第1問(論述)の対策は、受験生泣かせだと思います。
過去に受験した回では、予備校の模範解答をひたすら読んで挑んだのですが、み
ごとに撃沈してしまいました。
予備校の模範解答は、表現が硬いのでどうしても頭に入ってこないのです。(原
価計算基準や大御所の学者先生の著書等を参考に作っているので当然なのでしょ
うが・・・)
今回は、急がば回れの精神で、自分の言葉で書き直してみました。
ポイントは次の2つです。
①自分がイメージしやすいように、できるだけ柔らかい表現を使う。
②文字数にもこだわらない。部分点狙いなので、この程度で十分と割り切る。

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①建設業で用いられる事前原価の種類について説明
建設業で用いられる事前原価には、A:見積原価、B:予算原価、C:標準原価
の3つが挙げられる。Aは指名獲得あるいは受注活動のような対外的資料作成の
ための原価であり、財務会計上の数値をそのまま持ってくるものではなく、いわ
ば試算としての原価である。Bは受注工事を確実に採算化するための内部的な原
価であり、Cは個々の工事を日常的に管理するための能率水準としての原価で
る。なお、BとCについては、原価計算制度における原価であるが、Aについて
は、一種の原価調査であり、原価計算制度における原価には含まれない。
工事間接費の配賦に予定配賦法を用いることの2つの意義について説明
工事間接費の配賦に予定配賦法を用いる意義として、計算の迅速化と配賦の正常
性の二つがある。工事間接費の実際発生額を配賦する実際配賦法を採用すると、
工期の終了により工事間接費額が確定しなければ、配賦作業を実施できず、配賦
計算が遅延することになる。また、工事間接費には固定費が多く含まれているこ
とから、実際配賦法によると工事間接費の配賦に対し、操業度の影響を受けてし
まうことになる。予定配賦法を用いることで、これら実際配賦法の欠点を克服で
きる。

32
財務諸表作成のために実施される実際原価計算制度の3つの計算ステップにつ
いて説明
第1のステップは費目別原価計算である。建設業においては、材料費、労務費、
外注費経費の4つに分類する。第2のステップは部門別原価計算である。これは、
費目別原価計算において把握された内容を製造部門と補助部門に分類し、さらに
補助部門を、動力部門、運搬部門、材料部門等に細分化する手続きである。第3
のステップは工事別原価計算である。これは、原価の各要素を適切な基準によっ
て、工事単位ごとに集計する手続きである。
②標準原価の種類を改訂頻度の観点から説明
標準原価には、状況や環境の変化に応じて改訂していく場合と、ひとたび設定し
た後は、これを指数的に固定化して使用する場合があり、前者を当座標準原価、
後者を基準標準原価という。

31
①工事レベルの実行予算の3つの機能について説明
工事レベルの実行予算に期待される機能として、以下の3つがある。1つ目は、
実行予算の編成段階における動機づけコスト・コントロール機能である。2つ目
は 、全社的な利益計画の基礎となる機能である。3つ目は、責任会計制度を効
果的にすすめる機能
である。
設備投資の経済性を評価する方法の一つである内部利益率法について説明
内部利益率法は、その投資案の正味現在価値がゼロとなる割引率である内部利益
率によって、設備投資の経済性を評価する方法である。内部利益率が資本コスト
率よりも大きければその投資案は有利と判定されるし、複数の投資案の中から、
一つを選択する場合には、内部利益率の最も大きな投資案が、最も有利な投資案
と判定される。

30
①建設業における原価計算の目的
建設業における原価計算の目的には、適正な工事価額の算定という対外的な目的
と、経営能率の増進という対内的な目的がある。
対外的な目的には、適正な原価を集計し財務諸表を作成する目的、工事ごとの採
算性を見極め見積書等の受注関係書類を作成する目的、官公庁への提出書類を作
成する目的がある。
また、対内的な目的は、工事別の実行予算を作成し、原価差異の分析等を行うこ
とで、無駄をなくし、個別工事の適正な管理と能率増進につなげることである。
さらに、これらに関する情報を経営管理者に報告し、全社的な利益管理を図る目
的も含まれている。
②VEの内容
VEとは、原価企画の段階から、原価削減を目指そうという手法である。VEに
おいては、価値を機能とコストの観点から定義し、「価値=機能÷コスト」の式
で表わすことができる。
VEの実施プロセスはジョブプランと呼ばれ、一般に、①VE適用対象の設定、②
機能定義、③機能に対するウェイトづけ、④機能実現のためのアイデアの創出と代
替案の作成、⑤改善案の提言と採用、の手順で行われる。

