。

少し登って………
丸渕滝

滝までの水路は掘削の真っ最中。滝つぼは丸いのでしょうけど、ここからは良く見えません。
遊歩道から丸渕滝の滝上への踏み跡を辿ると、次の滝に直接、アプローチできます。
鳥返し滝

岩間の飛沫、時が止まったかのような渕、そして滝前のゆったり感。

正統派の滝ですが、岩が一度水を受けてから滝つぼに流します。

滝の勢いが止められているので、滝つぼは穏やかで大きな水溜まりのようです。

水の透明度も高く。

沢靴はまだ水に浸けておらず、渡渉しなかったのが、ちょっと後悔。
滝はあとひとつ。

最後の滝までは、少々歩きます。
鍋割神社

轟神社の奥宮です。

滝はありません………と書かれると、ちょっと覗いて見たくなるのが性(さが)。
遊歩道は更に続いていましたが、少し歩いて引き返し神社の手前にある滝に。
鍋割滝

陽が高くなり光がまともに滝に当たります。
微かな踏み跡があったので、滝の正面に降りていきます。

我先にと溢れる水を落ち口の岩が平等にさばいて落としています。滝下に降りることができれば裏見もできそうですが。

落ち口は小さなお釜。

優しく落とされる水は………

空中を引力に引かれて………

鍋の底のような滝つぼに。
そんな姿を対岸の岩の上から暫し眺めて、そろそろ帰路につきます。

鍋割神社から少し下った趣のある遊歩道。

どんな事情で横に伸びたのでしょう?
途中、ゆっくり撮影しながら登ってくるMさんと再会。連絡先を交換して………
「いつかまた、どこかの滝の滝つぼで」と。

渓谷には光が入りキラキラと輝く。
本滝には何人かのお客さんが見えたので、帰りは寄らずに駐車場に戻りました。
ほぼ3時間、轟九十九の滝めぐり。
さあ、ここからは国道193号線を北上し国道195号線まで、およそ30kmの酷道となります。王余魚谷川に沿った県道から国道に出ると、国道なのに道幅が狭くなりました (笑)。
霜越峠付近。

ある意味、素晴らしい酷道のドライブ。
たった一台の車とも、すれ違うことはありませんでした。

一時間と少し、随分、下ってきました。

途中、エメラルドグリーンの水に、思わず相棒を停めて見入ってしまいました。

この海川口橋を渡れば国道195号線。
右折して小見野々ダムへ(笑)。
東に向かえば徳島市、自宅への帰宅コース
北に向かえば大釜の滝、雨乞の滝アゲイン
西に向かえば高知県との県境
時刻はa.m 11:40。
【まとめ】
◯2018.11.25 ひとりで。
◯天気は晴れ。
◯幻想、信仰の轟九十九。
◯二重滝、鳥返し滝など秀瀑がたくさん。
◯酷道193号線の霜越峠編。
◯訪れた滝
轟九十九滝:徳島県 海部郡 海陽町
○轟の滝(本滝)
○二重滝
○横見滝
○舟(形)滝
○丸渕滝
○鳥返し滝
○鍋割滝