結局数字から先に切り込めるのは地域の人だけ(経常収支比率の解説を少し補充しました)
自治体の数字の読み方を人前でお話したり、雑誌に記事を書くので、数字を見てくださいとか、いろいろな数字について適正値を知りたい、という話をいただきます。
実際に、経常収支比率なら90超えちゃまずいとか、実質公債費比率は15くらいに抑えたいとか、一般論はあるんですが、一般論というものほど使えないものはありません。
ある新聞の埼玉版ではご丁寧に経常収支比率が80以下が適正であり、和光市だけが県下では適正、という20年昔のような記事を書いていましたが、この成熟期の日本では20年前の基準など通用しないのではないか、そういつも疑問を感じつつ報道をするのがジャーナリストだと思うのですが…。
(この記者は県庁の市町村課のリリースを見て記事を書き、補足取材を県庁職員にのみ行ったのでしょうね。県庁職員はここまでしかいいません。おかげで、「相対的にはまし」であっても、「かなりのペースで悪化している」和光市の財政数値を市民が誤解する源泉になっています。「和光新聞」でも、そういう捉え方をしてしまった和光市民の声が掲載されています。)
さて、経常収支比率は経常的な支出を計上的な収入で割ったもので、家計に喩えればエンゲル係数と中学教科書には書いてあります。
家計だとエンゲル係数が低いということは家計に余裕があるのですが、自治体だと土建行政に注力しているときにもエンゲル係数(経常収支比率)が低くなります。たとえ、さほど余裕がなくても。
どういうことかというと、分子と分母の関係なので、「分子の計上的な支出以外の支出=ハコモノ、道路」が大きいと、経常収支比率は良く見えるのです。計上的な支出の率が上昇するのはハコモノができて、管理費がかかり始め、借金の返済(自治体では借金の返済が始まるのは建設後3~5年後です。これは据え置き期間という制度があるからです。和光市は不交付団体なので、据え置き期間が終わると経常収支比率はリニアに上がることになります)が始まってからなんですよ。
そして、当然ですが、経常収支比率は借金の残高には直接的には影響されません。
また、自治体自体が成熟している場合、新規の公共事業は少なくなり、経常収支比率は自然に上がります。
こんな時、数字を良いとか悪いとか指摘すると、地域の人たちは、うちは土建市政だから、などと素早く答えを出します。それは私にはできないことです。
数字の読み方は各地の人々が各自マスターし、自分で地域の数字を読むのが正解だと思います。一般論には期待しすぎないことかな、と思っています。
和光市のこと以外については、そういう意味で、一般論まではお付き合いしますね。