第11回
①工事契約に関する会計基準において、工事原価総額を見積る際の「施工者の義
務を果たすためのすべての原価」という意義について
工事原価総額には、工事契約に係る施工者の義務を果たすためのすべての原価が
含まれる。例えば、ある工事契約により、施工者が目的物を完成させるだけでな
く、顧客に引き渡す義務を負っている場合は、当然、工事原価総額には、目的物
の完成だけでなく、その引渡しの作業に要する原価も含まれる。
②原価計算基準では、原価計算の目的のひとつとして、「予算の編成ならびに予
算統制のために必要な原価資料を提供すること」を挙げているが、この意義につ
いて
予算とは、経営者により設定された利益目標を達成するための具体的な計画であ
り、その編成の前には、部門の拡大か縮小かといった意思決定に必要な原価資料
の提供が前提となっている。なお、予算編成が、トップダウン方式か各部門から
のボトムアップ方式かの違いはあれども、最終的に部門相互間の調整を経て総合
予算案及び細分化された実行予算として編成される。さらに、予算統制において、
実行予算と実績との差異分析が行われた後、結果が経営管理者に報告され、業績
評価や経営方針の修正等に活用される。

第12回
①原価計算制度の意義について、原価計算の目的との関係で説明。
原価計算の目的は、主に下記の4点である。
A:企業の利害関係者に、過去の一定期間(会計期間)における損益と期末の財
政状態を公表するため真実の原価を集計する。
B:価格計算に必要な原価資料を提供する。
C:経営管理者に対して、原価管理に必要な原価資料を提供する。
D:予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価資料を提供する。
等がある。なお、原価計算制度は、一定の計算秩序であり、重点の相違はあるが、
上記目的の達成のために実施されるものである。
②間接費の正常配賦について、予定配賦との相違に触れながら説明
工事間接費の予定配賦法は、主として計算の迅速性に着眼した手法であるが、正
常配賦法は、さらに配賦の正常性を強調した手法である。
実際配賦法と異なり、予定配賦法を採用すると、工事間接費の実際発生額が確定
していない時期でも工事間接費の配賦が可能となる。
なお、予定配賦法を採用しても、生産量の増減によって製品単価は影響を受けて
しまう。
その要因は固定費にあるが、間接費の正常配賦は標準生産量を予定しておくこと
で、工事間接費の配賦額を平準化することができる。

第13回
①工事契約に関する会計基準によって工事進行基準を適用する場合には、「工事
原価総額」について信頼性をもって見積ることができなければならないとされて
いる。この具体的な意味を説明しなさい。
請負工事に経営資源を投入した実績と見積の工事原価を比較して工事進捗度を決
定する方法をインプット法(原価比例法)という。なお、工事進捗度を算出する
式の分母は実行予算を基礎とする事前原価計算を、分子は期間の事後原価計算を
意味し、この有機的な結合が適切な工事進捗度を測定することになる。
②建設工事における材料購入原価の計算において、材料副費をどのような考え方
によって算入することが適切か。
材料副費を材料購入原価に算入する方法は「A:直課法」、「B:配賦法」の二
つが挙げられる。Aは購入材料代価に直接的に賦課する方法であり、引取運賃な
どのように各材料購入の都度、その金額が把握できる費目に適用できる。Bは適
切な配賦基準により関係材料に配賦する方法であり、各種材料の購入にあたり共
通的に発生する費目に適用できる。Bはさらに実際配賦法と予定配賦法に分けら
れるが、前者は購入原価の算定が遅れるという欠点がある。