29
①原価計算制度と特殊原価調査の相違点について、A目的、B財務会計機構との
関係、C実施の時期(頻度)、D主に用いる原価概念、の各方面から説明
原価計算制度と特殊原価調査は、次のような相違がある。
A目的:前者が財務諸表作成など複数の目的のために実施されるのに対し、後者
は経営管理者等の意思決定に役立つ原価情報の提供が目的である点が異なる。
B財務会計機構との関係:前者が財務会計機構と結合した計算であるのに対し、
後者は財務会計機構の枠外で行われる点が異なる。
C実施の時期(頻度):前者が常時・継続的に実施されるのに対し、後者は必要
な時に随時行われる点が異なる。
D主に用いる原価概念:前者は支出が終わった原価(過去原価)が中心であるの
に対し、後者は将来の支出に対する原価(機会原価)である点が異なる。
②建設業原価計算の特徴
建設業以外の製造業では、原価を材料費、労務費、経費の3つに区分するのに対
し、建設業では、原価を材料費、労務費、外注費、経費の4つに区分することが
特徴である。これは、建設業が工程ごとに様々な作業や専門工事に分かれており、
他の製造業よりも外注依存度が高いことによる。

28
①建設業の特性を一つ挙げたうえで、それが建設業の原価計算にどのような影響
を与えているかを説明
建設業以外の製造業では、原価を材料費、労務費、経費の3つに区分するのに対
し、建設業では、原価を材料費、労務費、外注費、経費の4つに区分することが
特徴である。これは、建設業が工程ごとに様々な作業や専門工事に分かれており、
他の製造業よりも外注依存度が高いことによる。
②予算編成のタイプのうち、天下り(トップダウン)型予算と積上げ(ボトムア
ップ)型予算を説明しなさい。なお、長所と短所についても言及すること。
天下り型予算は、経営管理者(トップ)が主導して予算を編成し、各部門に予算
を割り振る方式の予算である。天下り型予算は、経営者の掲げる目標が明確にな
り、その方針と整合性が取れた予算を編成しやすいという長所がある。一方、目
標設定が経営管理者(トップ)の独断専行に陥る可能性があり、目標達成に対す
る部門管理者の意欲がそがれかねないという短所がある。
積上げ型予算は、各部門の自主的な予算編成を尊重する予算方式である。各部門
から要求のあった予算を、部門間の調整を経たうえで、積上げ全体予算化する。
積上げ型予算によると、天下り型予算の長所・短所が逆になり、部門管理者に対
する予算達成の動機付けが期待できる反面、経営者の方針と整合が取れた予算を
編成できない可能性がある。

27
①コスト・コントロール(原価統制)の3つのプロセスを説明
コスト・コントロールが効率的に実施されるためには、目標(原価標準)・責任・
権限の関係が明確にされていることが前提である。第1のプロセスは、目標と責
任の関係についてである。責任の主体となる階層ごとに、目標としての原価標準
が周知・徹底されることで、責任の当事者としての意識が高まり、目標(原価標
準)達成の動機づけが高まることになる。第2のプロセスは、目標と権限の関係
についてである。責任と表裏一体に与えられた権限の中で、目標(原価標準)の
達成に向け部下を指導・監督することは、コスト・コントロール(原価統制)に
直接影響を与える。第3のプロセスは、権限が与えられていない部分についての
対応である。原価標準と原価の実際発生額の差異を分析し、経営管理者に対し報
告を行うことで、原価標準の妥当性や改善の余地がないかの判断材料をフィード
バックすることになる。
②建設業におけるABC(活動基準原価計算)の意義を説明
ABC(活動基準原価計算)は、工事間接費をできる限りその発生と関係の深い
活動(アクティビティ)に結び付けて、製品やサービスに賦課していこうという
手法である。
建設業においては、規模や業種が様々であるため、ABC採用の是非については
一般論化できないが、工事間接費を多く発生させる企業にとっては、ABCの採
用は効果的であるいえる。

