幻の市長コラム「利益創作会計」
(「市長コラム」として書いてみたのですが、誰がどう見ても広報に載っているとマニアックに過ぎるということでお蔵入りになってた文章です)
一時期、企業の会計の世界で利益創作会計(クリエイティブアカウンティング)という言葉が話題になりました。
企業会計は自治体の財政と同じく一定のルールに基づいて実施されますので、誰が会計を担当しても結果は同じになる、と考えがちです。しかし、会計や財政のルールには「幅」があり、それぞれの仕事に関する処理についてはその範囲内で判断をしながら行うことになります。たとえば、空調施設が壊れたとして、その入れ替えを1回払いでやるのか、リースでやるのか、という判断が必要になってきます。そこで、会社の経営の様子をできるだけ実態に即してお知らせできるような会計処理をするのが通常の処理ですが、利益操作のために判断をゆがめるのが利益創作会計なのです。
和光市役所でも、たとえばある高額な施設の更新を数年前に5年間のリースで行いました。これは借金をして一括で買うこともできたものですが、このリースという操作によって財政の負担は後年度に先送られた上、固定資産への投資という実際の姿ではなく、義務的な「経費」として扱われ、また、更新当初の年度の負担の重さは実態よりも低く開示されることになりました。違法かといわれれば「ぎりぎり適法と言いえます」といわざるを得ないのですが、現在は可能な限りこのような処理を排除しています。市の資産や予算はあくまで市民から委任されて市長が職員とともに活用しているわけですから、今後もわかりやすい、ごまかしのない報告を心がけたいと思います。
なお、健全財政条例の「素案」にもこの精神が生かされています。