レモン市場とピーチ市場 | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

レモン市場とピーチ市場

今日は公共経済学の三回目。市場の失敗の例として中古車市場の説明をするパート。

学生の頃になけなしのアルバイトで貯めたお金で、ようやく中古車を買ったのだけれど、ものすごく故障して困った、なんてことがあると思います。
中古車というのは見た目は綺麗でも、雑な修理をした事故車だった、なんてことが昔はよくありました。
事故の跡を素人が見破るのは困難、というレベルまで隠すことは難しいことではないので、ついつい騙されます。
今でも、質の悪い中古車を売る事業者があります。
質の悪い中古車がたくさんある中古車市場のようなマーケットのことを経済学ではレモン市場と言います。
中古車の本当の品質は、外見だけでは分かりません。専門家が見たり、じっくり試乗して初めてわかることがあります。
厚い皮を持つレモンは、外見だけでは鮮度がわからないため、買って切ってみて、初めて「スカスカですやん!」とわかる。

中古車、レモンともに、本当の品質はどうか、という情報を持っているのは売り手だけで、買い手には提供されない、ということがよくあります。
これを「情報の非対称性」と呼びます。情報の非対称性が大きいのがレモン市場です。
で、情報の非対称性をなくすために、中古車情報サイトでは、情報開示項目を指定したり、優良中古車を認定したり、口コミを掲載することになります。
さて、そんな「レモン」を名乗る中古車販売店ばあるのだから、日本は広いです。
まあ、ネーミングをあえてそれでやっているのか、天然、あるいはガチのレモン好きなのかは不明ですが、あるんですよね。ぜひ、ネットで探してみてください。
講義では販売店「レモン」さんの写真も見ながら、学生と「どういう意図かねえ」と想像してみようかと思います。

ちなみに、商品の品質が分からない状態を中古車販売情報サイトが放置するとどうなるか。
当然、多くの消費者は不安に駆られ、購買意欲は無くなるか、例えばコネでクルマを探すようになります。
サイトの利用者として残るのは、仮に不良品であっても諦めがつく低価格のものを狙う、ごく一部の人々ということになります。
結果、低価格の商品しか買わない買い手と、質の悪いものばかり供給する売り手だけが残るのですから、手数料も減り、サイトは運営もままならなくなるでしょう。
ちなみに「情報の非対称性」への対応を頑張ったマーケットはというと「桃、つまり、ピーチの市場」と言われます。少しでも古くなると見た目が変色し、ぐずぐずになる桃の市場では、品質の悪い桃を紛れ込ませることは困難、というわけです。
正直、見た目は綺麗でも美味しくない桃なんていくらでもありますけどね。
ちなみに中古車販売店「ピーチ」も当然国内にあります。経済学部出身の店主かなあ、なんて妄想がふくらみます。学生にも紹介します。もちろん「主人を呼べ」とか言わないよう注意する必要は…ないか(笑)

そして、選挙もまた、レモン市場とよく言われます。まあ、これは、日頃の議員さん、首長さんの仕事を慎重に見極めるしかありません。

「レモン」と「ピーチ」に秘められた小ネタ、滑りませんように。