こんにちは。「たきた動物病院」院長の滝田です。
今回は「犬の耳介血腫(耳血腫)」についてのお話しです。
耳介血腫とは、耳の軟骨板内に血液が貯留している病態で、耳血腫ともよばれます。
通常耳介の凹面に波動感のある液体で満たされた腫脹が生じます。
耳介凹面全体におよぶ場合と一部に限局する場合があります。
基礎となるはっきりした原因はわかっていません。
病因のひとつとしてあげられている外傷は、外耳炎に伴う痒みや疼痛のために頭を振ったり耳を掻いたりすることにより生じることが多く、外耳炎がひとつの潜在的な原因とも考えられます。
頭部を振ることにより耳の洞様血管に波動を引き起こし耳介軟骨の骨折が起こり、大耳介動脈の分枝に出血が起きることが直接の原因と考えられています。
また、毛細血管の脆弱性の増加を起こすような基礎疾患によって起こることもあります。
症状
耳介内側に波動感のある腫脹が形成される急性期には熱感があります。
通常、病変は急速に出現し腫脹した部分は緊張しているので、犬は疼痛等の不快感を示し、頭を振ったり、耳を掻いたり、擦ったりします。
慢性化すると線維化が起こり耳介は硬く肥厚し、耳介の形態は変形しカリフラワー状の外観を示すこともあります。
診断
視診、触診による身体検査によってかなり診断できます。
腫脹部からの吸引により血液あるいは血様漿液が採取されれば確定的です。
外耳炎に関与している可能性も高いので外耳炎の原因に対する診断治療を行い、再発を予防する必要があります。
治療
局所の治療には内科的方法と外科的方法があります。
治療の目的は血腫を除去し、再発を防止し、耳介の変形を防ぐことです。
再発を防ぐ目的で潜在的に存在する疾患、特に外耳炎や外耳炎の原因となるアトピーなどの基礎疾患の治療が必要です。
1.内科的治療
排液とグルココルチコイドの局所投与
血腫内の液体を除去し、完全に抜いた状態でグルココルチコイドを注入し圧迫包帯を施します。
この方法を何回か繰り返します。しかし、この方法では、再発やうまく治癒せず耳介の変形を生じさせる可能性が高いです。
2.外科的治療
切開縫合
血腫上の皮膚をS字状に切開し、血腫内から血液やフィブリンを除去し内腔を洗浄します。
耳の凹面の皮膚と軟骨を耳介の縦方向に平行になるように5~7mmの幅で縫合します。
この時排液のために切開縁は少し間をあけたままにしておきます。
ガーゼを当て軽く圧迫包帯をしておきます。
予防
原因がはっきりしないので予防も完全ではありませんが、外耳炎や掻痒を起こすものが一因になる可能性が高いので、外耳炎など頭部、特に耳に掻痒を生じる疾患を治療することが予防になると考えられています。