『はめられた公務員』(中野雅至)
本書を要約すると、下記の通りです。
「これまで、中央官庁に行政の責任と権限が集中していた。地方は責任がなくお気楽だった。中央では政官財のトライアングルがやりたい放題で国民の金を食いつぶした。地方交付税や補助金でたかりまくった地方も共犯者。ただ、責任はなかった。しかし、政官財のトライアングルは今までのシステムの破綻を予見しスケープゴートとして地方の行政を想定している。このままでは、今までお気楽だった地方の役人はいつの間にか責任を押し付けられ、地方公務員は理不尽にも大量解雇されるだろう。地方公務員は犠牲者だ。そして、政官財のトライアングルはまんまと生き残る。地方公務員諸君はできる限り努力して、押し付けを回避すべきだし、押し付けの事態に耐えられるだけの備えをしなければならない。」
この人は正直だと思います。ただ、議論の中心は、「地方公務員や地方自治体に責任を取りうる能力があるとは思わない」「国の役人は忙しいし誠実にやっている」「政治家の横暴はひどい」「あまり税を払わない一般の国民に納税者風を吹かせる権利があるのか」「地方こそ汚い裏がたくさんある」というところであり、官僚ムラ出身者としての自己弁護に見えてしまうのが残念です。それと、前段でこれだけ地方公務員を虚仮にしておいて、後段で「戦え」とアジってもなかなか同意は得られないと思います。
この人は本文の枝葉の部分ではいろいろと行政の現状をリアルに見せてくれています。また、繰り返しになりますが、きわめて正直に語っています。それだけに、基本姿勢が残念な一冊です。せっかく脱藩したのですから。
また、キャリアでも本流の人でないからこそ官僚ムラに見切りを付けたという点では『お役所の掟』の宮本さんと同じ。
やはり、大蔵系のキャリア本流の人の暴露本、批判本が待たれます。
お勧めかというと・・・・。どうでしょう。書店でぱらぱらと見てみてアレルギーを感じなければいいんじゃないでしょうか。