中山美穂さん追悼/いくら政府が広報してもヒートショックは減らない、その理由
12月6日の中山美穂さんのご自宅での死亡事案は、同世代の私としては、大変ショッキングな出来事であった。
ましてや、風呂の中で浴槽に浸かった状態で発見されたと言うことであるから、典型的な風呂場での可能性が取りざたされている。
さらに、お酒好きだった中山さんは飲酒後に入浴していた可能性も言われている。
実は、冬の自宅での入浴中の事故は交通事故の2倍以上の死者を出している*。また、高齢者のみならず、40代50代でも死者が出ていることに注意したい。
世間的には、風呂に入る前に、浴室や更衣室も含めて温度を上げておくとか、長時間風呂に入らないとか、熱い風呂に入らないなど様々な対策が言われているが、それを継続的に続けられる人がいるだろうか。実際には、一時的に注意をするようになっても、すぐに止めてしまうというのが実態である。要するに、ハイリスクな住宅の構造自体を変えていかないことには、この種の事故を減らすことはできないのである。
要するに「気をつけろ/る」と言うことは「わかっちゃいるけど、やめられない」人間にとってはできないことであり、基本的に何も言っていないのに等しいのである。この「わかっちゃいるけど、やめられない」は植木等のセリフであるだけでなく、昨今の公衆衛生の世界の常識であり、この観点からの社会構造の変革、特に住宅性能向上の必要性は最新の学術研究**でも報告されている。
11月にこのブログで「政策で国内の住宅の断熱性能を上げよ」と言う記事を書いた。
なぜ私がこの政策に固執しているのかと言うと、実際に断熱性能を上げた住宅の快適性を身をもって知っているからである。といっても、何も家中に対策を施したと言うわけではない。たまたま、マンションの管理組合が二重サッシを導入し、その結果、断熱性能が上がり、それを踏まえて私は実感を話しているのである。
さらに、窓リノベの素晴らしさは、断熱性能だけではない。
例えば、昨今は、1日中救急車が街中を行き交っている。
背景にあるのは高齢化である。正直なところ、救急車のサイレン音はやむを得ない生活音であるが、そうはいっても、道路に近いところで暮らしていると、毎日のように救急車にたたき起こされることになる。
ところが、二重サッシにすると、この救急車の音すらほとんど遮断することができるのである。睡眠の質が上がる事は言うまでもない。
ということで、いくら政府広報で政府が注意喚起をしてもそれでヒートショックによる死者が減る傾向にはならないし、人の命を守ることにもならない。
要するに「言っているだけ」の状態なのである。
ほんとに人命を救いたいなら、現在行っている窓リノベ政策の補助率を上げ、日本の住宅の断熱性能をあげることしかないと断言することができる。
なお、ヒートショックとともに重要なのが浴槽の手すり設置である。手すりがなくて立ち上げれないことが凍死につながる事案も少なくない。手すりは要介護者がいる場合など介護保険で設置が可能な場合もあるので、その点も含めて検討されたい。
*政府広報による
**海塩 渉「高断熱で暖かい家での暮らしによる医療費の低減と健康寿命の延伸効果を定量化」(東京科学大学)
図は再掲(埼玉県庁ウェブサイトより)