地方債~弱い自治体の市場での資金調達は厳しくなりつつある | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

地方債~弱い自治体の市場での資金調達は厳しくなりつつある

地方債にはどんなものがあるか

 自治体は歳入不足を補う目的で政府や銀行などから資金を調達する。このうち、返済期間が一年を超え、借り入れ条件を表示した証書の形式により調達するものを地方債という(国が市場から調達する場合は国債)。地方債には金融機関から直接借り入れる「縁故債」と、市場から調達する「公募債」、そして、最近流行している地元住民対象の「ミニ公募債」がある。

 地方債の目的のひとつが公共施設の建設費などの負担を、世代間で公平化するというものであるが、その実は借金のツケ回しである。

 地方債の発行は10兆円以上の水準が続いており、地方債残高は130兆円超である(地方の借金の残高は200兆程度である)

 公募債は大規模な自治体が市場から資金を調達するものであり、都道府県、政令市の一部などが発行している。ちなみに、この公募債の金利に最近、差が開きつつある。自治体で最も債権が高い信用度を誇っているのは東京都、その次が横浜市だが、以前は同じだった金利にすでに差がついている。なお、平成17年度より東京都などが超長期債の発行に踏み切った。これはおおむね1020年という長期国債より長い期日の国債である。

 縁故債はその辺の市町村が地域の金融機関に引き受けてもらうものである。縁故債を取り巻く環境も変わりつつある。平成15年度、北海道庁の縁故債発行において、これまで道債を引き受けてきていた金融機関のうち道外金融機関7社が引き受けシンジケート団から離脱したことは衝撃的な出来事だった。その後も同様の事例が各地で見られるようになった。信用力は横並びという建前はすでに崩れ去ったといえる。

 ミニ公募債は自治体が主として地域住民を対象として発行する債券であり、特定の目的のための資金調達として発行される。目的として多いのは地域の箱物整備などである。金利の高さから個人投資家には好評であるが、縁故債の引き受けをやめた金融機関に代わっての個人投資家の登場というところに国債との類似性を感じ、複雑な気分になる。

 

協議制とは~自治体の健全性によって発行時の扱いが別になった

 地方財政法や地方自治法の改正により、平成18年度より、地方債の発行は協議制となった。従来必要であった国の許可(都道府県が発行する場合)や都道府県の許可(市町村が発行する場合)を基本的に不要とし、これまで許可を得ていた上級の官庁との協議により地方債が発行できるようになったのだ。もちろん、条件があり、協議すれば地方債を自由に発行できるのは財政状況が健全な自治体のみである(同意の有無で条件に有利不利が出てくる)

 一方で、この条件を満たさない自治体の扱いは異なる。つまり財政状態が著しく悪い自治体や、普通税を標準税率以下で課税している自治体は、引きつづき、起債に際して許可が必要とされる。

 協議制になったといっても、その内実は従来の許可制とあまり変わらない面がある。

要注意なのは財政状態の良い団体における「発行しすぎ」

 住民が気をつけなければならないのは、協議制の対象である比較的財政状態の良い自治体における債権発行の歯止めの設定である。たとえば、東京都八王子市では市債依存度の上限を6%にするなどの「八王子版地方債発行基準」を明示している。このように今後は財政の規律について、自治体がしっかりと意識し、基準を市民に示していかなければならない。

 また、地元の自治体がどの括りに入っているのかを知ることも大切だ。

 個人的には借入額の総額を前年度比100%以内とするというのは分かりやすい指標であると考えている。