公的年金とは何か、ということを法律に立ち返って考えてみよう | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

公的年金とは何か、ということを法律に立ち返って考えてみよう

(この記事はあくまで制度の説明をしているだけで私が作った制度でも作った政党に私が所属しているわけでもないので、私を恨まないでくださいね。)

 
公的年金とは何か、ということを法律に立ち返って考えたことがある方は少ないのではないかと思います。先日、高齢者の定義を専門学会が再考しているという記事が大きな反響をもたらし、特に「結局年金の受給年齢を引き上げたいだけだろう」というような批判もありましたね。
また、「年金をもらえる年齢が引き上げられるのは詐欺だ」というご意見もありました。
ごもっともです。
政府が年金の趣旨や定義、設計をしっかりと広報しなければならないのに、実際には及び腰で、マスコミの誤った解釈や国政政治家の無責任な言説が世間の年金への無理解をもたらしています。
 
そこで、端的に年金の法律の一端をご覧いただくことで、その誤解の一部を解ければと思います(皆さんが選んだ代表が議論を積み重ねて作ってきた法律です。ちなみに抜本的に年金を変えると豪語したM主党政権はほぼ何も触りませんでした。いや、できなかったと言った方がいいかな)。
 
まず、国民年金法第一条です。
「(国民年金制度の目的)
第一条  国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項 に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」
 
ちなみに、厚生年金法にも似たようなことが書かれています。
どうですか?
法律には「老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを…防止し」とありますように、老後を丸抱えする、という趣旨ではないんですよね。みんなで助け合って老後や遺族の生活を安定させましょう、というのが法の趣旨なんですよね。
 
第四条ではこうあります。
「(年金額の改定)
第四条  この法律による年金の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定の措置が講ぜられなければならない。」
諸事情が変化すると、年金額は改定しなければならない、とある。
 
第四条の二では
「(財政の均衡)
第四条の二  国民年金事業の財政は、長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない。」
とあります。財政の均衡が維持できない場合には手を打つように、とある。
 
さて、もうひとつ、今回の減額話で「100年安心といったではないか」と三流評論家が言っていますが、国会での政府の答弁では「一度も言っていない」と明確に否定し、実際に法律では5年ごとに100年分の見通しの作成(シミュレーション)を行う、としか書かれていません。100年保障ではなく、100年シミュレーション、なんです。
 
「(財政の現況及び見通しの作成)
第四条の三  政府は、少なくとも五年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びにこの法律による給付に要する費用の額その他の国民年金事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(以下「財政の現況及び見通し」という。)を作成しなければならない。
2  前項の財政均衡期間(第十六条の二第一項において「財政均衡期間」という。)は、財政の現況及び見通しが作成される年以降おおむね百年間とする。 (以下、省略)」
 
ということで、法律に描かれている姿は世間に流布している姿とは異なることがわかります。
もちろん、生活を丸抱えし、100年磐石の年金が作れれば凄いことなのですが、それできるとしたらまさに「神業」であることは皆さんご理解いただけると思います。