データ偽装がとんでもない行為である理由 | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

データ偽装がとんでもない行為である理由

統計偽装について。
経済学は、元々はpolitical economyという用語があるように、経済という人の営みを単純化した「モデル」で描写し、政策を形成する学問です。この基本の「き」を知らないと統計を偽装しても平気になります。

経済学の営為はすべて、「精緻で適切なモデル」を作り、政策形成のツールとすることにあります。

モデルとはなあに!?という方、ウィキにいい例があったので、引用しますね。

天文学では、「天動説」及び「地動説」という理論があり、それを図形的に示したモデルがあった。ヨハネス・ケプラーは正多面体(プラトン立体)を用いた太陽系モデルを示した。
引用終わり。

要するに現実世界を観察し、その法則などを抽象化して、単純化したものがモデルですね。

さてさて、先進諸国の経済政策は基本的にいわゆる「近代経済学」のモデルを活用しています。
ちなみにここでマルクスが作ったモデルを使っていたのがソ連ですね。

話が飛びましたが、データをもとにモデルを作ったりデータをインプットしてモデルを活用するわけですから、合理的な説明のつかないデータ収集方法の変更はあり得ないわけで、ここをしっかりとわきまえない担当が代々続いてしまう厚労省の経済統計への理解はありえない。

学部レベルのミクロとマクロのテキストに書いてあること以外はなんら知らない私でも、これはまずいと思います。

国会では野党の「ソンタ君」たちが忖度の線で攻めているのだけど、経済統計をダメにする罪は政策形成のツールをダメにするのだから、忖度による偽装が仮にあったとしても、それと同等以上に統計データをないがしろにすること自体の罪は重い。

私はどちらかというと、もとは企業会計が専門なんですが、中小企業の粉飾で面白い話があります。会社の経費以外の領収証を経費に紛れ込ませる、というのは典型的な脱税の手口なんですが、これをやると会社の経営にはマイナスが大きくて、結局会社は成長しない、とよく言われます。
なぜなら、正確な経費の把握ができなくなるから。で、よくあるのが二重帳簿をつける手口なのですが、二重帳簿がバレて洗いざらい国税に持っていかれる、なんてこともあるわけで、こうなると吉本新喜劇。

要するに、データ偽装は経営の大敵、という意味では、事は官民を問いません。そもそも、安倍総理に本来のデータと偽装したデータが届いていたとしたらこれまた喜劇ですし、それは可能性としては私にはわかりません。
ただ、誤ったデータを公表して世間のいろいろな判断を誤らせた罪は、まさに万死に値する行為だと言えます。

国会議員は党利党略で忖度責めを行うのは勝手ですけれど、それよりも統計の重要性を官僚に思い知らせ、さらにはこれを機に官庁の現場職員の専門性の向上を進めるべきですね。
海外で統計政策を担うのは専門課程を修了した、最低でも修士号ホルダーたち。多くは博士です。近い将来、日本もそうならなければまずいと今回の件で感じました。
理系で修士課程を修了している方々は、学士卒とのスキルの差を知っていると思います。そういう方々にこそ、この件について発言していただきたいものです。

世界のホワイトカラーは、おしなべて高学歴社会。なぜなら政策形成の素養として必要だから。日本企業も官庁も成果が出ず、競争力がない要因の一つは専門知識や訓練の不足からくるものなのかもしれません。