格付けと地方再生健全化法について、研修を見ていて気になったこと(追記あり) | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

格付けと地方再生健全化法について、研修を見ていて気になったこと(追記あり)

地方財政健全化法(地方公共団体の財政の健全化に関する法律、地方公共団体財政健全化法)と格付けに関する議論を聞いていると、地方財政の専門家と称する人々のファイナンス(資金調達)や金融マーケットに関する知識の浅さに驚きます。

先日もとあるセミナーの講師が地方財政健全化法のスキーム(仕組み)には今のとこ債務調整(借金棒引き)は取り入れられていない、と説明したところ、ある出席者が「じゃあ格付けは意味がないじゃないですか」と問い、講師が答えに窮する場面がありました。

別に横から口出しして教える義理もないのでスルーしましたが、正解は「借金棒引きがないからデフォルトのリスはない、というわけではないので格付けは必要だし機能しうる」というものだと思います。

つまり、あるべき返済があるべきタイミングでなされることが正しい状態で、それが狂うとイレギュラーな状態、つまりデフォルト*1となるのです。

破綻せず棒引きがなくても、「繰り延べの要請」等はあるのです。

そして、広い意味でデフォルトには債務の繰り延べ、支払いの一時猶予も含まれます。

自治体が破綻しなくても、一時的に資金繰りに窮し、返済が遅れると、これは正常な支払いではありません。

S&Pは財政健全化法を再生団体の資金調達の仕組みが法定されたことによるタイムリーペイメント*2性の向上(再生団体がスムーズに資金を借りられる仕組みができ、再生団体になったときの資金繰りがしやすくなった)をもって、「自治体の信用力にはプラス」としています。格付けはこのようなところを見ているのです。

民間では資金は特定のタイミングで特定の金額が用意できないと意味がないのです。

ということで、自治体が破綻しなくても、デフォルトはあり、大切な資金を地方債で運用する人(団体)にとり、機能する格付けは歓迎すべきものなのです。


ところで、これまでも自治体の財政分析の講師はやってきたのですが、明日は初めて「地方財政健全化法」の講師として雇って(笑)いただきました。とても緊張しています。


ここからは宣伝ですが、地方財政健全化法と初歩的な自治体の財政(経営)分析のセットでも講義ができますので、興味がある方はメールをいただきたく存じます。

「地方議員松本」として、というのがまずければ、「ジャーナリスト(笑)松本」として参ります。


追記:当然のことですが、デフォルトのリスクが高いと負担する金利は高くなります。破綻リスクはなくても、例えば「繰り延べ要請リスク」がそこそこあれば、資金調達には跳ね返るのマーケットの基本です。


*1デフォルト:フォルト(正しい)ではないということ。

*2タイムリーペイメント:約束通りに耳をそろえて払うこと。