視察報告~東京都北区(図書館の民間委託&PCの指紋認証) | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

視察報告~東京都北区(図書館の民間委託&PCの指紋認証)

生まれて初めてJR尾久駅で降り、昭和町図書館まで歩いていきました。

先に指紋認証、そして、図書館委託、という順でご説明いただきました。

①指紋認証システム

そもそも、北区では17年度から情報セキュリティ監査(外部監査)を実施している(年間2000万円程度かかっている)。

そのなかで、PCのアクセス権に関する問題点が提示された。以前はパスワードにてアクセス権者を識別していたが、パスワード管理が甘かった。

また、パスワードを共用していたため、アクセス者の特定ができないという問題があった。

一方で、庁内LANを活用した文書管理システム、人事管理システム等の立ち上げ準備の時期となり、文書管理システムには高度な機密情報も含まれるため、本人確認がより厳密に求められるようになった。

導入対象は再任用、非常勤、再雇用を含む3100人。PC2000台。

経費はサーバやセンサユニット等のリース、システム開発、保守経費等込みで5年で9450万円(データ読み取り端末のコストがこのうち2000万円強。そのため、次のリース契約時にはコストは大幅に下がる予定)。


指紋認証システムと言うが実際には指紋の持つ特徴的な情報を基に識別するもの。このデータでは指紋は復元できない。


システムは「東京区北区情報セキュリティポリシー」に基づき管理運用している。


②図書館の民間委託

北区では徒歩圏に図書館を、という考え方の下、20平方キロほどの区内に15館の図書館を設置。

公務員の削減とサービス拡充のため、民間委託を推進。

17年度は6館(144543千円)、18年度12館(304452千円)を委託。

民間委託によるコストダウンは31810千円と試算しているが、資料費の20%増額と開館時間、開館日の延長などのサービス拡充を行ったため、図書館コストはここまでは下がっていない。

職員と委託先の役割分担は、定型業務を委託先、職員は選書、レファレンスや地域連携などの業務というようになっている。

業者選定方法は、公募型プロポーザルを採用。

入札方式によるサービス低下の弊害を鑑み、この方式としている。

評価項目は、「公立図書館の考え方」「業務全般の運営能力」「利用者に対する考え方」「人材に対する考え方」「その他」に関する提案書審査、プレゼンおよびヒアリングによる。

区民の評価だが、苦情が著しく減少し、区民による利用者懇談会でも窓口の対応が良くなった、親しみやすくなったという意見が多い。これは事業者に関係なく同じ傾向を示している。

受託業者は出版流通業者、DM関連業者、非常勤職員が立ち上げた業者、労働者派遣会社の4社。

現在、23区では19区130館が委託されている。また、指定管理者制度への移行を千代田、大田、杉並、足立の各区が予定している。」


さて、指紋認証についてはまず、区民の大切な情報を管理する役所の特性から情報漏えいのリスクが大きく、この程度の投資は必要であるという考え方であり、私もまったく同感です。また、外部のセキュリティ監査の必要性についても担当者は「身内では無理」と断言しておられましたが、私もそう思いました。いくら制止してもずかずかと役所のカウンター内に議員や一部市民がずかずかと入り込むのを所与として、じゃあ、それでも情報を漏らさないためには何が必要か、ということを考えると、外部監査しかないでしょう。

ただ、この多額のコストを吸収するためにはさらなる種々の無駄のカットが必要です。

とにかく、情報が漏洩した場合の損失を考えると、徹底した機密保持は必須事項だと思います。

これまで、機密漏えいについての市の対応については甘いのではないかと思ってはいましたが、具体的なイメージをつかめずにいました。今後の大切なテーマとして取り組みたいと感じました。


次に、図書館の委託ですが、北区の単なるコスト削減ではなく、図書館を充実させるための原資にしているところに文化行政の底堅さを感じました。

また、委託が決定した際に非常勤職員が集まって立ち上げたのが今回の委託先ということで、同じようなビジネスモデルが和光で、また図書館のみならずいろいろな分野でできないか、と感じました。

さらに、和光市では増加する図書館ニーズに市が対応しきれていません。

北口や駅から遠い地域での図書館ニーズにどう対応するか、また、公民館図書室の拡充で北区のように充実した図書館ネットワークを構築できないか、そんなことを感じました。

また、図書館では元気な挨拶に驚きました。この図書館では挨拶の徹底とともにレファレンスなどのサービスニーズが大きく伸びたそうです。近寄りがたい図書館司書、というイメージを覆したのは挨拶だったのです。


いつものことながら、ほぼ隣なのに都内と埼玉でこのサービスや意識の格差は何なのだろう、と今日も感じました。

もちろん、税収の差は埋めがたいでしょう。しかし、それ以上に市役所や首長の意識が大きな格差を是認して、都内とは比較しないで欲しい、と感じているのが問題だと思います。乏しい財源の中でもできることをやる、そして、そのための工夫を欠かさない、それが大切なのです。


あるべき自治体の姿、それを以前の区長が考えた末にこれだけの充実した図書館サービスを構築したとうかがい、私はあらためてあるべき姿を考え、それにしたがって行動するということの必要性を痛感しました。

もちろん、イメージを語るだけなら簡単ですが、その後の行動もセットで、じっくりと取り組み続けて行きたいものです。


前回の選挙のとき、和光市のブランド価値を高める、ということを語りました。残念ですが、今の和光市のブランド力は地下鉄などによるものが大きく、議員や首長の努力によるものとは言いがたいと思います。

やはり、住んで楽しい、帰って楽しいベッドタウンが理想の和光市の姿です。

その実現のために必要な施策に取り組んでいきます。