「万引き家族」の評価と補助金の関係は!? | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

「万引き家族」の評価と補助金の関係は!?

是枝監督の「万引き家族」がカンヌで評価され、それを踏まえた政府による「祝意」を監督が断ったことが賛否を呼んでいます。
さて、この補助制度、文化庁によるもので、財源はれっきとした税金です。
ですから、この事業には明確な目的があって、それを文化庁のサイトから引くと、こんな感じです。

【映画創造活動支援事業「映画製作への支援」とは、国からの補助金( 文化芸術振興費補助金) を財源として、我が国における映像芸術の普及・振興を図るため、優れた日本映画の製作活動に対して助成を行うものです。】

要するに、映像芸術の普及・振興に資するものであり、日本映画(を作る活動)として優れたものであることが要件。
今回のカンヌの評価から、映画の出来の良さは客観的に認められました。また、当然、日本の社会の景色を描いた映画としての評価ですから、優れた日本映画という評価も客観的なものでしょう。

要するにこの映画は客観的に制度の所期の目的を満たしたものであり、それをもって税を投入したことの意義は満たしたものと考えられます。

また、その客観的な評価をもって政府は祝意を示そうとしたわけですから、監督の辞退は客観的なものというよりは個人的な好き嫌い、の世界だったのであろうということが分かります。

ここでポイントはというと、補助を受けた作品の満たすべき要件は、政府を批判することでも政府に従うことでもない、ということなのです。
政府を批判すること自体は補助制度に照らした作品の評価、という観点ではどっちでも良い、という意味です。
むしろ、どのようなジャンルであれ、上記の制度趣旨を満たしたものを作ればいいのです。
もちろん、監督の辞退はあくまでも個人的なものであるし、カンヌという客観的な評価を経た作品に政府が客観的に「祝意」を表すということも何ら問題ありません。

これに似た問題としてジャーナリズムの使命、というものがあります。ジャーナリズムの仕事は、政府の批判ではなく、客観的な事実の報道による国民の知る権利の保障です。正しいことでも政府がやったことなら揚げ足を取る、というのでは国民の権利はむしろ、妨げられます。
お客様から新聞代というお金をもらって客観的な事実を報道する、この原点を忘れた新聞に国民的な支持はありません。
また、戦前、国民が喜ぶ報道をして戦争をあおった責任を新聞社はゆめゆめ忘れてはなりません。

話がずれました。

制度による補助にはつねに、制度趣旨というものがあります。大切なのは制度趣旨を満たすかどうか。そして、その前提として、そもそも制度趣旨は時代に合っているか。
その趣旨を鑑みずに批判する、というのでは冷静を欠きます。