農業政策を農業だけで語る愚 | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

農業政策を農業だけで語る愚

農業政策を農業だけで語るから余計にこんがらがる。

日本の小規模農業は、都市近郊では不動産業と損益通算するから成り立ってるんだよ。事業的規模という税制のハードルと、農家資格という農業委員会制度面のハードルがありつつ、資産保全のツールとしての都市農業という形が税制面から強力に後押しされている(生産緑地制度の改正により、この点は少し変化していく)。

田舎では、サラリーマンとの損益通算や年金との兼業。

最大のインセンティブは代々の土地を守ること。

そもそもこういう仕組みでなきゃ、国道16号の内側で100円の小松菜を作れるわけないよね。都市農業がこういう微妙なバランスで成り立っているおかげで都市の住民は新鮮な野菜を安く食べられる、というわけ。しつこいが、農業を農業だけで語るのが決定的な誤りなのさ。都会や近郊部ではJAバンクだって不動産金融が収益の大きな柱だからね。

ちなみに、田んぼを中心とした緑地、緩衝地帯等は都市農業の重要な機能で、だからこそ都市農業は農業者、地域住民のウイン=ウィンだけでなく、生き物の環境まで含めたトリプルウィンだと言えるわけです。特に田んぼは多様な生物の揺籃で、重要な生態系を維持しているわけですよ。

だから私は(そろそろいろいろなところで限界にきている)今の仕組みがベストかどうかは別にして、都市農業は維持すべきと考えている。

ちなみに、農業として大規模化できるところはもう、だんだんと大規模化されているなかで、小規模農業の担い手としての団塊世代が引退していくと、地方の小規模かつ効率化の難しい農地はこれまで以上に放棄されていくだろう。効率的な大規模農業と、都市近郊に代表される税制優遇によって存在する小規模農業が並立していくのが近未来。