過去問集の解説を読み、記載されている数式を見て、確かにこの金額(回答)に
なるけれど、「なぜ、この数字を使うのか。」「なぜ、この計算式になるのか。」
等が、腑に落ちない方、もやもやしている方向けに、これ以上詳しく書けない解
説を書いてみます。

問4
敦賀建設株式会社では、現在(20X0年度末)、既存設備を新設備に取り替えるか
否かを検討中である。次の<資料>に基づいて、下記の設問に答えなさい。なお、
計算の過程で端数が生じた場合、計算途中では四捨五入せず、最終数値の円未満
を四捨五入すること。・・・・既存設備と新設備との比較。費用の中に減価償却
費が含まれているか。設備の売却損(益)があるか等に注意。端数処理は、最後
にすること。なお、設備を新しくしても、製造する商品の個数や種類に変化は生
じないため、キャッシュ・アウト・フローの少ない設備のほうが有利という判断
をすることになる。

1.既存設備に関する資料
(1) 取得原価(取得後6年経過している) 45,000,000円
・・・・取得後6年経過して、耐用年数が残り3年ということは、耐用年数は9
年。((3)の条件より残存価額はゼロ。)
毎年の減価償却費は、45,000,000円÷9年=5,000,000(ただし、キャッシュ・ア
ウト・フローは無し。)節税効果によるキャッシュ・イン・フローは、5,000,
000×0.3=1,500,000(3.(2)の条件より法人税率は30%、今後3年間にわたり
黒字企業なので節税効果は満額享受できる。)
(2) 耐用年数の残り3年・・・・既存設備と新設備の残存期間が同一なので、同
一期間のキャッシュ・フローを比較することになる。税引後資本コスト率も3年
分提示されているため、割引計算は可能。年金現価係数は示されていないので、
一括計算はできず、各年ごとの計算結果を合算することになるので、計算は慎重
に。
(3) 3年後の残存価額はゼロとして減価償却を行う。3年後の売却価額もゼロと
予想される。・・・・既存設備を使い続けた場合の売却損益は発生しない。
(4) 現在の売却価額12,000,000円・・・・6年経過後の帳簿価格との比較が必要。
金額に差がある場合は、売却損(益)が発生する。12,000,000円のうち帳簿価格
と同額部分については、課税、税金還付関係なく、そのままキャッシュ・イン・
フローにカウントする。売却損益が発生する場合(売却価格12,000,000円と帳簿
価格に差がある場合)は、いずれの場合でも、その損益の効果を緩める方向に税
金の効果が働く。売却益が発生する場合は、売却益金額の30%に課税(キャッシ
ュ・アウト・フロー)され、70%のキャッシュ・イン・フローとなる。売却損が
発生する場合は、売却損金額の30%の税金還付(キャッシュ・イン・フロー)が
受けられる。なお、売却価額12,000,000円及び発生する売却損益はすべて、割引
計算不要(20X0年度末のため)のキャッシュ・イン・フローとなる。
(5) 年々の現金支出費用30,000,000円・・・・現金支出費用なので30,000,000円
の中に減価償却費は含まれない。
(6) 既存設備を新設備に取り替えた場合、既存設備の売却損が生じる。この売却
損の税金に及ぼす影響は、現時点(20X0年度末)に計上する。・・・・6年経過
後の既存設備の帳簿価格は、取得価格45,000,000円-減価償却費5,000,000×6年=
15,000,000円。現在の売却価額12,000,000円との差額3,000,000円の売却損が発
生している。既存設備売却に伴うキャッシュ・イン・フローは、売却価額12,000,
000円(資産から資産への変化なので課税には無関係)+売却損に伴う税金還付3,
000,000円×0.3=12,900,000円

2.新設備に関する資料
(1) 取得原価54,000,000 円・・・・減価償却費は、(取得価格54,000,000円-
残存価額0円)÷耐用年数3年=18,000,000円
(2) 耐用年数3年
(3) 3年後の残存価額はゼロとして減価償却を行う。3年後の売却価額は1,000,
000円であると予想される。・・・・3年後の帳簿価額は0円であるので、売却価
額1,000,000円の全額に課税される。課税されない金額(売却時の帳簿価格)を
上回る金額は全て課税対象。課税額(1,000,000円×0.3=300,000円)を差し引い
た、1,000,000円-300,000円=700,000円が、キャッシュ・イン・フロー
(4) 年々の現金支出費用9,000,000円・・・・減価償却費18,000,000は含まれて
いない。