26
①基本予算と実行予算の関係および実行予算の種類について説明。
基本予算は、会計期間内のすべてを包括した大綱的な予算であるのに対し、実行
予算は、期間や作業内容などの基準により、基本予算を細分化したものである。
実行予算の種類は、月次別、四半期別、工事別、プロジェクト別などが挙げられ
るが、これらはいずれも日常的なコントロールを強化する目的で編成されるもの
である。なお、基本予算による予算管理を効果的にするためには、精度の高い実
行予算の編成が不可欠である。
②販売費及び一般管理費は注文獲得費、注文履行費、全般管理費の三つに機能別
に区分されるが、それぞれの特質と予算管理の方法について説明。
注文獲得費は、市場調査や広告宣伝に要する経費が典型例であるが、成果の測定
が難しいため、割り当てられた予算と実績との比較によって管理することになる。
注文履行費は、受注数量に基づき比例的に発生することから、変動予算や標準原
価として管理することになる。
全般管理費は、企業全体の活動の維持・管理に関連して生じるコストであり、注
文獲得や履行とは無関係に発生することから、固定予算として管理することにな
る。

25
①国土交通省告示に示されている材料費の定義を説明。
一般的な原価計算における材料費は、直接、間接を問わず、経営目的のために外
部から購入した物品として幅広く認定されるが、国土交通省告示における材料費
は、工事のために直接消費される材料費とされ、その範囲が非常に限定的である。
②品質コストの分類について説明。
品質コストは、品質適合コストと品質不適合コストに分類されることが一般的で
ある。建設業における品質適合コストは、設計仕様に適合しない施行を防ぐため
の予防コストと設計仕様に適合しない建造物を発見するための評価コストに分類
される。
また、品質不適合コストは、発見された欠陥や品質不良の補修に要する費用等で
あるが、発生時期が施主への引渡し前か後かによって、さらに内部失敗コストと
外部失敗コストに分類される。

24
①原価の作業機能別分類について説明。
原価の作業機能別分類とは、企業経営において原価がどのような機能のために生
じているかに基づく分類である。
作業機能別分類は、形態別分類として材料費、労務費、経費に区分けされた原価
を、さらに細分類するために利用されることが多い。たとえば、材料費は、主要
材料費、補助材料費等に、労務費は、監督者の給料、直接作業員の工賃金等に、
経費(例として電力料)を動力用、照明用等に分類する。
②組別総合原価計算の意義と計算方法について説明。
組別総合原価計算は、異なる種類の製品を、同一工場内で、連続して見込生産す
る企業に適用される原価計算の形態である。
組別総合原価計算においては、各々の製品を組と呼び、各組の単位原価を次のよ
うに計算する。まず、発生する製造費用を、各組に直接紐づけできる組直接費と、
各組に共通して発生する組間接費に区分する。次に、組直接費は各組に直接に賦
課し、組間接費は適切な配賦基準によって各組に配賦する。最後に各組に集計さ
れた原価を各組の生産数量で割ってそれぞれの単位原価を計算する

23
①経費の4つの把握方法について説明。
経費はその把握方法の違いにより支払経費、月割経費、測定経費、発生経費の4
つに大別される。
支払経費とは、旅費交通費など支払いの事実に基づいて、その発生額を把握する
経費をいう。
月割経費とは、不動産賃借料など数か月分をまとめて支払うことが通常である経
費であり、月割計算によって対象期間の発生額が把握されるものをいう。
測定経費とは、水道代や電気代のように計測メーターによって消費額を測定し、
それを基礎として発生額が把握される経費をいう。
発生経費とは、減価償却費や棚卸減耗費などのように支払いやその他の測定方法
では把握できず、原価計算期間中の発生額をもって、その消費額が測定されるも
のをいう。
建設業原価計算における直接工事費と工事直接費の相違について説明。
直接工事費は、純工事費のうち共通仮設費を除いた工事費の中心部分、すなわち、
工事の施工に直接必要な費用のことをいう。
これに対して、工事直接費は、工事間接費の対立概念である。工事間接費が対象
の工事と直接に紐づけられず、適切な配賦基準に従い各工事に配賦されるのに対
し、工事直接費は対象の工事に直接賦課される費用である。

22
工事間接費予算の設定方式の1つである変動予算方式について説明
工事間接費予算における変動予算方式は、操業度に応じ予算が変動するのが特徴
であり、実査法による変動予算と公式法による変動予算に大別できる。変動予算
方式では、実際操業度に基づいた予算額と実際発生額とを比較するため、操業度
にかかわらず金額が固定されている固定予算方式よりも、弾力的な原価管理が期
待できる。
②標準原価の種類をタイトネス(厳格度)の観点から説明。
標準原価はその厳格度を基礎に、①理想標準原価とは、達成可能な最大操業度の
もとにおいて、最高能率を表す最低の原価をいう。②現実的標準原価とは、良好
な能率のもとにおいて現実に達成し得る標準原価をいう。③正常標準原価とは、
経営活動における異常な状態を排除し、比較的長期にわたる過去の実績数値を統
計的に平準化し、これに将来の趨勢を加味して決定される原価をいう。

