北海道の白い丘
本日は雪。
窓越しに舞い落ちる『空からの贈り物』を眺めていると『真っ白に輝く大きな丘』を思いだした。
北海道。
丘の町『美瑛』。
鳩山由紀夫先生の秘書時代、北海道に住み始めて3ヵ月が過ぎた1月の早朝、所々『吹雪く』中車を走らせていた。
転勤してきて以来初めての休日。
友人も知り合いもいない厳寒の『北の大地』
『目的』も『目的地』もないドライブ。
ラジオから『Elton John』の『Your Song』が流れていた。
『出だしのピアノの音』がいつもより大きく聞こえたのは、誰もいない一直線の道を走っていたからだろう。
360度白の世界。
初めて見る世界だった。
そして、『灰色で鉛色の空』から『軽く舞い上がりつつ、軽く舞い降りる雪』が明らかに『東京と違い』遠くに住んでいることを感じさせた。
前方に青い点が見える。
近づくと道路標示。
そこには『富良野』という文字が見えていた。
真っ直ぐ進むと『富良野』に着くらしい。
『富良野』。
『北の国から』というドラマを見た記憶がある。
その舞台となった地だ。
『行ってみよう。』
雪道に気を使いながら進む。
どれぐらいたったか記憶にない。
『富良野』へと到着した。
住んでいた『苫小牧』と違う『凄まじいばかりの豪雪』が印象的だ。
『北の国から』のロケ地だという『麓郷の森』へと行って見た。
深い森の中にたたずむ木造の小さな家。
なぜか懐かしく感じた。
車を走らせる。
『富良野』を越え『美瑛』という町に入った。
印象的な『なだらかで美しい丘』が広がる。
一つ一つの丘が生きているようだ。
思わずため息をついた。
日本離れした絵葉書で見る『ヨーロッパ』で見かけるような光景が広がっていたからだ。
展望台に着くと吹雪が止み晴れ間が見え始める。
車を降り、あたりを見回すと遠くに『白く輝き始めた十勝岳』が見えた。
・・・政治の道を志してから、10年以上が経とうとしていた。
目標に向かい自分なりにはコツコツと積み重ねてきたつもりだ。
日々自分の持ち場でベストを尽くし全力投球してきた自負もある。
それでも、将来は見えなかった。
もともと、『政治の道』に進むのがそぐわない家で生まれた。
秘書として『政治の現実』を身近で見れば見るほど『超えるべき山』は高く見え自分が『ドン・キ・ホーテ』に思えた。
このまま進むのは、装備なくあの十勝岳を登るようなものなのかもしれない。
そんな事を思ったのを覚えている。
・・・
車に乗りしばらく進むと『高さ30mはある大きな急斜面の丘』が目の前に広がっていた。
車を降り丘を見上げる。
『大波に飲まれる瞬間』のような気がした。
先ほどまでの吹雪が嘘の様な快晴。
目の前の『白い大波』が眩しすぎて戸惑う。
丘の上に立つ一本の木。
近くにいた『キタキツネ』が足跡一つない『雪の丘』をゆっくりと登っていく。
『丘の上の木までたどりつけるのか?』
『キタキツネ』が自分の運命を占っているように感じた。
『キタキツネ』は目の前を通り過ぎ足跡だけを残し『線』になり『点』になり進んでいく。
『あと少し。』と思った瞬間、『丘の上の木の後ろのある太陽』が目に入り目の前が真っ白になった。
視力が元に戻るともう『キタキツネ』はいなかった。
足跡だけが残る。
『登りきったのだろうか?』
『自分の運命はどちらに転んだのか?』
答えは出なかった。
でも、『全力で頑張って力尽きたらその時に考えよう。』
そう思えた。
北海道在住中、何度か美瑛に訪れた。
しかし、何度訪れても『あの場所・あの丘』にはたどり着けなかった。
あれはいったいどこだったのだろうか?
なぜ、何度行ってもたどり着けなかったのだろう?
家の窓越しに舞い降りる雪。
『積もりつつある雪』があの頃の自分を思い出させた。
神奈川県議会議員 滝田 孝徳(中原区)