ダメな自治体の行動パターン3~連結バランスシートを公表しない | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

ダメな自治体の行動パターン3~連結バランスシートを公表しない

<私のミクシィ日記からの転載ですので、文体が異なります>

このハードルは比較的高い。 ほとんどの自治体が公表していないから。

都道府県・政令市で公表していないのは島根県のみ。そして、全自治体で公表しているのは確か5%台。

普及率が低い一方で、総務省方式の連結*バランスシートは「連結のニセモノ」というに値する低レベルなもの。総務省のバランスシートモデルを作成した際にかんだ学者は恥じ入っているのではないか。 何しろ、連結対象が下水道会計などと三公社(土地開発公社など)等のみ。つまるところ、どこを連結してどこを連結しないかは形式基準(一定の形式的な要件を満たせば連結される。つまり、脱法行為的な方法でいくらでも抜け穴を作れるし、それを罰する規則もない)で決まっている。

企業の場合、「影響力基準」で連結対象を決める。 株式をたくさん持っているか、人的な影響力があるか、とにかく、影響力が一定以上の関係会社は何らかの方法で財務書評を連結しなければならない。これは、債務の押し付けなどを防ぐため。

しかし、自治体はどんな巨額の穴を開けた関連団体があっても三公社等以外は対象外。ちなみに、このようなざる同然の連結基準のレベルは企業の旧連結会計をも下回る。(旧連結会計は粉飾の温床だった。社長が泣きながらわびた山一證券を見よ。)

こんなずさんな簡単な基準のすかすか連結バランスシートすら作成しない自治体は恥を知ったほうがいい。

ちなみに、和光市だが、連結をしたら、という私の提案に、作業すると答弁し、今、下水道会計を精査している。まあ、やるということなので、早期にできるようにがんばってほしい。やりつつあるのでダメ自治体には認定しない。

(そういえば、自治体の連結会計をやることは意味がないと私に正面切って、しかも周囲に人がいないときにこそっと抜かした同僚議員がいたのには驚いたw。これが自治体や地方議会の現実です。)

とにかくこんなザル基準は語るに値しないが、やらないよりはまし。なにしろ、巨額の債務は水道会計や下水道会計にあることが多く、これは総務省基準でも連結されるから。 もちろん、理想は影響力基準での連結だ。 総務省の方針は変えるべきだし、自治体はできれば自発的に広義の連結情報を開示すべきだ。ちなみに、福津市(福岡県)が開示している(福津市は公会計研究所 方式という新方式と併用で情報を開示している)。 公開企業は連結会計だ。自治体の公共性は公開企業を大きく上回る。よって、公開企業のディスクロージャーよりレベルが低くてはならない。 なお、バランスシートを公表しない自治体は論外だ。なにしろ、バランスシートは退職給付引当金を公表し、将来の退職金負担相当額が市民に公表されるものであり、それだけでも価値があるのだ。 ただし、総務省方式のバランスシートは債券市場からは評価されていない。学校や道路の評価額など担保力としては無価値だからだ


*連結:いくつかの団体の決算の表を1つにまとめることを言う。自治体の連結の場合、普通会計以外の成績を普通会計の成績と連結するという趣旨。連結に関して日本の公開企業は影響力基準を採用しているが、これは当然の常識中の常識だという事に注意されたい。


追記:以下の趣旨のメッセージをいただきました。非常に的確な指摘なので、ご本人の許可を得て転載させていただきました。

「ある団体でも、以前、自治体と同じような方式の会計をやっていました。本体や自治体でいうところの三公社のような関連会社は優良決算だったものの、その他の関連会社に赤字の大穴があき、その始末をめぐって信用問題になりかけたことがあります。この経験からも、総務省方式のバランスシートはほとんど意味がないというのは実感を持ちますね。本当にきいたこともない関連会社から大赤字が出てきたりして、恐い思いをしました。 」

これが連結会計の形式基準の実態というか、末路です。ちなみに、会計の歴史は粉飾との戦いの歴史なのです。


<松本武洋の著書『自治体連続破綻の時代』についてはこちら >