『かとう・まさる』
『3年B組金八先生』と言うドラマがある。
本日、ついに再来月を持って『金八先生が定年退職する設定』で30年間近く続いたドラマのピリオドが打たれるという話を聞いた。
それを聞いてある名前を思い出した。
『加藤優』
『かとう・まさる』
わからない世代の方にはわからない名前だが、30代半ばから40代半ばぐらいの方々にとっては、ほとんどすべての方が知っていらっしゃり、たぶん数字に表せば100%に限りなく近い数字だろう。
まさに『ジェネレーション・ヒーロー』だ。
加藤優。
『3年B組金八先生Ⅱ』における主人公ともいうべき人物の名。
数多くのドラマがあるが、これだけ役名が浸透している名はそうはない。
私自身も演じた俳優の名については『直・・何とか』ぐらいだった記憶しかない。
演じた方の名前すらわからなくなる(失礼!)ぐらいのインパクトのある役であり、その俳優さんにとってもハマリ役だった。
ドラマ『金八先生』の舞台である桜中学。
ここに転校生としてやってくるのが『加藤優』だ。
転校生と言ってもただの転校生ではない。
いわゆる近隣の荒れている中学『荒谷二中』の番長(バンチョウ。凄い言葉の響きだ。今では死語だろう・・・)だ。
転校当日に沖田浩之演じる『松浦』と大喧嘩。
椅子を振り上げ机をひっくり返しての大暴れをする。
時は流れる。
様々な事を経て札付きの不良少年だった『加藤優』も金八先生の指導もあって心開き、3年B組に溶け込み、就職も無事決まり卒業を控えるだけとなっていった。
前の中学で『腐ったみかん』とされていた頃の荒々しさも消え道理のわかる少年へ成長をしていた。
そんなある日、荒谷二中の仲間がかつての『番長』である加藤優のところにやってくる。
そして、『腐ったみかん』として不良たちを排除し続ける教師達に復讐をしたいから『力を貸して欲しい』と語る。
ここで要請に応じれば、金八先生をはじめとした桜中学のすべての人々を裏切ることになる。
かつての仲間達からの強い要請と桜中学で培った温かい人間関係。
どちらかをとらなければならない。
相反する二つの選択肢で揺れる『加藤優』。
『加藤がいなくなってから、さらに激しく教師にいたぶられている』と語るかつての仲間に、自分だけ幸せな学生生活を送っている事への『贖罪意識』からか幸せだったであろう『今の学生生活』を捨てる決断をする。
そして、懸命に止める桜中学の仲間を振り切り『荒谷二中』へと向かう。
ここから、先は『TVドラマ史上最大』と言われる名場面が待っている。
加藤とその仲間達は『問題あるとかつての仲間達が言う教師』を放送室に入室させ立てこもる。
全校生徒にやりとりが放送される中、教師達は非を認め謝罪をする。
外に出る『加藤優』。
荒谷二中の全校生徒に拍手で迎えられる『加藤優』。
と同時に校舎内に控えていた警察官が検挙に走る。
中島みゆきの『世情』がかかる中スローモーションで画面が推移する。
逃げる不良達。
唯一抵抗せず無表情で検挙される『加藤優』。
その立ち振る舞いから、彼にとっては全てを覚悟した上での行動だった事がわかる。
護送車に入れられようとする不良達、その多くが護送車に乗ることを拒否し抵抗する中、すべてを達観したかのごとく無表情で静かに最後部の座席に座る。
走り去る護送車。
追いつかないのがわかっていても追いかける加藤の母・・・
本来、この種のストーリーにいくら演出をこらし、いくら生徒側の立場からドラマを作っても多くの方々の気持ちを生徒側に移入をさせるのは無理だろう。
なぜなら、どんなに美化してもそれは『校内暴力』でしかないからだ。
しかし、このシーンに限ってはほとんどの方が生徒の側に立って見てしまうだろう。
手錠を掛けられる際の表情。
警察に連れられる際、金八先生の横を通る表情。
まさに『カリスマ』が降臨をしている瞬間であり、『神ががりの演技』とはこのことだ。
多くの俳優が一生かけても到達することがない『演技の神様』でしかわからない世界に『加藤』演じる俳優は登ったのだ。
その後、『加藤優』を演じた俳優さんの消息がどうなったかはしらない。
聞くところによれば、芸能の世界からは引退し別の世界で働いていると言う。
俳優として持っていた『一生分のエネルギー』を10分程度のシーンで使い果たしたのかもしれない。
初放映から30年・・・
『加藤優』の迫真の演技を思い出すと共に時の流れの早さを痛感した。
神奈川県議会議員 滝田 孝徳 (中原区)