3.共通の計算条件
(1) キャッシュ・フローの税効果は年度末に発生する。
(2) 法人税率は30%である。なお、当社は今後3年間にわたり黒字企業である。
(3) 減価償却は定額法による。
(4) 税引後資本コスト率は8%である。計算にあたっては次の複利現価係数を用
いること。1年0.926%、2年0.857%、3年0.794

問題1 次の文のの中に入るべき数値を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。な
お、解答はすべて正の値で記入すること。
経済計算において税金の効果を考慮する場合、非現金支出費用の処理が重要であ
る。本問の場合、年間減価償却費は、既存設備「ア5,000,000」円、新設備「イ
18,000,000」円である。したがって、減価償却費を計上することにより、税金支
払額を、既存設備では「ウ5,000,000×0.3=1,500,000」円、新設備では「エ18,
000,000×0.3=5,400,000」円減らすことになる。既存設備を継続して用いる場合、
既存設備を売却することにより生じる「オ帳簿価格(取得価格45,000,000円-減
価償却費5,000,000×6年=15,000,000円)と売却価額12,000,000円との差額3,000,
000円」の売却損を発生させないことになり、これによって節約される税金支払
額「カ3,000,000円×0.3=900,000円を犠牲にすることになる。

問題2 新設備に取り替える場合、既存設備をそのまま用いる場合に比べていく
ら有利または不利になるかを正味現在価値法によって判定しなさい。有利の場合
は「A」、不利の場合は「B」を記入すること。
・・・・既存設備をそのまま使用する場合
20X0年度末
資産から資産の変化(設備の購入)0

1年度末(複利現価係数:0.926)
現金支出(損益計算):-30,000,000×(1-0.3)=-21,000,000
非現金支出による節税額(損益計算):減価償却費5,000,000×0.3=1,500,000

2年度末(複利現価係数:0.857)
現金支出(損益計算):-30,000,000×(1-0.3)=-21,000,000
非現金支出による節税額(損益計算):減価償却費5,000,000×0.3=1,500,000

3年度末(複利現価係数:0.794)
現金支出(損益計算):-30,000,000×(1-0.3)=-21,000,000
非現金支出による節税額(損益計算):減価償却費5,000,000×0.3=1,500,000

既存設備をそのまま使用する場合は、毎年度、同じ金額になるため、計算を簡略
化できる。
(-21,000,000+1,500,000)×(0.926+0.857+0.794)=(-19,500,000)×2.
577=-50,251,500

3年度末
資産から資産の変化(設備の売却)0
売却損益0

・・・・新設備に切り替える場合
20X0年度末
資産から資産の変化(設備の購入)-54,000,000 円
資産から資産の変化(既存設備の売価)12,000,000
売却損に伴う税金還付額(帳簿価額15,000,000-売却価額12,000,000)×0.3=
900,000

1年度末(複利現価係数:0.926)
現金支出(損益計算):-9,000,000円×(1-0.3)=-6,300,000
非現金支出による節税額(損益計算):減価償却費18,000,000×0.3=5,400,000

2年度末(複利現価係数:0.857)
現金支出(損益計算):-9,000,000円×(1-0.3)=-6,300,000
非現金支出による節税額(損益計算):減価償却費18,000,000×0.3=5,400,000

3年度末(複利現価係数:0.794)
現金支出(損益計算):-9,000,000円×(1-0.3)=-6,300,000
非現金支出による節税額(損益計算):減価償却費18,000,000×0.3=5,400,000

3年度末(複利現価係数:0.794)
資産から資産の変化(設備の売却)0
売却益1,000,000×(1-0.3)=700,000


新設備に切り替える場合の計算

20X0年度末 -41,100,000 円

1~3年度の同額支出分
(-6,300,000+5,400,000)×(0.926+0.857+0.794)=(-900,000)×2.577=
-2,319,300

3年度末の新設備売却に伴うもの
700,000×0.794=555,800

合計:-54,000,000円-2,319,300円+555,800=-55,763,500

既存設備と新設備の比較
50,251,500-42,863,500=7,388,000、すなわち新設備に取り替える場合、7,388,
000円の不利(A)