評価と管理~なぜ、「たかまつなな」が審議会を踏まえて役所の「ご説明」を代弁するのはまずいのか
政治系お笑いタレントのたかまつなな氏が厚生労働省の年金部会の委員として、
日経報道
「高所得者の厚生年金保険料上げ、27年9月から 厚労省案
厚生労働省は、2027年9月をめどに高所得会社員の厚生年金保険料の上限を引き上げる調整に入った。賞与を除く年収798万円以上の人が対象で、保険料収入を増やし年金財政を改善する狙いがある。働く高齢者が年金を満額受け取りやすくする見直しも26年4月で調整する。
24日に開会する通常国会に提出を目指す年金改革関連法案の概要を、与党幹部に示した。法案の提出は3月以降になる見通しだ。」
について、厚労省の説明内容をそのままなぞる説明を発信していて、世間の失笑を買っています。
そもそも審議会とは何なのでしょうか。
諮問機関とは、国の行政機関である府・省・委員会・庁の長及び地方公共団体の執行機関の附属機関の一種であり、
行政庁の意思決定に際して、専門的な立場から特別の事項を調査・審議する合議制の機関です。
諮問機関には、法令によって設置される「審議会等」と、法令に基づかない「私的諮問機関」の2種類があり、諮問機関は、我が国政府の政策形成・法律立案に深く関わることから、大きな影響力を持っています*1。
(たかまつ氏が所属している年金部会は審議会の部会です。)
政府にこのような会議が置かれるのは、公共政策において、評価(的な活動)と管理(的な活動)が混合していると、評価(的な活動)が管理(的な活動)に影響されかねないためです。
つまり、官僚任せにしてしまうと政策はお手盛りになるため、それを防ぐための仕組みが不可欠なのです。
たとえば、政府としてやりたくない政策の場合には過小的な評価に、やりたい政策については過大な評価になる可能性があるでしょう。
このため、評価と管理を分離するためのスキームがいくつかあります。私が勤務先で使っているテキスト『公共政策』(放送大学)では下記のような例を挙げています。
•評価と管理を行う組織を政府から独立設置する
⇒福島原発事故を踏まえた原子力規制委員会(リスク評価のみならず最終的なリスク管理権限まで保持)
•評価と管理を組織的に分離する
⇒農水省、厚労省から独立した食品安全委員会が食品の安全性に関するリスク評価を行う
•政策形成手続きの中で、評価的な活動を前もって行うことを要請する
⇒環境アセスメント
•政策決定を担う組織の中に諮問機関を設置
⇒諮問委員会
つまり、これらは政策に客観性や効率性、公正性を持たせるための組織や制度なのです。
言いなりになっていてはお手盛り政策への歯止めがきかないわけで、たかまつ氏のように便利な審議委員は国民にとっては敵、ということになります。
*1 西川明子「審議会等・私的諮問機関の現状と論点」『レファレンス 平成19年5月号』