21
①特殊原価調査について、建設業における具体例を示しながら説明。
特殊原価調査とは、将来の経営上の選択(経営意思決定)に必要な情報を収集す
るため、必要に応じ随時的・臨時的に行われる原価に関する分析と調査である。
建設業においては、建設機械導入の可否といった長期的で構造的な問題から、工
事案件受注の可否や建設資材の選択など短期的で業務的な問題まで多様な問題解
決に利用されている。
設備投資の経済性を事前に評価する方法の一つである正味現在価値法について
説明
正味現在価値法(NPV法)とは、貨幣の時間的価値を考慮した設備投資の評価方
法の一つであり、各投資案の正味現在価値がプラスであればその投資案は有利で
あり、マイナスであれば不利であると判定する方法である。
正味現在価値は、投資によって生じる各年の収入・支出の差し引き現金流入額を
現在価値に割り引いた金額合計から、投資額を差し引いて計算される。なお、複
数の投資案を比較する際には、より正味現在価値の大きい案が有利と判定される。

20
建設業において経常的に実施される事前原価計算の種類をあげて、それぞれの
内容を説明。
(33①と同内容)建設業で用いられる事前原価計算には、A:見積原価計算、
B:予算原価計算、C:標準原価計算の3つが挙げられる。Aは指名獲得あるい
は受注活動のような対外的資料作成のための原価計算であり、財務会計上の数値
をそのまま持ってくるものではなく、いわば試算としての原価計算である。Bは
受注工事を確実に採算化するための内部的な原価計算であり、Cは個々の工事を
日常的に管理するための能率水準としての原価計算である。
②機会原価とは何かについて説明。なお、支出原価との違いにも言及すること。
支出原価とは、経営目的達成のために犠牲にされる経済的資源を、それらの取得
のために支払った現金支出額によって測定した原価のことをいう。原価計算制度
は、主にこの支出原価を推定もしくは測定する計算である。これに対し機会原価
とは、犠牲にされる経済的資源を、他の行動の代替案に振り向けたなら得られる
はずの最大の利益額、つまり最大の逸失利益額をもって測定した原価のことをい
い、主に意思決定の際の原価として用いられる。

19
①労務費の計算における手待時間の意味とその処理方法について
手待時間とは、材料の手配不足、停電、不慮の事故等で作業を中止せざるを得な
かった待機時間である。手待時間は、労働時間に該当し、作業効率に直結するた
め、作業時間の管理上、重要視されるものである。なお、手待時間に発生した費
用については、原価計算上、間接労務費として処理されるのが原則であるが、発
生原因によっては非原価としなければならないものもある。
②原価改善とは何か。なお、原価維持(標準原価管理)との違いにも言及するこ
と。
原価維持や原価改善は、どちらも施工段階において行われる原価管理活動である
が、両者その目的や手法が異なる。原価維持は、無駄を省くことで、従来の標準
原価管理の枠組みを維持しながら原価を抑える取り組みを指す。一方、原価改善
は、標準原価の前提となった設計や施工手法の改善等にまで踏み込み、原価を改
善する取り組みを指す。

18
標準原価計算の4つの目的および建設業への標準原価計算の適用について説明。
標準原価計算には、①原価管理を効果的に進める②売上や棚卸資産に配分する原価
の算定の基礎となる③予算編成と原価計算を結合することで総合的な利益管理が
しやすくなる④記帳の簡略化・迅速化に資するという目的がある。
なお、建設業は、生産現場ごとに条件が異なり、工場による大量生産でもないた
め、標準原価計算が馴染まない傾向があるが、積算用のソフトウェアの活用が進
んでおり、工事受注後も実行予算による原価管理が普及していることもあって
部分的な導入であれば標準原価計算の適用は可能であると判断できる。
②経営意思決定問題において関連原価となる2つの要件を説明
経営意思決定は、企業の目的である利益をより多く獲得するために、代替案を選
択することであり、その合理的な判断に用いられる原価が関連原価である。
経営意思決定は、将来の活動について行われるものであるため、過去にかかった
原価は無視され、未来原価のみが関連原価として採用される。また、経営意思決
定においては、代替案の比較選択を容易にするため、差額原価が採用されている。