ピンキースカイよ、井戸を飛び出せ! | 君が好き

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アイドルの話でもしようず。

非常に懐かしい光景だった。
佐賀でのピンキースカイの単独ライブとしては今年の7月以来ではあったのだけど、いわゆるオールスタンディングのライブハウスではなく、のんびり座って見る会場としては今年の3月のなぎりんソロライブ以来、二人揃ってのピンスカの佐賀でのそういうライブといえば、去年の11月22日のステージマロでのピンスカライブ以来。
ピンキースカイの二人が会場入口で開演前からファンを呼び込み、ライブの前には客に空調は暑いか、寒いかを聞いて回る。
ヲタクがなにかを言えばMCでメンバーが拾うのが当たり前の距離の近さで、途中にはピンスカの二人がゲームをするピンスカライブを挟み、圧倒的な歌唱力で歌を聴かせながらも、サガコントで鍛えた笑いでステージのアクセントを作る。
昨年駆け出しのピンキースカイが毎週二部でやっていた「ピンスカライブ」そのものの構成はぼくにとって、懐かしく、ピンスカの原点ってこんなんだったよなあとぼくはしみじみ見つめていた。


入場者の数も当時と変わらず、20名ほどだった。
去年のピンスカライブは昼と夜の二部制で、だいたい夜の部の多いときでこのぐらいの人数で、昼の少ないときにはぼくの見たのでも5人、聞いた話じゃ3人ということもあったらしいが。
その入場者数に、はじめて佐賀でのピンスカの単独ライブを見に来た知り合いの熊本のヲタクが首をひねっていた。
「少なすぎる」


今回のライブに間しては、先週までピンスカがQZでばたばたしていたことなどもあって、告知が5日前のツイキャスで口頭で伝えられたのがはじめて、正式にツイッターに公表されたのは4日前だった。
会場も初見の人にはわかりづらい「ピンスカ秘密基地」という場所なこともあり、ぼくとしてはこのライブ自体も、佐賀の人に、演劇が一区切りつき、活動をこれからも仕切りなおしてやっていくというような挨拶的なものととらえていたから、そこまで違和感を感じなかったのが本音だが、たしかに去年の11月のピンスカライブをやっている頃とはアイドルヲタクに対する認知度も変わっている。
そんな状況での地元のライブでこの人数というのは、他県のヲタから見れば違和感があるのかもしれない。


そういえば、積極的にピンキースカイと共演している福岡のアイドルグループの運営さんにも「もっとピンスカは人気あっても当然だと思うんですけどね」と言われたことがある。


ぼくとしては内心、それらの話を聞いても、正直にいうと「でもいまの九州のロコドルの単独での集客はどこもこんなもんでしょ」と答えていた。
ぼく個人としてはピンキースカイは、あるあるCityで対バンを重ねファンを増やしCDを出した第2世代のアイドルに続く、九州のロコドルの第3世代にカテゴライズしていた。
cherishやSmile、Tick☆tikや最近だといちご姫とか、そういう成長期のアイドルの中にピンキースカイもいると思っていた。そしてそれらの第3世代のアイドルのゲストを呼ばない単独ライブとしては、このくらいの入場者数が妥当とぼくは思っていたからだ。
そんなぼくに、昨日話していたヲタは、意外な視野で人数の少なさを解消するアイデアをぼくに話してくれた。
「アニヲタや一般の人を巻き込めば、200人ぐらいは集められるんじゃないですか」


その熊本ヲタは、天草アイドルフェスタに出演していたピンキースカイを絶賛していた。
天草アイドルフェスタは、アイドルイベントとしてはかなり特殊なイベントで、400人以上の集客のあったイベントだった。
主催のMONECCO5の一周年のイベントだったが、このMONECCO5というグループはロコドルの中でもかなり特殊なグループである。
天草のローカルアイドルでメンバー全員天草の子を集めて、天草で活動しているアイドルなのだが、楽曲やステージにまったく天草らしさがないのだ。ローカルアイドルといえば、LinQが「西鉄バスでね♪」と歌ったり、それこそピンスカも佐賀弁でミュージカルをやったりと、そのメンバーが暮らしている地方の特色をステージ反映させるものだが、グループ名に天草を代表する天草五橋の「5」を入れているものの、それ以外に地方色がまったくないのだ。
ぼくはこのことに違和感を感じて、MONECCO5のディレクターに「ステージに天草の色をまったく出してないのはなぜですか?」と訊いた。そのときの答えが「天草の人をいちばんのお客さんに考えているので、わざわざ天草の色をステージに出す必要はないんです」と。
その地産地消ローカルアイドルというモデルは大成功していて、その結果、天草アイドルフェスタにはいわゆるアイドルヲタクは100人弱しかいなかったように見えたが、その何倍の一般の人を集めて大成功を収めていた。
そしてその多くの観客に対して、ピンキースカイが強いインパクトを残していたと、その場にいたヲタクは言うのだ。
「世界は恋に落ちている」で初見の天草のヲタクが気が狂ったように沸き、「超えてゆけ」では号泣していた人が何人もいたと。
彼にいわせれば、ターゲットをもっと広げれば、受け入れる人たちは増えると。


ぼくはその話を聞いて、はっとした。
ぼく自身はべたべたなアイドルを愛するヲタクである。
そして、アイドルが好きなゆえに、好きなアイドルが一般の方に向けてどうアプローチするかなどということへの視点はほとんど欠落している。
アイドル業界のアイドルの増加とヲタクの増加が比例していない現状に小さなパイの奪い合いが当たり前になっている昨今、その小さなパイの中でどこのアイドルが輝きを見せるかというのが興味の対象だった。
ただ、天草アイドルフェスタで一般の観客に向けて、異様なほど好意的に一般の観客に受け入れられたヲタクの目には、ピンスカよ、そんな小さな世界で井の中の蛙になってどうするよという思いが光っていた。
ピンキースカイは井戸を飛び出しても通用するんだよ、と。


去年のピンスカライブの頃からのピンキースカイは、「アイドルになる」と腹をくくったからこそ、アイドルらしくなろうという戦略で動いていたようにぼくは感じている。
それはたしかに効果を生み、アイドルイベントへの出演は増え、特に九州の第3世代のアイドルを愛するヲタクの層からの認知度は飛躍的に高まった。
ただ、そこで佐賀を代表するアイドルとしての地位を獲得したからこそ、これからはその小さなパイの中での奪い合いに終始する時期は終わったのではないかとぼくは思う。
そして普通のアイドルならば、距離的に近いヲタクの層である程度の存在感を示したら、今度は距離的に遠いヲタクにアピールするのがひとつのスタイルだが、ぼくはそれは違うのではないかと今では思っている。
アイドルヲタクしか見ないアイドルという井戸から飛び出して、たとえば若い女の子がカラオケで歌うような存在を目指す時期に、いまのピンキースカイはきているのではないか。
それだけの実力を彼女たちは持っているのではないか。
たしかに少ない顔見知りのヲタクに囲まれて、内輪的な盛り上がりのライブはヲタクとしては楽しいけれど、そんなことをやるにはもったいないのではないかと思うのだ。


ピンキースカイよ、井戸を飛び出せ。


ぼくはそう言いたい。