義務的経費をざっくり言うと~ハムスターでもわかる自治体財政用語シリーズ
支出が義務的で任意では削減できないと役所や関係者が主張する経費を義務的経費と言います。財政分析の際には普通、人件費、公債費、扶助費を義務的経費と呼びます。
人件費は社会保険などを含めた広義の人件費です。そして、議員や審議会委員の報酬も含みます。削減できない理由がわからないと思いませんか?
一方で、外部委託の費用は物件費に区分されます。(これが自治体会計のおバカ、あるいは詐欺的なところです。会計は合理的な情報開示のツールでなければ存在意義がありません。で、よく言われますが、外部委託をやみくもに進めれば人件費が減った形になります。騙されないように。)
公債費はその会計で扱う長期借り入れの返済金と全ての返済利息。つまり、年度内に完結しない借り入れに関しては返済金も利息も公債費です。一時借り入れについては利払いのみここに入ります。(だから夕張市の会計処理は不適切な会計処理なのです。一時借入れと長期借入れは会計においては峻別しなければなりません。)
扶助費は生活に困っている人に支出される生活援助としての経費です。根拠となるのは生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの法令です。つまり、この方の対象者のうち生活困窮者への生活援助です。なお、扶助費の支払い事務について高知県のサイトに端的な資料がありましたから、参考までに下記に示します。実務と建前の違いを感じさせられる資料です。
なお、義務的経費の割合が低いと財政の弾力性があるとされ、高いと財政が硬直的であるとされます。義務的経費を聖域視することは責任の放棄であり、自律的にコントロールする姿勢が必要です。具体的には人件費の合理的根拠に基づく抑制、公債残高の総量抑制、できることなら利子の高い公債の繰上げ返済を利用した借り換え、扶助費の適切な支出を担保するための内部監査体制の強化、窓口対応の再検討などですね。他に何かあったら教えてください。
さて、参考までに義務的経費と経常経費の違いを説明します。経常経費は義務的経費より範囲が広く、物件費(旅費、消耗品費や委託料など、他の性質に属さない消費的な経費)、維持補修費、補助費(補助金、市長会などの負担金などなど)等、経常的繰出金(他の会計に経常的に支払う繰出金)を含みます。
経常収支比率を下げるためには義務的経費に果敢に切り込む努力とともに、義務的経費には属さない経常経費(準義務的な経費と言うことができる)である物件費、維持補習費、補助費を義務的経費以上に、そして可能なかぎり抑制しなければならない、というわけです。
最後にざっくりまとめると
義務的経費は役人などの給料、本当に困っている人への支援、借金の利息と返済である、と言えます。言い方を変えると、
義務的経費は役人が減らせないと思い込んでいる経費です。
ただし、議員や市民が義務的と思っていると改革は進みません。
参考までに、「義務的経費は地域の歴史的な背景などから画一的な抑制はなじまない」という意見がありますが、それを言っていて破綻するのでは意味がありません。
高知県ウェブサイト 「歳出科目の説明 」より