大学4年の公務員志望者でまだ1次合格がゲットできていない方に、大学院進学の勧め | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

大学4年の公務員志望者でまだ1次合格がゲットできていない方に、大学院進学の勧め

日本社会において、いわゆる文系の大学院というのは、研究者志望でもない限り基本的には趣味人の世界である、と考えられている。

もちろん例外はある。ひとつは欧米のビジネススクール。コンサルとか外資系とか、いくつかの業界では使えるカードになる。

また、国内のいくつかの有名ビジネススクールもある種の転職のお守りとしては役に立つ。

その他に、いわゆるロースクールとかアカウンティングスクールなども特殊な進路だが、その進路において役に立つ。

では、他の使い道は、というと、それがあるのだ。何かというと、公務員浪人になりそうな人、なる可能性がある人の避難所という使い道がある。

世の中には1年制の専門職課程もあるが、ここでは仮に2年制の修士課程を想定して考えよう。

公務員というのは、基本的に人事制度は共通で高卒、短大卒、大卒と初任給が上がるのはご存じだと思う。そして、見逃されがちではあるが「大学院修士課程」を修了している場合、職歴と同様に初任給が上積みされる給与体系が基本である。よって、大学院修士課程1年時に合格して退学した場合、初任給の上積みは基本的にはないものの、2年時に採用試験に合格するとともに、2年間在学して修了となり職員となると、初任給は2年分アップする。

もちろん、大学院に2年間通うと最低でも100万円はかかる。そして、初任給のアップだけではこの学費分は取り返せないかもしれない。

しかしながら、もう一つ見落とせない大切なことがある。それはその2年間で得た専門性が強みになるということだ。

修士課程では一次資料に当たり、文献を検索し、論文にまとめる、という作業を徹底的に行う。つまり、調査分析のスキルが身に付くのである。また、教授との距離も近く、その分野の知識の塊ともいえる一生の師匠もできる。

もちろん、修士論文をまとめるのは簡単ではないし、2年目の冬にはおそらく徹夜続きになることも考えられる。専門職課程も最近はリサーチペーパーを書かされるので同様の負担がある。しかし、その経験は確実に生きる。もとより、採用試験の面接で語れるのである。

さらに言うと、修士課程修了予定者は一応、新卒一括採用のターゲットでもある。もちろん、採用しようという企業はかなり減るが、それでも新卒採用はある。

もう一つ、進学のハードルを下げるのは進学する大学院が学部と同じ学校である場合、大学院受験のハードルはとても低い、ということだ。

もちろん、経済的に働きながらでないと無理、という人には無理な選択肢ではある。しかし、金銭的に負担可能ならフリーターとしてバイトしながら、よりはずいぶんいい。もちろん、民間も考えてもう一回、というのであればその行きたい民間の採用動向を踏まえて学部で留年することと天秤にかける必要はある。

 

なぜこんなことを書くのかというと、それは行政の事務系職員に求められるスキルが確実に変わってきているから。介護保険の担当になったら、3年に一回の事業計画策定において介護や統計の専門家とともに適切な計画を策定しなければならない。総合振興計画策定においても同様である。計画策定で業者の言いなりにならない職員がいない自治体の計画はつまらない、他市のコピペであることも少なくない。

もちろん、学部卒の職員が大部分であり、それで回っているようにも見える。しかし、実際には介護保険なら介護保険の施策が効いているかどうか、ということを見極めるためにはやはり、専門家とある程度対等に議論できるスキルがあった方がいい。大学院でデータを処理したり、海外の文献を読み込んだり、という作業をした経験は生きるし、そういうスキルがある職員は貴重な戦力になる。

 

ということで、公務員試験を目指しながらまだ、一次合格が得られていない4年生にはぜひ、こういう選択肢もある、と頭の片隅に置いておいていただきたい。