いまから145年前の1877年2月20日。
「政府に尋問の筋これあり」として上京を目指した西郷隆盛率いる薩軍が、熊本城を攻略するために、川尻より本陣を移動したのが本荘である。
一説には薩摩軍は戦争になるなど思ってなく、熊本城に入城すれば熊本鎮台から歓待を受け、弾薬の補給などもしてもらえると考えていたという説もある。
しかし、22日明け方、本荘に陣を構えていた池上四郎率いる薩軍第五大隊は、熊本城の新政府軍から砲撃を受けた。それから6カ月に渡る日本最後の内戦、西南戦争が始まった。
そんな歴史の表舞台にも登場した本荘に昨年できたのが、熊本新アイドル劇場・Re:fiveシアターである。
てなわけで、昨日はこのRe:fiveシアターに、Re:fiveのワンマンライブを見に行った。
ワンマン、二部制、しかもワンコイン500円でドリンク付きと、とにかくお得すぎたライブ。
Re:fiveのライブは半月ほど前に天海でのLike!、そして先週は場所はRe:fiveシアターだったけど、Junior Flavor熊本主催の生誕ライブと対バンイベントだった。
もちろん対バンライブで、他のアイドルのヲタクの前で短い時間でも最高のパフォーマンスを演じる集中力と完成度にもたまらないものはあるが、ホームの劇場でリラックスしたメンバーを長時間見られるワンマンライブはやっぱり楽しい。
特に昨日は、橘かえでさんと柊わかばさんふたりのユニットだけではなく、つきさんとういさんの研究生二人のユニット、更にはつきさんひとりのソロ曲と新たなチャレンジも目白押し。
チャレンジといえば、これは前日の土曜日にすでにお披露目していたそうだが、研究生二人が「ラクガキアクセル」と「なんてんまんてん」にも参加していた。この二曲は対バンイベントでやっても十分なクオリティの高さに舌を巻いた。そして研究生も何度もステージで披露している定番の「St you…」や「朝からカツカレー」は、歌割を研究生主体に変える新しさにチャレンジしていた。
普段見られない姿を見られるレア感もうれしいが、それ以上に、今後の成長のために新しいことにチャレンジし続けるスタイルを感じられてぼくはうれしかった。
昨日のライブ、特筆すべきは研究生のつきさん。
ソロ曲もお見事だったし、持ち前のセンスの良さでこの日のメンバーのスタイリストもやられていたらしい。
ぼくはツイッターや現場で漠然とつきさんのことを「大物」と呼んでいたけど、なんでそう感じていたのか、昨日やっとつかめた気がした。
つきさんの最大の魅力は、「自分が、こういうふうになりたい」、「こうしたい」というイメージを具体的に自分の中で描けていて、それに向かって全力で走っていることだと感じた。目標が自分の頭の中にはっきり持たれているのだ。
これ、文字で書くとなんでもないことのようだけど、アイドルでここまで明確に自分の道を信じられている人はそんなにいないように思う。ぼく個人が出会ったアイドルさんの中でも、確実にそのタイプといえるのは、キャラ的にはつきさんとは全然違うけど、exLinQで現在トキヲイキルやプロレスラーで活躍中の伊藤麻希さんぐらいだ。
どうしても、アイドルにとって結果というのは「人気」である。だから、その人気を示すツイッターのフォロワー数や物販列の長さ、場合によってはオリコンチャートなどの数字を目標にしてしまいがちだ。TIF九州予選のようなアイドル同士のコンペティションの順位もアイドルにとっては目標になりやすいと思う。
なぜなら一般的に数字というのは客観性があると言われているからだ。しかし、ぼくはこの数字は懐疑的に見ている。数字にエビデンスがないからだ。
そもそも100人しかフォロワーのいないアイドルより、フォロワー数1000人のアイドルが10倍素晴らしいという根拠がない。100メートルを10秒で走る人は9秒で走る人よりも1秒足が遅いというような確実な根拠がなければ客観的な数字とは言えない。
でも、多くのアイドルは結果として数字を気にする。そしてそれは普通の事だ。
なぜなら、アイドルなどの芸能はスポーツなどと違い客観的な評価は本来できないものだが、それがないとアイドルを選ぶ側のファンに良さが説明できないからである。
画廊で並んでいる絵画の良さを説明するには、その絵の良さを書いた説明文を用意するのではなく、その絵の相場価格という数字を貼った方が、立ち止まる人が多いのと同じ理屈である。「この絵はこういう理由で素晴らしいです」と説明するより、「この絵は5000万円します」と言ったほうが、絵を見てもらえる可能性は高い。数字にはそのような魔力がある。
だから、絵画の価格のようにわかりやすい数字を集めるためにアイドルは努力する。ぼくはそれはそれで、アイドルが成長するプロセスとしては正しいと思うし、その数字を目標にすることで結果的にアイドルのパフォーマンスが素晴らしくなるならばうれしい。数字を伸ばすためにファンの要望を取り入れるアイドルも素敵だと思う。
ただ、それが普通だからこそ、「なりたい自分」を突き通すつきさんが、ぼくにとって大物に見えるのである。
ヲタク側から言わせれば、ヲタクの評価なんてころころ変わるものである。
そんなもの気にしないでこれからもつきさんには自分を貫いてほしいと思っている。
そしてその、他のアイドルにはないスタイルが、「大物」と感じてしまうほどの強い存在感を、研究生でありながらも示しているなと感じた。
そのつきさんがバチバチに存在感を示している中、当然他のメンバーも生き生きしてるのがいまのRe:fiveだ。
橘かえでさんは、めちゃくちゃに見えても安定したリーダーシップを示していた。
「原チャリで転んだ」とMCでは笑いを誘いながらも、曲中ではやはり研究生とはものが違う圧巻のパフォーマンスを見せていた柊わかばさん。
たぶんつきさんのセットで、一部と二部で髪形を変えていたういさんは、研究生ユニットとレアな歌割でいつもよりも積極的にステージを楽しんでいる空気が伝わった。
昨日個人的に一番ほっこりしたのは、二部のMCコーナーでの企画「なぞなぞ大会」だった。
四人の空気の多幸感に圧倒されて細かい所は覚えてないのが申し訳ないが、なにかがきっかけで、橘かえでさんを、柊わかばさんとつきさんが敵対するという場面があった。なぞなぞの優勝を争うか、答えにケチをつけるか、そんな展開だったような気がする。
たまに橘かえでさんが暴走したときに、柊わかばさんが笑いながらツッコミを入れるというのは最近のRe:fiveのMCの定番になっているが、そのわかばさんのいつものテンションにつきさんが乗っかって、かえでさんをふたりでいじっているような感じだったのだ。
そしてそれを見て、ういさんがかえでさんをヨシヨシとなぐさめる。最年少が最年長をなぐさめるという構図もおもしろかったが、わかばさんとつきさんのコンビネーションもよかった。
こういうときの振る舞いで、この四人って仲良さそうだなあというのと、言いたいことも言い合える関係がグループを強くするよねえと、いまのRe:fiveの目に見えない魅力を伝えてくれている気がしてほっこりした。
歴史にも残っている本荘の地に劇場を構え、毎週のようにイベントをしているRe:five。
魅力的な四人の姿が、いま、最高に楽しい!