改正地方自治法案で分かったのは「政府にコロナ禍からの学びがないこと」である | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

改正地方自治法案で分かったのは「政府にコロナ禍からの学びがないこと」である

地方自治法の改正案が国会で審議入り。ダイヤモンドプリンセスの乗客のコロナ禍での集団感染などへの対応が念頭にあるとのことで、私もあの頃の当事者としてコメントしておく。
ダイヤモンドプリンセスで集団感染があり、感染リスクのある方を含む乗客を和光市内にある税大宿舎でケアするということで県を通じて直前に連絡があった。もちろん国家の一大事である。地域住民のことを考えると大変ややこしい案件だが、地元として積極的に協力した。ただ、地域住民の強烈な不安もあるので、乗客が外出しないことやゴミ処理の要望など、地域住民が納得できるよう、要望したり、地域事情を踏まえて対応した。

「和光市駅から関係者が歩いているのでは」的な問い合わせもあり、役所も、政府側も常にピリピリしていた。

直接やるから自治体は黙っとれ、では状況は異なったことだろう。
政府側には説明し納得してもらって、情報の住民への共有も徹底した。住民には知る権利があるからであるし、知らなければ不安に駆られるのが人というものである。
トータルで振り返って、特段不都合はなかった。関連事項で不都合があったとしたら、政府がダイヤモンドプリンセス船内での初期対応で動線の問題でやらかしたり、4月に税大の集団研修をいつも通りやろうとしたり、という政府の対応が挙げられよう。
あとは、乗客の動向を下品かつ露骨に嗅ぎまわるマスコミ・メディアが地域住民を不安にさせたことか。パニック時にナントカ砲とかは不要である。
地域のことは自治体が知っているから、地域の事情を踏まえて協力する。それだけである。この時の対応だが、問題があったとは思わないし、今回の法改正で改善できることがあるとも思わない。むしろ、地域のことを知らない政府とは良好な補完関係だったと思う。政府が秘密主義で情報を出し惜しんだらどうなるか、普段住民対応をしない政府の方には理解できないだろう。しかし、首長や議員、自治体職員は知っている。
今回の法改正を見て、政府は、もっと言うと、法改正に関与した人々は、コロナ禍の初期対応から何も学んでいないことがよくわかった。
定めるべきことがあるとしたら、それは非常時の大権なんてものではなくて、非常時の連携体制の明確化だったり、協議の仕組みを普段から意識して訓練しておくこと。自治体が非常時に正当に判断して使ったお金を保証する、財源のケアなのではないか。
そもそも、この十数年の政府の地方自治への態度は無関心そのものである。マザーテレサの無関心が1番アカン、というコメントではないが、自治体の自治をアシストしてこそ、政府は政府らしい仕事に専念できるのである。