なぜ「不交付団体」なのに財政が苦しいのか | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

なぜ「不交付団体」なのに財政が苦しいのか

和光市は地方交付税の不交付団体です。

不交付団体とは、単純に言うと税収だけで基本的な市の事業をこなせる、と総務省の計算上認定された団体です。

21年度を閉めた時点で不交付団体は74市町村と東京都の75団体(基準となっているのは19~21年度の決算数値)。

20年度は151市町村と東京都でしたから、半減しています。

単純に考えれば、日本で最も裕福な75団体と見ることもできます。しかし、実際には多くの不交付団体がこの景気後退により塗炭の苦しみを味わっています。


最大の要因は税収が減ったらそのまま収入(歳入)が減るということです。

和光市の場合、平成18年度の税収は約143.3億円、19年度は約148.5億円でした。20年度は147.4億円です。ところが、21年度はリーマンショック以後の景気後退の波をもろにかぶって140.6億円、22年度の予算は手堅く見積もってはいるものの、132億円を予定しています(税収は前年の所得税等をベースに決まるため、遅れて影響を受けます)。
(詳細はリンク先 の5ページ上半分のグラフをご覧ください。)


また、地方交付税の交付団体は税収が減ると地方交付税が増えるので、景気後退の影響はあまりありません。

さらに、民主党政権になって以来、1.1兆円の財政措置が自治体にはありましたが、不交付団体である和光市が恩恵を受けることはできませんでした。

さらに、不交付団体には懲罰的な多数の不利益措置があります。

(不交付団体の不利益措置はリンク先 の資料⑦参照。あまりの仕打ちに驚かれると思います。そもそも地域間の財源調整は地方交付税で行われているのです。その上に、国も県も、不交付団体にはさまざまなペナルティを課しているのです。この点、いくら窮状を訴えてもなしのつぶてです。)


では、歳入が減った穴はどう埋めるのかというと、歳出(支出)を減らすか借金をするか、貯金を取り崩すしかないのです。

それでもたくさんの貯金があれば、あるいは借金がごくごく少なければ景気回復までそれを原資に乗り切ろうという選択肢もあります。

しかし、和光市の場合、それも限界近くに来ています。


景気後退時に、なぜ不交付団体は特別に苦しいのかをご理解いただけたでしょうか。

そもそも、不交付団体の経営においては、税収にゆとりがあるときにある程度の蓄えをしておき、不況に備えなければならないものなのです。その備えが無い以上、事業の縮小や料金の値上げを、好む、好まざるは関係なく実施しなければ市は成り立ちません。

さらには、ここ数年の税収的には今より豊かだった事業年度において、市はさまざまな大型の投資をリースで行いました。リースで契約した金額は後年度の分割払いとなり、毎年確実に出て行く固定的な経費となります。

この経費負担がまた、税収減の和光市の財政を苦しめています。

さらに、先程リンクしたサイト の5ページの下半分にある資料をご覧いただきたいのですが、福祉系の経費は不況と高齢者の増加でうなぎ登りです。

和光市はまちが始まって以来と言ってもよい、苦しい状況に追い込まれています。


この辺りを財政情報を市民の皆様と共有することで皆様との認識のズレをなくすべく、先日は決算概要説明会を行いました。

また、11月18日(木曜日)午後7時~午後9時(中央公民館)の財政白書説明会ではより深い分析をお示しします。

なお、今後、さらなる経費の再検討や無駄の撲滅にも励んで行きます。