大阪市と大阪府の客観的な状況を端的に言うと | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

大阪市と大阪府の客観的な状況を端的に言うと

「大阪府の橋下知事が打ち出した財政非常事態宣言が、府との連携事業を行う大阪市にも波紋を広げている・・・・橋下知事は「ゼロベースで見直す」としている・・・・どの事業が継続されるのか大阪市側はやきもきしている。(産経新聞)」
というニュースがありました。

では、客観的に大阪府と大阪市の状況を一番端的な、分かりやすい方法で考えると以下のようになります。
リンク先はPDFで、大阪府と大阪市の財政比較分析表が出ます。
簡単なので両方開いてこの記事とつき合わせてください。
で、詳しい説明はここではできないので、私の本(『自治体連続破綻の時代 』洋泉社)をお持ちなら本の財政比較分析表の解説を、ない場合はhttp://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/bunsekihyo_2.html
の「財政比較分析表の説明」をご覧ください。

大阪府

大阪市

この図はチャートのうち赤線(その自治体)の数値が類似団体の平均値と比較してよければ外へ出て、悪ければ内側に引っ込みます。
偏差値が全分野で50なら、平均値の線と赤線が交わります。
(このチャートは17年度が最新です。)

まず、借金に対する姿勢です。

将来負担の健全度は借金の残高の重さ。たくさんあると内側に行きます。
公債費負担の健全度はその年の借金負担率が多いかどうか。たくさん返すと内側に行きます。
大阪府は借金が平均値より多いのですが、偏差値的には借金返済の偏差値が低いです。つまり、類似の団体よりはたくさん返しているんですよ。

大阪市は逆です。将来負担の健全度がより低くて、借金返済の健全度は低くなっていない。
つまり、たくさん借りているくせに、返す努力は他の類似団体よりダメなのです。

次に定員管理の健全度を比べます。
大阪府は定数の管理は平均値。つまり公務員の数は普通です。
そして給与水準の適性度を見ると分かりますが、給料(ラス指数98.2)は比較的というかかなり府県としては安い。橋下氏は給与をこれ以上下げて士気を低下させるのか、職員を減らして頑張ってもらうのかという選択をすることになります。
大阪市は給料が高く(ラス指数101.6)で公務員が多い。どっちも水準を下げるべきですね。
特に、公務員は絶対にどこかに余っているはずです。

物件費にうつります。これはいわゆるハコモノの維持管理費やアルバイト職員の給与など。ハコモノがたくさんあったり、ハコモノの直営をやめて委託すると膨らみます。
大阪市はここが過剰。
そして、大阪市は職員が多いので、たくさんの事業を民間委託してここが膨らんでいるのではないことが明らかです。
つまり、ハコモノが過剰だということ。
大阪府はこの値は平均値です。

財政の弾力性(経常収支比率)はエンゲル係数と呼ばれますが、本質としては高コスト体制ならこの数字が95を大きく上回ります。
僻地では大阪府の98.6、大阪市の101.7という数字は普通に近い(でも激悪)ですが、都市部でここまで放置したのはまあ、論外です(夕張は18年度で119.9)。
原因としては過去のもっと財政が良かったときの支出を今もしている、というのにつきますね。どっちの経営者も・・・・です。

なお、財政力指数は総務省が計算した基準モデルによる、その自治体がカネを得る力と考えてください。
これは両方とも普通です。昔は経済力があったんですが・・・。


どうです、数字って結構雄弁じゃないですか?

ただ、大阪府の類似団体はあくまで大阪府と財政力指数が近い府県、大阪市の類似団体は政令市ですから、この比較はあくまで参考程度です。
しかし、各業界内(府県と政令市)での立ち位置という意味ではこの比較は妥当だと思います。

さて、これだけを分析したという前提の限定的な結論ですが、大阪市は明らかに放漫経営度が高く、大阪府のリストラを批判する権利はありません。
なお、もっと細かい分析が出来るのですが、細かい分析をすればするほど「リストラできない理由」が見つけやすくなります。

他の自治体から眺める立場だったり、あるいは市民の立場としてはこの程度のざっくりした現状認識のほうがいいんじゃないかと私は思います。