>朝日報道「国保滞納 差し押さえ1.7倍」について | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

>朝日報道「国保滞納 差し押さえ1.7倍」について

2月4日の朝日新聞朝刊記事「国保滞納差し押さえ1.7倍 01~05年度」では、国民健康保険の保険料未納者からの差し押さえを政令指定都市と23区が強化しており、その件数は4年間で1.7倍になったとしています。

この、滞納差し押さえはここのところ、全国の自治体で大幅に強化されています。

理由として、長期的な収納率(保険料・保険税徴収率)の低下傾向があります。

(昨年度は若干改善。理由としては滞納差し押さえの強化、コンビニ収納の導入など、全国的な自治体の努力と景気の回復があるとされています。)

払えるのにはらわないケースがかなりあるようです。(支払わない理由として「生活困窮」は意外に少ない。)


また、全国の全ての自治体が国保に法律で定められた基準とは別の多額の税金の投入(人口一万人当たり5000万円から8000万円程度が多い)を行っています。これは、国保とは関係のない社保に負担が転嫁されているということです。(社保からは制度として国保への財政的な移転が行われているものの、十分かどうかは議論が分かれる。今の医療費を考えれば不足しているが、今の医療費が正当かどうかは私には俄かには判断できません。)

ちなみに、国保は居住者の半分程度が加入している健康保険であり、高齢者や自営業者などが中心の制度です。


このようななか、朝日の論調は強制的な徴収について批判するもので、コメントとして唐鎌さんという専修大学の先生が「低所得者困窮の恐れ」という趣旨のことを言っておられます。国庫負担を増やせという論調もあり、私はこの方の考えには単純には賛成しかねます。

また、朝日の記事だけを読むと、明らかに誤解するのではないかと私は危惧します。正直、この記事をそのまま読むと血も涙もない自治体、という印象になります。

しかし、本来支払う能力に欠ける方については減免が制度としてあり、そこである程度衡平が図られています。つまり、保険料はある程度収入に対応しているのです

ちなみに、本当に支払う能力を大きく上回る負担がかかっている人としては急に所得水準が下がった人があり、この場合には対応が自治体により異なります。ここは制度の穴の部分です。


国保については構造的に無理があることは確かです。

まず、会社員が入っている社保では半額は会社持ちであり、そのため会社負担のない国保については負担感が強烈だという制度的な欠点があります。

また、国保は高齢者と自営業者、無職者が中心でそもそもの負担力が低いなか、どこまでが公的な負担か、という問題もあります。

そのため、市町村は国保に多額の法定外の補助を行っているのです。

見直すなら、そういったことも含めてトータルで考える必要があるのです

国保の抱えるさまざまな問題については私の本の中でもある程度触れていますので、よろしければご参照ください。