魚屋さんで魚を買うということ | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

魚屋さんで魚を買うということ

街中でいわゆる生鮮三品、肉、魚、野菜の専門店を見る機会が少なくなりました。大店法の改正によるシャッター街の増加、地域の自営業者の減少などいろいろと地域に影響があり、行政の仕事をしていた時にも地域の自営の店が次々と店じまいするのを残念に思いながら見送らざるを得ませんでした。
さて、閑話休題、皆さんはスーパーのおさかなコーナーといわゆるプロの魚屋の違いを考えたことはあるでしょうか。
もちろん、違いはいろいろな分野の視点から観察されるのですが、扱いうる品目という観点から魚屋を見ると、スーパーの魚コーナーは平均30品目、これはパートさんを使って回していくが故の限界なのだそうです。つまり、スーパーでは、いわゆる鮭、マグロ、サバ、ブリなどのメジャー品目しか扱えないことが分かります(日本近海で漁獲されるのはトータルで300~400種とされています)。
一方で、私は兵庫県の明石の出身ですが、明石の魚屋では、そのいわゆるメジャーな品目プラス季節の地魚が扱われます。全国各地の地魚を全部扱えるプロの魚屋というのはさすがに考えづらいですが、たとえば明石では少なくとも地域の地魚とメジャー品目を扱うことでスーパーの数倍の品目が四季折々に魚の棚などの店頭に並びます(魚の棚には年に数回も行けていませんけど)。

このたくさんの品目が並ぶことと環境問題ってのが密接でして、魚の産地ではスーパーが魚市場を席巻するのと相まって、消費されずに捨てられる魚が増える、という現象に繋がっています。
美味しくても、地元で人気でも、それがスーパーという流通システムに乗らないことで売れない雑魚に成り下がってしまうのです。
つまり、営業効率と引き換えに大量の魚が無駄になるシステムの下で私たちは生きている、ということ。
逆に言うと、地元の、特に産地の魚屋さんでこの「その他大勢に成り下がった美味しい魚たち」と出会えれば、それは宝さがしの成功だし、その宝探しをする人が増えれば、無駄になる魚が減るかもしれない。

ちなみに、いわゆる混獲で捨てられる魚は全体の漁獲量の40%と言われています。なかには、種類ではなく大きさで規格外になるものもありますが、いずれにしても、4割を捨てる現状とどう付き合うか、という問題と直面している今、魚はスーパーで買う、というある種の思い込みから解き放たれると、多少なりとも供養にはなることでしょう。

お魚のプロであるまちの魚屋さんとの会話もまた、楽しいものです。くれぐれもソーシャルディスタンスで。


写真は浜田市の「はまだお魚市場」にて。すみません、メジャーな魚種の写真で。それと、このアジは「どんちっち鯵」というブランド鯵で、マツコも大絶賛ということで食べてみたら、私も大絶賛したくなる味でした。