バランスシートを自治体関係者向けにざっくり言うと~ハムスターでもわかる自治体財政用語シリーズ | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

バランスシートを自治体関係者向けにざっくり言うと~ハムスターでもわかる自治体財政用語シリーズ

今日はバランスシートです。

バランスシートは貸借対照表といわれます。

左右がバランスしている(つまり、イコールで結べる)からバランスシートです(誤訳説あり。でも、これで理解できると思います)。

もともとは複式簿記という帳簿のつけ方をすると自動的に出来上がる、2つの「表」のうちの1つです。

複式簿記は1つの取引を2つの要素に分解してそれぞれ左右に帳簿につけ、それを集計していくことで2つの「表」をつくります。


たとえば、100円の現金で商品仕入れを行うと、

商品  100  現金   100

と記帳します。

1つの取引が2通りに記帳されたわけです。

このようにして、どんどん取引を2通りに記帳していきます。

すると、あら不思議、期末に必要な処理をすると

バランスシートと損益計算書(自治体だと行政コスト計算書)が出来上がります。

自治体の簿記との違いは自治体が何にいくら支払ったとだけ記帳する(実際はもう少し情報量が多いですが)のに対して、複式簿記では必ず取引を2つに分解して記帳するということです。


で、2つに分けると言いましたが、これは、いろいろな要素をストック(残高)とフロー(流れ)に分けるということです。

何らかの取引(この場合の「取引」は会計用語。金銭が発生する組織内外のやり取り)には原因と結果があります。

先ほどの取引だと、原因(フロー)は100円払ったこと。結果(残高)は商品が100円分来たということです。

さて、期末の必要な処理ですが、原因は原因ごとに集め、結果は結果ごとに集めます。

すると、原因の集まりである、つまり、お金の流れの集まりである損益計算書(自治体は行政コスト計算書)とお金をやり取りした結果であるバランスシートが出来上がるのです。

この、それぞれの取引を分解して記帳して集計するという仕組みが優秀なのは、自動的に物事を原因と結果という2つの側面から分析できる表が作成される仕組み(システム)になっている、という点です。

役所の会計では「何にいくら使った」という取引記録を集計するだけですから、このような2つの表はできません。

そして、バランスシートはストック(結果)の情報を集めたものです。

左には資産の一覧、つまり、財産目録のようなものが並びます。

右に来るのはその資産を形成するために使ったお金の出所が並びます。


バランスシートとは、組織にどの程度の資産があるか、そして、その資産の資金源はどこか、が書かれた左右対称の表だということです。


ちなみに、役所の会計についてもう少し説明しましょう。

役所の会計は毎年、いくら現金が流入する予定か、流入したか、という予算・決算の歳入と、毎年、何にいくら使う予定か、使ったかという歳出でできています。

そして、一年の間にいくら分の市民が使える資産が蓄積されたか、また、過去から現在の流れの中ではどの程度蓄積されたか、という情報が示せない仕組みになっています。

これを示せるのがバランスシートです。バランスシートの有用性の一端がお示しできたのではないかと思います。


なお、バランスシートには退職給付引当金が計上されます。これは、今期末に全職員が退職した場合に発生する退職金の総額が示された数字です。

これは、役所の潜在的な債務がどの程度あるか、ということを検証するための有用なツールになります。

これと、退職手当組合への積立額との比較をすれば、退職金の資金不足がどの程度見込まれるかを想像することができ、これを示すだけでもバランスシート作成の元は取れます。


地元自治体にバランスシートがないなら、ぜひ、作成させるようにしてください。

なお、連結会計は中心的な組織と資本的、あるいは人的な実質的なつながりがある組織の会計を合体させようというものです。これを厳密に適用すれば負債の「飛ばし」は不可能になります。

(最近、企業会計ではもっと複雑なタックスヘイブンを使った手法などで会計情報をいじくって、経営者に不利な状況を隠すケースが増えています。)


追記:自治体の関係者でも複式簿記・会計を簡単に理解できる『会計のルールはこの3つだけ』(洋泉社新書)を2008年4月、刊行します。税理士の石川淳一氏との共著です。