自治体、特に不交付団体の財政と10万円、和光市の視点から | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

自治体、特に不交付団体の財政と10万円、和光市の視点から

和光市の財政については、よくここで同じようなことを書いているのですが、最近、初めての人も多いようなのであらためて10万円とからめて和光市の財政という観点から見たお話をさせていただきます。
 
和光市は多くの自治体と異なり、普通地方交付税が国から入ってこないいわゆる「地方交付税不交付団体」です。基本的に地方自治体の財政は地元の税収、そして、国県からの交付税をはじめとする「仕送り」で成り立っていて、地元の税収よりも地方交付税などの国県からの歳入の方が多い自治体というのはざらにあります。
 
和光市の場合、国の定めた計算式では地元の収入が十分にあり、普通地方交付税を国から払わなくても良い、というカテゴリーに入っている、ということになります。
 
一方で、この不交付団体の財政状況も一様ではなくて、大差があります。
 
上記の国の計算式によると、ちょうど地方交付税がゼロになる財政状況が財政力指数1.0となります。和光市の場合はそれを0.1超えていて、1.1ぐらいになっています。都内(23区は除く)で一番財政力指数が高い自治体は武蔵野市で1.5ぐらいあり、埼玉県内では戸田市が1.25程度でトップ。和光市は3位に位置します。戸田市の財政が圧倒的にいいのはご覧のとおりですが、じゃあ、和光市の財政は良いんでしょ、と言われることが多いのですが、そこは微妙です。財政力指数0.99までなら得られる地方交付税をはじめとする数多い財政時用の特典が得られないために、財政力指数1.0は論外としても、1.1であれば0.99である方が財政的にはメリットが多いと考えられます。
 
また、国がいろいろな新政策をやる、と勝手に決め、財源は国が負担します、という場合に直接経費を負担する負担率10分の10の事業というのは例外(10分の10であっても、それは国の計算でそうなるという意味であって、実際に100%国からのお金で事業が出来るとは限らない)であり、基本的には国県の負担が合わせても3分の2です、という事業がたくさんあります。
もっとひどい必殺技が「交付税で措置します」というやつ。
これは、地方交付税の計算式をいじる、という技で、これをやられると仮に本当に地方交付税を少し増やしてくれていたとして、交付団体、つまり0.99までの団体なら、増えた分の歳入は真水で増えます。
しかし、不交付の場合は増えた金額を参入してもなお不交付である、というケースが大部分で、結果的には全額自腹で国が勝手に決めた事業をやる、ということがままあります。
どういうことが起こるかというと、国が決めた新規事業のために和光市は市の独自事業の予算を削るなどして国に従う、というケースと、国が新規事業をやると言ったけど、市民の皆さん、うちはやりませんから、ごめんなさい、ということもたまにはありうる。
(もう一つ、これから厳しいのはコロナ不況と併せてアメリカのコロナ不況などで埼玉県の基幹産業である自動車関連が大きな打撃を受けるのではないか、ということ。財政的にはようやくリーマンから立ち直りつつあったところでコロナの直撃を受けている、という現状があります。)
 
ということで、私が10万円もらいません、と言って(実際には行ったり来たりはないですが)国に戻ったお金は少なくとも和光市ではない、地方交付税の交付団体に行ってしまう確率が高い、ということなのです。
ということで、10万円はもらって地域で使います。いや、そもそももらうとか関係なくなるべく地域で消費をすることを心掛けているので、引き続き地元で消費します、と言う方がいいかもしれませんね。
公選法上、少なくとも地域の団体に寄付することは難しい。地域外の団体なら別で法に触れないことは可能ですが、まあ、それも市外にお金を出すことになるから、ちょっとはばかられる。
いずれにしても、まず、不交付団体の首長や議員はぜひ、満額もらうとともに、日ごろから地域での消費を心掛けていただきたいし、そうしておられると思います。これが普段は永田町にいる国会議員との違いでもありますね。
 
では、「交付団体の政治家が10万円もらうかどうか」ですが、結局、国庫に属したお金は国の意思で使われますから、それがふさわしいと思ったら国に返せば(今回なら請求しなければ)いいのです。
ただ、今、地方議員が3万人ぐらいいて、首長が1724人います。仮に3万2千人とします。10万円をかけると32億円ですか。これは全部地方に行っても国家財政にとっては大きな数字ではありません。ですから、地域でどんどん使ってはいかがでしょうか。
 
ちなみに、交付団体か不交付団体かに関係なく、首長と議員が「地元で使います」と宣言する、というのは所属する公共団体の公務員と地域の皆さんに「地元で使いませんか」と呼びかけるのと似たようなものだと感じていただけると思います。
そうすると、32億円ではない、「地域で使った人数×10万円」が日本経済にシャワーとなって降り注ぐことになります。
 
財源は借金じゃねーか、というご意見は承知しています。私は、日常においては緊縮まではいきませんが比較的財布のひもをゆるめずに市を運営する立場です。和光市の場合は都市計画が遅れていて、特に道路や都市施設の不備が市民生活にはマイナスの影響を及ぼしています。まちづくりに今まで、力を入れてきた面は否定できないと思います。
ただ、今は非常時です。
手堅い財政運営というのはまさに、非常時に対応できるのりしろを作るための手法でもあります。
 
いろんな理屈がありますが、こういうお話です。
 
ちなみに、私の給与は恥ずかしながらいま、昨年ニュースでお騒がせした不祥事(幹部職員によるもの)により4月から6月まで、20%カットとなっています。
また、これは公約でやったことですが、1期目はずっと給与を25%、2期目は20%カットしました。これはリーマンショック等を踏まえたものなのですが、給与については、その時々の状況で判断させていただいています。1期目、2期目はとにかく財政再建のために市民サービスの値上げなどで市民にご負担をいただきました。
そういった和光市政上の経緯も、流出入の多い和光市ではもう忘れ去られているかもしれませんし、市外の方にも知っていただければと思います。
 
なお、大部ですが、和光市財政白書もご参照ください。

追記 臨時交付金の事務連絡(PDF)においても国はこんなことを言っていますよ。要するに借金をした場合、不交付団体は自腹で頑張ってね。交付団体は面倒を見ます、と。不交付団体の住民(23区の人は全員)に正面から喧嘩を売っています。
「2 地方負担の増加に対する措置
  今回の補正予算により令和2年度に追加されることとなる経費に係る地方負担については、3に掲げる「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(仮称)」により措置することとしている。
また、今回の補正予算により令和2年度に追加されることとなる投資的 経費に係る地方負担については、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(仮称)を充当しない場合には、原則として、その100%まで地方債を充当できることとし、後年度における元利償還金の50%(公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備事業については、当初における地方負担額に対する算入率である60%)を公債費方式により基準財政需要額に算入することとしている。」