某自民党総裁候補の観光客6千万人構想は効率が悪い。単価と質の向上が不可欠
地域活性化を研究テーマのひとつとしているのですが、某自民党総裁候補の観光客6千万人構想は効率が悪いと思います。観光産業は施設+労働集約型なので、単価を上げることが収益性に直結しますが、同じ売り上げを量でカバーするためには大量の労働力の投入が不可欠です。
また、インバウンドによる地域活性化のポイントになるのは観光客の分散です。各地に稼げるコンテンツがあり、高額支出をしうる人々を満足させられる宿泊施設や体験が用意されていることが不可欠です。特定の観光地に観光客が集中することの課題は周知ですが、観光客が来ない観光地においても、地域ぐるみの積極的な景観行政などやれることはあります。
景観計画は作っても、手ぬるいやり方では景観の改善に数十年もかかり、現実的ではないわけで、そういう残念な事例が地方には山ほどあります。
写真の通り(中国地方の某市)だって少し工夫すれば楽しいインスタスポットになると思うのですが、いまひとつエモさ(?)が足りないんですよね。
今年の夏は、大量に流入する単価の低いお客さんを韓国人や中国人の白タクが案内する状況を九州で目の当たりにしました。
数年前まで普通の住宅地だった温泉街の宅地に単価の安い民泊が林立し、駐車場には白タクのワゴンがいて、という構図が当たり前になっています。
大宰府にも先日久しぶりに行きましたが、大宰府の参道のお土産店では日本人経営ではない店で日本のものとは違う怪しげな土産物を大量にさばいていて、菅公もさぞかし嘆いておられることと思います。
ここのところ地元の方々に言われていることですが、ものすごい活況のわりには地域にはイマイチ恩恵がなく、税収もさほど上がっていません。
日本でビジネスをやる外国人を排斥せよ、というのではありません。もちろん、地域が潤うのが重要ですが、外国人の方々も、日本文化を踏まえた商売を、日本の法令や税制を踏まえてやっていただきたいんですよね。
インバウンド6千万人、物理的に容易ではないですし、今のような流れでそれが実現したとしても日本社会は豊にはなれません。
一方で、インバウンドの稼ぎで日本の伝統的な建築物や文化を守ることは可能です。
地域で危機に瀕している神楽などの伝統芸能や祭りなんかもインバウンドと連携すれば持続可能になります。入場料などが入ればボロボロになっている地方の名刹も守れるかもしれません。
総裁候補には、地方をしっかりと歩いていただきたいと心から思います。特に、選挙区で落選の心配のない世襲候補こそ、永田町での工作ではなく、地方の現状を把握し、対応を考えることに時間を使っていただきたいものです。