第14回
①予定配賦率を算定する際に利用される各種の基準操業度を列挙して、各内容を
説明。
次期予想操業度は、対象期間に現実に予定される操業度を設定する方法で、単年
度のキャパシティ・コストを当該期間の生産品に全額吸収させてしまう方法であ
る。
長期正常操業度は、過去の平均操業度から異常値を除外し、将来の予想される値
も加味して決定した操業度であり、長期にわたる生産品にキャパシティ・コスト
を吸収させようとする方法である。
実現可能最大操業度は、経営の有する能力を正常状態で最大限に発揮したときに
期待される操業度を基準操業度とする方法である。
②品質適合コストと品質不適合コスト(失敗コスト)について、各内容を説明。
品質適合コストとは、製品の品質を品質規格に一致させるためにかかるコストを
いい、製品の品質に一致しない製品の生産を予防する予防原価と製品の規格に一
致しない製品を発見するのにかける評価原価に分類される。
品質不適合コストとは、製品の品質を品質規格に一致させられなくなったために
発生したコストをいい、工場内で発生する部品・製品の仕損、補修のための内部
失敗原価と欠陥製品の販売よって発生した外部失敗原価に分類される。

第15回
①補助部門費の施工部門への配賦方法として、①直接配賦法、②階梯式配賦法、③相
互配賦法が用いられるが、各方法の特徴について
直接配賦法とは、補助部門間相互の用役の授受は計算上無視して、施工部門に対
してのみ用役を提供したものとして配賦計算す方法である。階梯式配賦法とは、
他の補助部門にも、より広く用役を提供している部門から配賦計算をおし進めて
いく方法である。相互配賦法は、補助部門間の用役収受の実態を適正に反映させ
た計算をするために、補助部門相互の用役消費量に基づき配賦計算する方法であ
る。
②設備投資の経済性を評価する方法の1つである累積的回収期間法を定義し、そ
の長所と短所について説明
累積的回収期間法とは、投資額を、投資によって生じる年々のネット・キャッシ
ュ・フローで回収した場合、何年目で投資額が回収できるかを計算する方法であ
る。計算が簡単で理解しやすく、投下資金の早期回収を優先する経営者にとって
は有効な評価方法であるが、時間価値を考慮していないのみならず、資金回収後
の収益性を考慮していないという欠点がある。

第16回
①原価をキャパシティ・コストとアクティビティ・コストに分類する基準を挙げ、
各コストについて述べなさい。
原価管理(コスト・マネジメント)の要請から、原価をその発生源泉の観点から分
類した場合、原価はアクティビティ・コスト(業務活動費)とキャパシティ・コス
ト(経営能力費)に区分される。アクティビティ・コストとは、製造や販売の活動
が実行される際に、その活動と付随して発生する原価であり、キャパシティ・コ
ストとは、企業経営活動を実践するために保持される製造・販売能力の準備及び
維持のために発生する原価である。
②期間予算編成に期待される機能について述べなさい。
期間予算の編成は、トップ・マネジメントが設定した経営目標を予算管理システ
ムが規定した一定の手続きに従って、各種の部分予算を編成しこれらを調整的に
統合する過程であり、近年における予算管理は、事後的な差異計算と分析を中心
としたものから、予算編成の過程をより重視する傾向が強い。期間予算編成に期
待される機能としては未来行動の計画・予測機能、組織及び行動の調整機能、動
機づけコントロール機能などがある。

第17回
①(4②、9②と同趣旨)仮設材料費の2つの把握方法について説明しなさい。
仮設材料費の把握方法には、社内損料方式とすくい出し方式がある。社内損料方
式とは、あらかじめ当該材料等の使用による損耗分等の各工事負担分を使用日数
あたりについて予定し、後日、差異の調整をする方法である。
すくい出し方式とは材料等を工事の用に供した時点において、その取得価額の全
額を原価処理し、仮に、工事完了時において何らかの資産価値を有する場合に、
その評価額を当該工事原価から控除する方法である。
②顧客ライフサイクル・コストの意義と低減方法について説明しなさい。
顧客ライフサイクル・コストとは、製品等の使用期間に発生するすべてのコスト
であるライフサイクル・コストを、提供者があえて顧客の側に立ち、顧客の視点
から測定・評価したものをいう。ライフサイクル・コストは、そのほとんどが企
画設計段階で決定されてしまうため、提供者は顧客ライフサイクル・コストを低
減するために、顧客の使用コストに影響を及ぼす要因を明確にし、計画・企画段
階からこれを仕様に反映させる必要がある。