NPO法人こども・みらい・わこう 講座『子どもたちを虐待から守るために』
和光市で活動する「NPO法人 こども・みらい・わこう」の虐待防止をテーマにした研修会に行ってきました。
講師は市内の陸軍跡地にある、国立保健医療科学院の中板育美先生。
メモから、かいつまんで内容をご紹介します。
「今の母親たちには育児に行き詰っている人が3割ほどいる。
それに対して、母親がなっていない、という声が多い。
しかし、それは事実だろうか。
周囲の人間は育児を他人事のように批判しているのではないか。
また、今の世代はこれまでの世代の作った社会の成果。
責めても始まらない。
周囲は今の母親の感覚を理解しなければならないのでは。
母親たちに母親としての美学を教え込むのではなく、母親たちのことを理解し、裏切らない人、安心できる人、安全な人、見捨てない人が必要。
些細な出来事が母親を追い込んでしまう事実がある。
高知県四万十市では、検診の待ち時間に児童委員や自治会の人が子連れの親子の子を抱っこしてあげるなどのケアをして成功している。
虐待について、肉体的な傷を負わせることだけが虐待ではない。
身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(無視、放置)、心理的虐待が虐待(虐待防止法)。
ものさしは「そういうつもりではなかった」ではなく、子どもがどういう状態になっているか。
学校現場は、現象に翻弄されているケースが多い。現象への対応しかしない学校は成熟していない。なぜそうなのかという背景に迫る力が求められている。そうでなければ良い居場所にならない。
虐待とは子どもの人生を自分のエゴのために利用している、ということ。
子どもの虐待を周囲が察知し、認めることは親を責めることでも密告することでも告発することでもなく、親のこれ以上の子どもとの関係がどうにもならないというサインであり、心の叫びである。その声に耳をすまし、それを理解してあげること。
気づいたら、さまざまな現場の担当者だけでなく、学校、病院、保育園などの施設やその他の誰もが市町村の福祉の担当部署に通報する義務がある。
児童防止はネットワークで取り組まなければならない。決して一人ではなく、解決したい仲間を得て、勇気を分かち合い、互いにエンパワーされながら、果敢に取り組んでいける網状の組織。必要な人が必要な取り組みをしよう。
親も成長し、子どもに対し拒否的なままの親ではないと信じる(回復を信じる)姿勢が大切。」
また、話の中で驚くべきケースの紹介がありました。
「父親が虐待していた。母はそれを見てもなかなか通報できなかった。ある日やっとの思いで児童相談所に通報した。児童相談所は驚くべきことに直接父親のところに行き、『奥さんから◎◎という通報があったんだけど』といった。父親は『そんなことはありません』といった上で、後で母親をぶん殴った・・・・」
頭痛がしました。
さて、実は今日話を聞いたようなことは全てどこかで私も学んできたことでした。しかし、まとまった話を聞くことで具体的なイメージがつかめた気がします。
最後に印象に残った一言。
「行政はどうしても9時5時の世界。がんばっても9時8時。しかし、虐待は夜とか父親の帰宅後の深夜に起こっている。やはり、近所の人を含めたネットワークが大切。現実に、虐待の多くは近所の人々の通報などで発覚している」