令和6年3月10日に第34回建設業計理士1級(原価計算)を受験してきました。

手応えは十分ですが、N社の解答速報の中で第4問に自分の解答と異なる部分がありました。

どのように違ったのか解説したいと思います。

 

第1問

第28回の第3問とそっくりな出題でした。
計算間違いをしないように、端数の四捨五入に気を付けること以外に特筆すべき
点はありません。というより、ここで時間を浪費させて中で、他の問題をどれだ
け正確に解答できるかということが試されている気がします。
その証拠に、第1問の論述も過去に同じ内容の出題があり書きやすかったですし、
第5問の計算も容易であった(未成工事が1つだけ。労務費計算で時間外勤務な
し。外注費の金額がそのまま表示されている。等)うえ、ありがたいことに月初
めの未成工事原価の内訳表に縦計合計欄がありました。

〔第3問〕(計算間違いをしないように慎重に解くだけです。)

 S建設工業株式会社は、近隣に多くの工事現場を同時に保有するこ
とが多く、建設機械や資材等の運搬に多くのコストを要する。この原価管理のた
めに、重要な保有車両であるA、B、Cをコスト・センター化し、走行距離1km
当たり車両費率(円/km)を予め算定し、これを用いて各現場に予定配賦してい
る。次の<資料>によって、当月の各現場(No.101〜No.104)への車両費配賦額
を算定しなさい。なお、走行距離1km 当たり車両費率の算定に際しては小数点
第3位を四捨五入し、当月の各現場への車両費配賦額の算定に際しては円未満を
四捨五入すること。
<資料>
1 走行距離1km 当たり車両費率を予め算定するための資料
(1) 車両関係予算額
① 個別費の車両別内訳 (単位:円)
減価償却費 827,600(車両A)、 620,700(車両B)、 620,700(車両C)
修繕費 245,900(車両A)、 99,500(車両B)、 111,500(車両C)
燃料費 522,000(車両A)、 387,700(車両B)、 349,500(車両C)
税金 161,000(車両A)、 77,000(車両B)、 97,000(車両C)
保険料 165,600(車両A) 、76,000(車両B)、 131,900(車両C)

② 共通費
油 脂 代 ¥288,650 消 耗 品 費 ¥379,500 福利厚生費 ¥235,300
雑 費 ¥105,500
(2) 共通費の配賦基準と基準数値
油脂代走行距離:8,600 km(車両A)、 8,400 km(車両B)、 8,100 km(車両C)
消耗品費車両重量: 12 t(車両A)、 11 t(車両B)、 10 t(車両C)
福利厚生費関係人員: 9人(車両A)、 8人(車両B)、 9人(車両C)
雑費: (減価償却費額 個別費の車両別内訳を参照のこと)
2.当月の現場別車両使用実績 (単位:km)
No.101 現場 275(車両A)、 ──(車両B)、 285(車両C)
No.102 現場 215(車両A)、 180(車両B)、 55(車両C)
No.103 現場 63(車両A)、 110(車両B)、 85(車両C)
No.104 現場 ──(車両A)、 385(車両B)、 30(車両C)

〔第4問〕 G建設株式会社では、現在(20╳3 年度末)、年前に購入し使用して
きた機械(以下、旧機械)を高性能の新機械に取り替えるかどうかについて検討
している。次の<資料>に基づいて、下記の設問に答えなさい。なお、計算の過
程で端数が生じた場合は、計算途中では四捨五入せず、最終数値の円未満を四捨
五入すること。
<資料>
旧機械は取得原価¥45,000,000、耐用年数年、残存価額ゼロとして、定額法によ
る減価償却を過不足なく行ってきている。新機械の購入価額は¥60,000,000、耐
用年数3年、残存価額ゼロとして、定額法による減価償却を行う予定である。旧
機械から新機械に取り替えると今後年間(20╳4 年度〜 20╳6 年度)にわたり、
毎年、現金売上高がそれまでの年¥26,000,000 から年¥37,000,000 に増加し、
現金支出費用は年¥11,000,000 から年¥8,000,000 に減少すると予想される。
なお、新機械に取り替える場合、旧機械はその時の簿価で引き取ってもらう約束
である。また、旧機械と新機械のいずれも年後の耐用年数到来時の売却価額はゼ
ロと予想される。今後年間にわたり黒字が継続すると見込まれる。実効税率は
40 % である。

問1 旧機械を新機械に取り替える場合の 20╳3 年度および 20╳4 年度のキャッ
シュ・フローの純増減額を計算しなさい。インフローの場合は「A」、アウトフ
ローの場合は「B」を記入すること。

20╳3 年度のキャッシュ・フローの純増減額
新機械に取り替えるのは(20╳3 年度末)であるため、旧機械の売却によるキャ
ッシュ・インと新機械の購入によるキャッシュ・アウトを計算すると45,000,000
÷6年×3年-60,000,000=△37,500,000
N社の解答速報はここで終わっているが、年度末に設備を取り換えるまでの旧設
備での売上と支出の差額及び旧施設減価償却費による節税効果を加算すべきでは
ないか。
(26,000,000-11,000,000)×0.6+45,000,000÷6年×0.4=12,000,000
新機械への取り替え△37,500,000+旧設備での稼働分12,000,000=△25,500,000

20╳4 年度のキャッシュ・フローの純増減額
新機械に取り替えるのは(20╳3 年度末)であるため、20╳4での影響はない。
新設備では、売り上げがアップし、支出についても節約できる。税金の影響を考
慮すると下記のとおりとなる。
(37,000,000-8,000,000)×0.6+60,000,000÷3年×0.4=25,400,000
N社の解答速報は、設備の取り換えに伴うキャッシュ・フロー(税金の影響のな
い部分)を20╳3のキャッシュ・フローとし、設備を活用しての売上・支出・節税
効果等の差額を20╳4のキャッシュ・フローとしている。
(37,000,000-8,000,000)×0.6+60,000,000÷3年×0.4-(26,000,000-11,000,
000)×0.6-45,000,000÷6年×0.4=13,400,000
20╳3 年度と20╳4 年度との比較ではないことは、20╳3 年度と20╳4 年度の金額を
両方解答させることからも明らかであるが、判断に迷う問題である。(設問とし
て、よくあるのが、機械の取り換えは20╳4 年度期首に実施とするという設定で
あるが、なぜこのようにしなかったのかという風に考え時間を浪費してしまった。


問2 新機械に取り替える場合、旧機械をそのまま用いる場合に比べていくら有
利または不利になるかを正味現在価値法によって判定しなさい。有利の場合は
「A」、不利の場合は「B」を記入すること。ただし、各年度のキャッシュ・フ
ローは年度末に生じるものとする。税引後資本コスト率を8%とし、計算にあた
っては次の複利現価係数を用いること。1年後 0.926%、2年後 0.857%、3年
後 0.794%

旧機械を使い続ける場合
12,000,000×(1+0.926+0.857+0.794)=42,924,000

新機械に取り換える場合
△37,500,000+12,000,000×1+25,400,000×(0.926+0.857+0.794)=39,955,
800

新機械と旧機械との比較
42,924,000-39,955,800=△2,968,200