C.W.ニコル氏の講演会@JTR国会勉強会
ニコルさんの講演会に出席してきました。
アファンの森や林野行政、環境問題全般に係る話でしたが、いつもながら日本人以上に日本を愛する「ケルト系日本人」ニコルさんの熱い思いには心が揺さぶられます。映像やニコルさん独特の語り口など再現不能なのでかいつまんで内容を記します。
「黒姫ではアファンの森という名前の森を育てている。
アファンとはケルト語で風が通る場所という意味。
日本に来て40年になる。最初は空手の修行で来た。
当時、素晴らしく、美しい日本の風景に心を打たれた。
そして、グリーンランド、カナダ、ケニアでの生活を経て日本の黒姫に定住した。
日本の自然を知るために猟友会に入り、森を歩いた。
動物を撃つのが目的ではない。最初は登山者と山に入ったが、登山者はとにかく頂上を目指して歩き、頂上でビールを飲んだらすぐ山を降りてしまう。だから、じっくりと日本の森に入るために猟友会で活動した。
そこで気付いたのは日本の森が最初、日本にやってきた頃と比較して荒れているということ。
それでも自然の大切さを一生懸命説いてきた。
しかし、森はどんどん切られる。
木が切られ、巨木が材木として運び出される。
水源にはごみや産廃が捨てられる。これらは裏社会がらみが多い。
一時は絶望的な気持になった。
そのとき、銃を持つことをやめた。ヘタをするとヘミングウェイになってしまう(*1)と思って。
そんなある日、故郷ウェールズから手紙が来た。
47もの炭鉱の開発跡で荒れ果てた地、ウェールズに日本の木々が植えられた森を作りたいという。
そんなばかな、と思った。ウェールズに森なんて・・・・。
しかし、ウェールズに行って驚いた。
産業革命の象徴のボタ山が緑になっていた。
そして、汚染されていた川は清流になっていた。
石炭から石油へのエネルギーの転換でウェールズは不況にあえいでいた。
失業率は37%まで跳ね上がった時期もある。
そのどん底を救ったのが日本企業だった。
だからウェールズの人は日本企業に感謝している。
そして、ウェールズで働く日本人への感謝を込めて、ウェールズの人々は日本の木々の森を作るのだという。日本人がそこでくつろげるように。
今では、日本の木々の下、芭蕉の句碑が建っている。
グチだけではダメだ、と思い、黒姫で森づくりを始めた。森のプロである松木さんたちの力を借りて。
私の森の自慢はいくらでもできるけれど、もっと大切な話をしよう。
いま、温暖化かどうかという議論はあるものの、明らかに気候は変動している。
気温の変化で虫の住む地域が変化している。
以前はキクイ虫による松枯れが話題になったが、今は楢(ナラ)枯れが進行している。
新潟ではミズナラの大被害が発生している。
立ち枯れの木がたくさんある。放置すると山火事の原因になるから、切り倒して木酢液を作ったり、いろいろと活動している。
できることをやらなければ!
世界的に山火事の被害が多いが、立ち枯れの木や枯れ枝は燃えやすいものだから。
テムズ川では、川岸のコンクリートがどんどん剥ぎ取られ、柳が植えられている。
テムズ流域には1000万人が住み、流域は5000平方キロにのぼるが、ここに一万ヶ所のモニタリングポイントがあり、地域の自然をモニタリングしている。すでにロンドン近郊でもカワウソが見られるようになった。(*2)
やればできるんだ。あのいまいましいアングロサクソン野郎にできることが日本人にできないはずがない。
(その後、アファンの森の映像、アファンで癒される障害児たちの映像)」
産炭地の寿命が尽き、不況にあえぐウェールズに雇用をもたらした日本企業。
いま、日本の産炭地が深刻な状況にあえいでいます。
ニコルさんの話を聞きながら、ふと、そんなことを思いました。
ちなみに、「おやじのぼやき 」さんのブログに、語りかけるニコルさんの写真が掲載されています。
*1 ヘミングウェイはライフルで自殺。
*2 このあたりはニコルさんと私、他ビオトープ管理士さんが登場する雑誌『ビオシティ』最新号の座談会に詳しく掲載されています。