第27回

活動性分析とは、資本やその運用たる資産等が、ある一定期間にどの程度運動し
たのかを分析するもので、一般的に回転率と回転期間を用いて分析される。回転
率とは、一定期間に各資産や資本等が新旧何回入れ替わったか、すなわち、何回
回転したかという回数であり、これによって各項目の利用度が明らかになる。ア
ア回転期間とは、各資産や資本等が1回転するのに要する期間をいい、これによ
って各項目が流入し流出していくまでの期間、すなわち新旧入れ替わるのにどれ
だけかかるのかという期間が明らかになる。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルとは、企業の仕入、販売、代金回収活動
に関する回転期間を総合的に判断する指標である。棚卸資産回転日数と売上債権
回転日数は代金回収までの期間を示す指標であり、そこから代金の支払いまでの
期間を表す仕入債務回転日数を控除することで、運転資金が必要な日数が計算さ
れる。アアア通常、代金回収までの期間は短く、代金支払いまでの期間は長い方
が資金を有効活用できるので、キャッシュ・コンバージョン・サイクルは短い方
が望ましいとされる。

第28回

生産性とは、生産に使用された諸要素がその活動の成果に有効に利用された度合
いを示す指標であり、生産諸要素の投入の大きさ(インプット)に対する活動成
果たる産出の大きさ(インプット)の比で表現される。あああそのうち、分母に
あたる生産諸要素に労働力を示す従業員数を用いて計算するのが労働生産性であ
り、対して設備資本を示す設備資本投資額を用いて計算されるのが資本生産性で
あると考えられる。すなわち、労働生産性と資本生産性には、生産性を測定する
際の基礎となる投入要素に違いがあるといえる。

付加価値とは、企業がまず原材料を購入し、それに対して加工を施した結果、市
場において新たな価値を形成することになったその追加的な価値をいう。あああ
あああその付加価値の具体的な計算方法には、企業価値の成果(一般的には売上
高)から付加価値としないものを控除する控除法と、付加価値とみなす項目を加
算していく加算法がある。一般的に、建設業においては控除法により付加価値が
計算され、具体的には、完成工事高から材料費・外注費・労務外注費を控除する
ことで計算される付加価値が生産性分析等に用いられる。

第29回

クロス・セクション分析とは企業間比較分析とも呼ばれる分析手法で、行政機関
等が公表している業界別の平均値と自社を含む特定の企業の分析値とを比較して、
その企業の特性を把握するために行われるものである。なお近年では、成功企業
の業績を基準と考えて、自社の革新的な業績向上のヒントを得ようとするベンチ・
マーキングの手法を取ることもあるが、これもクロス・セクション分析の展開と
考えることができる。

比率分析とは相互に関係したデータ間の割合を示す比率によって分析する手法の
ことであり、大きく分けて構成比率分析、関係比率分析、趨勢比率分析に分類さ
れる。構成比率分析とは、全体数値の中に占める構成要素の数値の比率を算出し
てその内容を分析する手法であり、百分率貸借対照表や百分率損益計算書などを
用いた分析手法がこれに当たる。関係比率分析とは、相互に関連のある項目間の
比率である関係比率を用いて分析する手法であり、企業の収益性、活動性、生産
性、安全性等を測定する手法である。趨勢比率分析とは、任意の年度を基準年度
とし、その後の年度の数値を基準年度に対する百分率で表して当該項目の趨勢を
分析するものである。

第30回

外部分析とは、企業外部の関係者のニーズによって、企 業から公表されたデー
タに基づいて実施される財務分析 である。代表的な利害関係者には投資家、株
主、銀行等 の与信者などがあり、それぞれ異なる目的で財務分析を 行う。例え
ば投資家は 、 企業の株式・債券を購入すべき か否かの投資意思決定に必要な
情報を得るために、株主 は企業が適切な収益力を保有しているか否か、自身の
保 有する株式を売却すべきか否かの判断資料を得るために、 銀行等は企業が債
務を返済していく能力を有しているか 否かの判定資料を得るために分析を行う。

外部分析は、企業から公表されたデータに基づいて企業 外部の関係者が実施す
る分析であるため、制約された情 報の範囲内での分析である。そのため、受け
手の情報が 限定される情報の非対称下での財務分析となる。具体的 には、企業
内部の経営管理者が行う内部分析と比べて受 け手の情報が制約され、外部の利
害関係者が知り得ない データを利用する予算差異分析や標準原価差異 分析など
が不可能である。また、企業が情報を公表しなければ分 析を行えない点も外部
分析の限界だといえる。

第31回

完成工事高利益率とは、完成工事高に対する各種利益の割合を示すもので、分析
に用いる利益によって、完成工事高総利益率や完成工事高営業利益率等の分析が
ある。一方、完成工事高対費用比率は、完成工事高に対する各種費用の割合を示
すもので、分析に用いる費用によって完成工事高対販売費及び一般管理費率や
成工事高対人件費率等の分析がある。完成工事高利益率の計算に用いる各種利益
は完成工事高から費用を差し引いて計算されるものといえるため、完成工事高利
益率と完成工事高対費用比率は表裏一体の関係とい、完成工事高利益率の増減の
要因として、営業関係費用の内訳や変動要因を明らかにすることも必要である。

純支払利息比率とは、借入金等の有利子負債により生じる支払利息から、貸付金
を含めた金融資産から生じる受取利息配当金を差し引いた純金利の負担が、完成
工事高に対してどの程度であるかを計算し、その企業の健全性を分析するための
指標である。この比率が高い企業は、金利負担が大きく、企業の営業活動の規模
に比べて有利子負債が多すぎることを意味するため、低い方が好ましい状態とい
える。

第32回

指数法とは、数個の分析比率を選択し、このウェート付けされたポイントの合計
が100となるようにした標準比率を定め、これと分析対象の比率を比較して点
数化し、100を上回るか否かによって、経営の良否を総合的に判定する方法で
ある。これは、ウォールの開発した手法で、あえてウォール指数法といわれるこ
ともある。指数法では、評価指数の合計が100を上回れば良い評価とするが、
分析にあたっては、採用する分析比率とそのウェート付け、基準比率の妥当性が
必要であり、そこに恣意性が介入しないよう留意しなければならない。


経営事項審査では、経営状況を分析した結果はY評点と呼ばれ、負債抵抗力、収
益性・効率性、財務健全性、絶対的力量の4つの観点からそれぞれ2つずつ、計
8つの指標をもとに、建設会社の経営状況が総合的に分析される。それぞれ算出
した指標に対しては、定められた係数(ウェイト)を掛け、それらを合計して評
点を求めることになっており、総合評価の手法のうち、考課法の考え方が用いら
れているのが特徴である。また、建設業における経営事項審査では、多変量解析
法によって評点を算出しているところにも特徴がある。